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42.初仕事①

 首都シャルタルの外に出たところ、アルノルドと約束した場所に向かうと、荷馬車とアルノルドが待っていた。昨日の試験で乗り込んだ馬車と違い、荷馬車は年季が入った使い込んでそうなものだった。

 アルノルドは例の癖、両手を握る様にパンッと合わせてから口を開いた。


「いらっしゃいましたね!本日はよろしくお願いします」


 私たちはそれぞれに「よろしくお願いします」と挨拶をした。


「これで行くの?」


 マルセルはアルノルドに言う。

 アルノルドは当然という風に頷いて、


「徒歩で行くつもりだったのか?現場に着く頃には日が暮れるぞ」


「これで行っても半日かかるだろう」


「一人一人馬に乗っていく気か?」


 アルノルドは私たちを見てから話を続けた。


「お二人は乗れるのか?」


 マルセルは私を見て言った。


「車使えるか?」


 なるほど。状況は理解した。


「出せるけど、5人乗るなら三列目を作らないといけないかも」


「じゃあ、車で行こう。車を使えば1時間くらいで到着する」


 アルノルドは私たちの会話を「?」という顔で聞いていた。


「とりあえず人通りが少ない場所まで歩いて行って、そこから車で行こう」


 こうして初仕事の現場へは車で行くことになった。アルノルドの用意した荷馬車は馬車小屋に戻された。

 マルセルおすすめの人通りの少ない場所に到着して、私は空間収納から車を出した。

 アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせた。


「これが車だったんですね」


 私は急いで3列目を座席にした。


「道案内は?」


 私が訊ねると、マルセルが、


「俺がやる」


 と答えた。


「じゃあ、マルセルが助手席で」


 すると遥が、


「じゃあ、私は助手席の後ろだね。3列目の人が入った後に乗らないとだし」


 私は頷いて「場所は任せた」と遥に託した。

 結果、運転席=私、助手席=マルセル、2列目運転席後ろ=アルノルド、2列目助手席後ろ=遥、3列目=ヤニックになった。

 エンジンをオンにして室内の電気が通った段階で、アルノルドが興奮したのが分かった。


「とりあえずこの道を進んでくれ、そのうち二手に分かれる場所が出てくるから、そうなったら左側に進んで」


 私は「了解」と答えて、アクセルを踏んだ。

 車が走り出すとアルノルドの興奮は増した。


「凄いスピードだ。これを作ったんですか?」


 アルノルドが後ろから私に聞いてくる。


「車自体は自国で買ったもので、私がやったのは魔道具化です」


「凄い、凄いです!こんな乗り物初めて乗りました」


 アドリア村から首都シャルタルに向かう車窓と逆の現象が起きている。田舎道へと向かっているため、景色はのどかに、道幅はどんどん狭くなっていく。やがてマルセルの言う二股道がやってきた。

 マルセルが「ここを左」というので、私は「はいはい」と左にウィンカーを出した。すると、これにもアルノルドが興奮する。


「このカチカチはなんですか?」


「左に曲がりますよという合図です。外で左側のランプが光ってます」


「なんですか、その仕様は!外側から見たい。一回止まってもらっていいですか?」


 アルノルドのリクエストで左の道に入ったところで一旦車を停止した。そして、アルノルドが外に出て、その後に続いてマルセルとヤニックも外に出た。


「行きますよ」


 私は左側のウィンカーを出した。

 外側の三人は「お~!」と歓声を上げている。

 次に右側のウィンカーを出した。

 外側の三人は「お~!」と歓声を上げる。


「じゃあ、これは?」


 と、私はフロントウォッシャーを出して、ワイパーを動かした。

 外側の三人は期待通りのリアクションで「なんだこれは!」と驚いてくれた。アルノルドは両手を握る様な形で拍手をして「素晴らしい」と感心している。

 三人が車に戻ってから、運転を再開した。アルノルドの興奮で聞けなかった重要なことを私は確認したかった。その想いは遥も抱いていたようで、マルセルとアルノルドに訊いてきた。


「今日の仕事内容はいつ教えてもらえるの?」


 アルノルドはそれに対して驚いたようにマルセルに訊いた。


「伝えてないのか?」


 マルセルは困ったように答えた。


「いやあ、伝えたところで現場見なけりゃ分からないと思って。3人とも見慣れない場所だろうから」


 アルノルドはマルセルの答えに納得したように「確かにな」と口にした。


「どんな所なの?」


 私が訊くと、アルノルドが答えた。


「簡単に言うと鳥の巣だ」


「鳥の巣?」


「巨大な鳥の巣。仕事内容は、その鳥の巣の芯にある鳥の粘液を採ってくることだ」


「粘液?」


「卵を守るために鳥は粘液で包むんだが、その粘液が貴重な薬になるんだ」


「卵が無かったら?」


「卵が(かえ)っていたいたとしても、粘液は残っている」


 ヤニックが後方から聞いてきた。


「その鳥ってギガンモーレイですか?」


 アルノルドがヤニックの方を向いて「そうです」と答える。

 遥が「知ってるの?」とヤニックに訊く。


「話には聞いたことがあって。でも…」


「でも?」


「僕が知る話では、その鳥は見えないって」


 私と遥は同時に「見えない?」と聞き返した。

 それに答えたのはアルノルドだった。


「実体はあります。但し、見えにくいというのが正しいです。その鳥は周辺と同化するんですよ」 

 


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