表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/253

45.初仕事④

 その後もリリスキジカが咲く中を進み続けた。何体かのエッフーシュカが現れたけれど、逃げ切ったり、目が合ってしまった人が出た場合は私の光魔法で全て解決した。もちろん、私自身も目が合ってしまい、その瞬間光魔法で昇天させた。アルノルド曰く私がやっているのは退治ではなく昇天らしい。


「やっぱり努力ではなくて才能なのか…」


 マルセルが悲しそうな顔をして言う。


「でも、マルセルが魔法書を読み込んでくれてたから回復魔法を使えたんだよ」


 私がフォローするように言うと、マルセルは少し口を尖らせた。


「慰めは時に人を気づ付けるんだよ。あれだけ読み込んでも俺は魔法を使えなかった。でも夏子はチラ見しながらやったら魔法が使えた。結局、努力ではなくて才能なんだよ。いいんだ、俺はどうせ魔法の才能空っぽさ」


 マルセルはずーんという効果音が似合いそうな顔で、遠くを見ていた。

 やがて私たちはリリスキジカのゾーンを抜け、森の切れ目に出た。目の前には何十本、何百本もの木が網目のように交差して一本の大樹のようになっている。


「何これ」


 遥が大樹っぽいものを見上げる。上の方は周辺の木とは違う広葉樹の葉が横に広がっている。


「ギガンモーレイの巣だ。朝買った手袋の出番だ」


 マルセルが言った。

 遥は杖をポケットにしまってから手袋を取り出して手にはめた。そして上の方を見て目を細めた。


「木の枝しか見えないよ」


「上じゃない真ん中あたりだ」


 マルセルの言葉を受けて遥は視線を真ん中あたりに移す。しかし、


「やっぱり木の枝しか見えない。というより、木の枝が絡まり過ぎて隙間が無い。


 マルセルは残念そうに「そうかあ」と言ってから、


「ということは行くしかないな」


 とアルノルドに言った。

 アルノルドは両手を握る様にパンッと合わせて、ふうと息をついてから言った。


「行きますか」


「この巣の中に入るってこと?」


「当然汚いので覚悟してくださいね」


 マルセルはアルノルドの話をフォローするように「あと」と続けた。


「巣の内部は迷路のようになっている。行った先が行き止まりだったりする。そのたびに戻って道を変更するという形で進んで行く。先に進む分には問題ないが、問題は帰り道だ。行ったり来たりしながら進むから帰り順が分からなくなる」


「難しいのが目印として木の幹に紐を結びながら進んでいったとしても、その紐をこの木は吸収してしまうんですよ」


 アルノルドがさらっと怖いことを言った。

 私も遥も意味が分からなくて「は?」という反応しかできなかった。


「理屈は分からないんですけど、そういう木なんですよ」


「じゃあ、私たちも吸収されちゃう可能性があるってこと?」


「それが動くものは大丈夫なんですよ。一定時間止まっていると木が吸収を始めるようです。そこまでは解明されているので安心してください」


 遥は絶望的な顔をしながら、


「全然安心できないんですけど~」


 と嘆く。


「メモるしかないね」


 私はそう言って空間収納のカバンの中からルーズリーフと3色ボールペンを取り出した。

 アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせた。


「行きましょう」


 私たちは中に入れそうな隙間を探すために大樹っぽいものの周りをぐるりと回り始めた。そして、良さそうな隙間を見つけ、


「ここから入ろう」


 マルセル主導で中に入っていった。

 木登りというより、階段を昇ったり降りたりという感じで奥へと進んでいく。

 かなり薄暗い。

 私はその中でルーズリーフに線や文字でルート情報を記載していく。上りの時は黒色、下りの時は青色、右折や左折のたびに矢印を書き込んで、行き止まりだった場合はその線の上から赤色ボールペンで×を描く。そして、そのアクションが起きるまでの歩数を横に書く。

 進めば進むほど、どれくらい進んだのか、どれくらいの高さにいるのかが分からなくなっていく。

 その途中で、


「見えた」


 と目を細めた遥が言った。

 マルセルの「何が見えた?」という言葉と重なる様に遥の手の中にネチョっとしたスライムのような白濁の塊が現れた。


「これ」


 遥がマルセルとアルノルドに見せる。

 アルノルドは音が鳴らないように両手を握る様に合わせ、そして小声で言った。


「素晴らしい。そこに卵はありましたか?」


 遥はアルノルドに釣られるように小声で答えた。


「あった」


 私は思わず小声で「なんで小声?」と訊いた。

 アルノルドは小声で答えた。


「ギガンモーレイに気づかれては困ります。子育て中の鳥は気が立っているので」


 そう言っている間に遥はせっせと粘液を採っては、マルセルが広げている巾着袋のようなものに詰めていく。いつの間にかマルセルはマジックバッグから取り出していたらしい。


「どれくらい採ればいいの?結構少なくなってきたんだけど…」


 遥が小声でマルセルに訊く。


「これくらいあればいいだろう」


 マルセルはアルノルドに袋の中身を見せる。


「そうですね。これで十分だと思います」


 マルセルは巾着袋を自分のマジックバッグに詰めようとしたが、大きすぎて入らなかった。


「遥か夏子か空間収納出せる?」


「出せる出せる」


 と、遥は手袋を外し、空間収納を出し、マルセルから受け取った巾着袋をしまった。


「では、戻りましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ