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40.冒険者サンド

 職業病なのだろうか。朝、目覚ましをかけなくても平日に起きるような時間に目を覚ました。

 まずはトイレに入り、浄化魔法で全身を綺麗にしてから昨日購入した冒険者用の服に着替え、アイブロウとアイライナーで最低限の顔を作った。

 スマホのアラームは止めておいた。昨日ライトを付け続けたせいでバッテリー残量が50%を割っていた。この世界には電気がないから充電しようがない。だからスマホは極力使わないようにしたかった。魔道具化できるだろうか?それとも電気を作る道具を作るべきだろうか?

 そんなことを考えていると、トントンと入口の扉が鳴った。


「起きてますか?」


 ヤニックの声だ。


「起きてます!」


 私は答える。


「遥の部屋をノックしても返事が無くて、そちらにいたりしますか?」


「いや、あの子朝が弱いの。今出ます」


 私は化粧道具と出しっぱなしだった寝間着を空間収納にしまい、外に出た。

 ヤニックは遥の部屋の前に視線を移す。そこではマルセルが遥の扉をノックし続けていた。


「あ~、なんかごめんなさい。朝は本当に起きないの」


 私は急いで1階のフロントに向かった。そこにいたのはおじさんではなくおばさんだった。


「この宿屋の方ですか?ご主人は?」


「シフト制でチェックアウトの時間帯は私が担当です。何か御用ですか?」


「2階の1号室の合鍵はありますか?家族が扉をノックしても起きなくて」


「分かりました。向かいます」


 そう言っておばさんは合鍵を持って一緒に来てくれた。そして鍵を開け、


「では失礼します」


 おばさんは1階に戻っていった。

 私は遥の部屋に突入した。案の定、遥はベッドの上で爆睡している。


「遥、朝だよ」


 揺すって起こしたところで「あ~」と声を漏らすだけで全く起きようとする意志を感じない。


「早く起きなー」


「う~もうちょっと寝かせて~」


 遥はいつも通りの反応をする。

 私は扉の外からこちらを覗いている視線に気づく。この手は使えると思った。


「マルセルもヤニックも見てるよ」


 すると、遥の目がパッと開いた。そして、むくっと起き上がった。そして、扉の外にいるマルセルとヤニックを確認してから布団で自分の姿を隠した。


「ごめんごめんごめん、すぐに着替えるから外に出てて」


 遥は宣言通り1~2分で身支度を整え、部屋から出てきた。化粧をしないで出てこられるなんて若くていいななんて、ふと思ってしまった。

 そして私たちはマルセルおすすめの朝食がとれる食堂に向かった。昨日の店とは違い、表通りに面した店だった。南側は建物が密集しているように建っていて、隣に建物との間が人一人通るのがやっとというくらいの隙間しかないけれど、この店が入る建物は隣の建物との隙間が広く開いている。柵で囲われていて中は見えないが、隣に庭がありそうだ。

 ジャスモンという名のその店の店内は、オシャレなカフェという感じだった。

 店に入るなり、恒例行事が行われた。


「久しぶりじゃないか、ウィザード・ロランスの付き人を卒業したのかい?」


 食堂のオーナーである恰幅の良いおばちゃんがマルセルに声をかける。

 マルセルは面倒くさそうに答える。


「卒業なんてしてねえよ。こちらはウィザード・ロランスのお客人で、俺はウィザード・ロランスからの任務で彼女たちに同行してんの。冒険者サンド4つとフレッシュジュースを頼む」


「あいよ」


 マルセルは空いている4人席に座る。続いて私たちもその席に座った。

 この店の給仕は見える範囲でおばちゃん含めて2人で、もう一人の給仕も女性だった。やはり朝は女性が給仕スタイルなのだ。

 そして店の客は概ね冒険者風で、彼らはフランスパンのような長いパンにレタスっぽい葉と白っぽいものと鶏ささみのようなものが挟まったものを食べている。これが冒険者サンドだろうか。


「はい、おまちどう」


 おばちゃんは4人分の冒険者サンドとオレンジジュースっぽいものをテーブルに置いた。

 マルセルとヤニックが右手を胸に当てて目を閉じた。私と遥も慌てて後に続いた。


『サンバチスト様、この食事に祝福を、そして命に感謝を込めて』


「このジュース美味しい」


 遥がジュースを一口飲んで感動している。

 フレッシュジュースはオレンジジュースかと思いきや、オレンジジュースをベースにした野菜ジュースのようだった。

 そして、冒険者サンドの方は白っぽかったものは塩コショウで味付けしたマッシュポテトみたいなものだった。少々味は薄めだけれどアドリア村の朝食よりも断然日本で食べ慣れた味に近かった。

 鶏肉もアドリア村で食べたイノシシと違って獣臭さが無い。


「昨日のお店もだけど、肉は野生のものではないの?」


 マルセルに訊くと、


「冒険者が取ってきた野生の獣とか魔物とか出してる店もあるが、首都シャルタルの店で出されている肉は鶏も牛もだいたい農家が食用に育てているものだ」


 だから獣臭さがないのか。この世界のジビエは苦手だと感じていたから、これはありがたい情報だった。


「冒険者サンドは他にも味があるの?」


「日替わりだ。今日はポテトと鶏肉だけど、明日はまた違うもの。そんなにバリエーションはなくて肉は基本的に鶏肉だが、ポテトの代わりに焼きチーズが挟まっている日や酢和え根菜が挟まってる日なんかがある。リクエストすれば好みの具で新サンドを作ってくる場合もある」


 毎朝サンドは飽きそうな気もするけれど、当分の間は日替わりで楽しめそうだ。

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