53.パーティ?
私たちは全員ビックリした顔で女性を見たようで、女性が少し引いてしまった。
「あれ、私変なこと言った?」
遥が身を乗り出すようにして訊ねた。
「いつ?どこでですか?」
女性は一瞬の苦笑いから真面目な顔に戻して、
「忘れもしない2年前。私、エンガ王国出身なんだけど、私が住んでたヴェルタン村の近くにダンジョンが発見されて冒険者が攻略に挑んでたの」
マルセルは覚えがあるようで「ああ、ヴェルタン」と相槌をうった。
「その時に誰かが封印を解いてしまったらしくて魔物が何十体もダンジョンから出てきて私の村を襲ってきたの。家とかは壊滅状態になってしまったんだけど、そこに勇者と人魚たちがやってきてくれて、魔物を討伐してくれたの」
「勇者と人魚たち?勇者と人魚ではなく勇者と人魚”たち”ですか?」
「うん、5人くらいのパーティだったよ。他に後方支援の魔術師2人とタンクがいた」
2年前。首都シャルタルに入る直前に出会った冒険者の人もエンガ王国で人魚の目撃談を聞いたと言っていた。きっと2年前にはエンガ王国にいたんだ。
「あなたたちはどこで勇者パーティーに会ったの?」
女性が訊いてきたので、
「私たちは勇者と人魚に会いたいんですよ」
と私は答えた。
すると女性は、
「そっかー。私もあれ以来地元を出ちゃったから最新の情報は分からないんだけど、あの時は勇者パ-ティはエンガ王国のベスティムという街にいたはず」
女性の話に対して、マルセルが険しい顔で「ベスティム…」と呟いた。アルノルドもわずかだけれど口をキュっと結んだ。
二人の反応が気になり、
「ベスティムを知ってるの?」
と訊いた。
「ベスティムはエンガ王国の中でも最も北にある街です」
アルノルドが答えた。
なるほど、二人が険しい顔をした理由が分かった。北ということは、
「つまり、すぐ近くに魔王国?」
私が言うと、二人は大きく頷き、女性も大きく頷いた。そして女性は言った。
「でも、今そこにいるかは分からないよ」
マルセルはそれに対して頷いた。
「そうだ。危険を冒してベスティムに行ってみたら今は北西のマチュヤ王国にいるとか西のヴァッヂ王国にいるなんてこともありえる。やはりまずは情報収集だ」
すると今まで黙って話を聞いていたカップルの男性の方が、
「俺、5~6年前くらいかなベンチャで冒険者してて、その時に勇者と人魚の話は聞いたことあるよ。実際会ったことは無いけど、宿屋ノボリングのジジィが人魚から買ったという時計を自慢されたことがある」
私、遥、マルセル、ヤニックは同時に残念な「あ~」という声を出してしまった。
それに対して男性が、
「あ、知ってる話だった?」
私は頷いて、
「昨晩泊まった宿屋の主人が全く同じ話をしてました」
それに対して男性が残念な「あ~」という声を出した。
「あの人自慢して回ってたからな…」
カップルは既に食べ終わっていたようで、
「では、俺らはこれで!」
「勇者と人魚に会えるといいわね」
そう言って、カップルは去っていった。
そしてアルノルドが言った。
「宿屋ノボリングの話は報酬無しにしときましょう。あと、既に得た情報や情報被りも報酬無しの方向で整理しましょう」
私は大きく頷いた。
「それでお願いします」
私たちは夕食を食べ終えた後、ルシュダールの冒険ギルドに戻った。既に通りに面した入口は締まっていて、裏口から入る。
執務室のような部屋で事務作業をしていた男性職員が、私たちに気づき、
「お戻りになりましたか」
と机の引き出しから鍵を3つ取り出して、私たちの元にやってきた。
「こちらのお部屋になります」
私たちは階段を使って3階まで昇る。私と遥で一部屋、マルセルとヤニックで一部屋、アルノルドが一人という形になった。
朝が早かったことや初めての仕事で緊張したこと、その後温泉を楽しんで夕飯を十分に食べてことが原因か、私たちはあっという間に睡魔に襲われ、気づいたら朝になっていた。
相変わらず朝に弱い遥を起こすのに一苦労した。初めての二段ベッドに興奮した遥は上の段で寝たいと主張したので了解したけれど、二段ベッドの上の段に寝た人を叩き起こすのは大変だった。
「早く起きなー」
「う~もうちょっと寝かせて~」
遥はいつも通りの反応をする。
私は「はあ」と大きく息をついてから昨日使った手を使うことにした。
「マルセルもヤニックも見てるよ」
パチッと目を覚ます遥。そして起き上がり入口を見る。当然扉は開いていない。
「ウソじゃーん!」
そう言いながらも遥は素直に起き、私たちは一通り準備をしてから部屋を出た。翌朝は下で合流ということだったので1階に降りていくとマルセルとヤニック、アルノルドは集合済みだった。




