49.温泉地ルシュダール
私たちは車を降りて、徒歩で温泉地ルシュダールに向かうこととなった。
「温泉だったらこれ持ってた方がいいな」
私は車を収納する前にお泊りセットを取り出した。
「何?」
遥が訊ねる。
「シャンプー、リンスとボディーシャンプー、それと速乾タオル!」
「え、私の分もある?」
「タオル3枚あるから、1枚ずつ使おう」
私は車の中から必要なものを取り出して車とお泊りセットを空間収納にしまった。
車を空間収納に入れるまで、通り過ぎる人に恐怖の目で見られたのは認識したが、マルセルがうまくフォローしてくれていた。
そして、私たちは温泉地ルシュダールに向け歩き出した。徒歩5分くらいで街に入った。
街は遠目からみたまま、全ての建物が白かった。
「白い建物ばっか」
遥の発言に対して、アルノルドが答える。
「この辺りで採れる石が白いんですよ。その石を使って建てているので白い街が出来上がったという形です」
遥は「へ~」と感心した声を出す。
「まずは宿屋だな。ギルマスとしてのおすすめは?」
マルセルがアルノルドに訊いた。
アルノルドは頭をかいた。
「あそこに泊まろうとしてるのか?」
「ギルマスが一緒でないと泊まれない貴重な場所だ。行ってみたい」
あまりにも意味ありげな会話過ぎて口を挟んで良いのか悩んだけれど、ついつい癖で口を挟んでしまった。
「特別な場所があるの?」
すると、マルセルがにやりと笑って答えた。
「あるさ。普通の観光客は泊まれない激安、でも設備的にはそこらの宿屋と変わらない冒険者ギルドの保養所。ギルマス特権で行けるだろ?」
マルセルがアルノルドを見る。
「私は今回ギルマスではなく一人の冒険者として参加したんですけどね」
「いいじゃないか。ほら、こちらはウィザード・ロランスのお客人だし、特別枠ってことで」
「仕方ないですね。今日は空いているでしょうし、あそこに行きますか」
こうして私たちはまず本日の宿屋の様子を確認しに行くことになった。首都シャルタルと同様にメインの通りにはお店が並ぶ。違うのは、首都シャルタルよりもメイン通りの道幅が狭いこと、いかにも観光地といった感じの食べ物屋やお土産屋が多いこと、店の外ではお店の人が積極的に呼び込みをしていること。
「本当に観光地だ」
遥が感心したように口にする。
私たちはひたすらメイン通りを進んでいく。
「ここです」
アルノルドが立ち止まったのは、
「冒険者ギルド?」
私はアルノルドに訊いた。
「はい、この街の冒険者ギルドです。首都シャルタルの派出所のような位置づけで、スタッフも少ないですし、依頼も少ないのですが一応機能はしてます」
「ここに泊まるということ?」
アルノルドは「はあ」とため息をついてから、マルセルを見た。
マルセルはにやりと笑って、
「よろしくお願いします、ギルマス」
アルノルドを先頭に私たちは冒険者ギルドに入っていく。
そのまま受付に真っすぐに向かうと、受付にいた褐色肌のお姉さんが私たちに気づいた。
「あら、アルノルドさん、どうされたんですか?」
と声をかける。そのままマルセルを見て、
「あら?マルセルさん、ウィザード・ロランスに破門でもされました?」
「今まで一番酷いな。こちらはウィザード・ロランスのお客人で、俺は任務として彼女たちの護衛をしているだけだ」
受付のお姉さんは私たちを見て「どうも」と軽く会釈をした。
すると遥が小声で、
「エルフかな?耳が」
と私に言ってきた。その時初めて受付のお姉さんの耳の先が尖っていることに気づいた。
受付のお姉さんは遥の小声が聞こえたようで、
「エルフですよ」
と返してきた。
遥が真っすぐに質問する。
「おいくつなんですか?」
それに対してアルノルドが「ちょちょちょ」、マルセルが「おいおいおい」と止めに入る。
受付のお姉さんは作ったように笑って、
「何歳に見えますか?」
遥は「う~ん」と悩んでから、
「400歳くらい?」
私は遥の答えにビックリした。400歳?! え、めっちゃ若く見えるけど?
しかし、受付のお姉さんはハハハハハと大笑いして答えた。
「惜しい。私は500歳オーバーです。正確な年齢は覚えてません」
遥の想像をはるかに超えていた。
受付のお姉さんは気にする様子もなく、アルノルドに質問の続きをした。
「本日のご用件は?」
「宿泊部屋を用意できるか?人数分」
受付のお姉さんは私、遥、マルセル、ヤニックを見てからアルノルドを見て、
「5名ですか?」
「ああ、そうだ」
「すみません、あいにく5部屋は空いてなくて」
アルノルドは変な声で「え?」と返した。
「本日はユドレスのギルドが慰安で来てまして」
私はマルセルとヤニックに「ユドレスって?」小声で訊いた。
「西のヴァッヂ王国側にある港町だ。そこのギルドの人たちが来てるんだろう」
マルセルが答えてくれた。
アルノルドは「参ったな」とマルセルを見る。
マルセルは受付のお姉さんに確認するように訊いた。
「空いてる部屋はあるの?」
「3部屋ならご用意できますよ。幸いどの部屋も2段ベッド仕様なので1部屋2人まで泊まれます」
マルセルはアルノルドを見る。
アルノルドは受付のお姉さんに、
「申し訳ないが、その3部屋を確保しておいてほしい」
受付のお姉さんは頷いて、
「承知しました。夜番にも伝えておきます」




