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33.冒険者証

 無事合格となり、私たちは外が見えない馬車で冒険者ギルドに戻ることとなった。岩のゴーレムからドロップした赤い石はアルノルドに回収されたけれど、万薬草の花はマルセルの予想通り成果物として受け取ることができた。


「冒険者ギルドで買取することもできますが?」


 とドニーズに提案されたけれど、マルセルが断った。

 帰路の車中で、遥がマルセルに訊ねた。


「なんで冒険者ギルドで売らないの?宿屋代どうするの?」


 マルセルは口の前に人差し指を立てて、小声で答えた。


「冒険者ギルドは仲介役なんだ。だから手数料が取られる。その街に詳しいなら、大元の方に売った方が買取金額は高くなる」


「例えば?」


「ポーションを作っている薬術師や魔術師に直接売る」


「なるほど」


 そんなことを話している間に冒険者ギルドに到着し、再びVIP部屋に通された。窓の外はすっかり暗くなっていた。

 しばらく待っていると、トントンと部屋の扉がノックされ、アルノルドとドニーズが入ってきた。

 アルノルドは両手を握るようにパンッと合わせてから、


「冒険者証を用意いたしました。まず、ヤニックさん」


 呼ばれたヤニックはアルノルドの前に出る。

 アルノルドはドニーズからカードのようなものを受け取り、それを一度確認してから、ヤニックに渡した。


「冒険者ランクはDです」


 ヤニックは「D?」と何故かマルセルを見た。

 マルセルは何故か得意げに、


「俺はAだが、初回登録でDは凄いことだぞ。大部分はGから始まる」


「そうなんですね」


 ヤニックは今度はアルノルドに聞いた。


「なぜ僕はDになったのでしょう?」


「そもそもの保有魔力が高かったこと、土魔法発動のスピード、岩のゴーレムの体当たりを抑えらえるほどの壁の生成力ですね」


 ヤニックは目を丸くした。


「見られてたんですか?」


 ヤニックの反応にアルノルドは驚いた顔をした後、大きく口を開けて「ははははは」と笑った。


「それはそうですよ。試験ですよ?」


 どこで見ていたのだろう。私も全く気付かなかった。


「さて、次はハルカさん」


 ヤニックは後ろに下がり、今度は遥がアルノルドの前に出た。

 ドニーズはアルノルドにカードを渡し、アルノルドはその内容を確認してから、遥に渡した。


「ハルカさんの冒険者ランクはCです」


 遥は驚いて、アルノルドに「C?なんで?」と聞き返した。


「ハルカさんも保有魔力が高かったこと、罠解除能力が高かったことに加え、スキルの唯一性が能力値を上げています」


「スキルの唯一性?」


「私も長年ギルマスをしていますが、遠視召喚というスキルは初めて確認しました。遠くを見る能力を持つ者は他にもいます、見たものを奪うスティール能力を持つ者もいます。しかし遠くのものを目視して、それを奪うという組み合わせを持つ人は初めて見ました」


「すごいんだ、私」


 遥が嬉しそうな顔をする。


「すごいですよ」


 アルノルドは遥をおだてるように答えた。そして続けた。


「検査の時に出た波の能力、スティールの時にその波動が出ていたようなので、おそらく波の引く力というのでしょうか、その力でスティールを行っているのではないかと思います。水の中では水の力を利用して、地上では風の力を利用して引き波を起こしているようです」


 遥は口を半開きのまま「へえ」と自分の能力の話を受け入れていた。

 アルノルドは再び両手を握るようにパンッと合わせた。


「では、最後にナツコさん」


 遥が後ろに下がったので、私はアルノルドの前に出た。

 ドニーズはアルノルドにカードを渡し、アルノルドはその内容を確認してから、私に渡した。


「ナツコさんの冒険者ランクはBです」


 遥よりも一つ上ということ?


「何故?」


「ナツコさんは光属性という時点でかなり珍しいのですが、その保有魔力がとても高い。A級やS級の冒険者でもなかなかいない魔力量です。また攻撃精度も高く、破壊力もとんでもない。あの岩のゴーレムを一撃で破砕するなんて」


 一撃で破砕したのがそんなに凄かったのだろうか。いまいち実感がない。


「Aでも良いかとは考えたのですが、実践経験がないのでBからスタートということで。何度か仕事をこなしていただければ、すぐにA、Sに上がりますよ」


「そんなに?」


「ええ。ただ、検査の時に出た虹の能力が確認できなかったんですよね。あれはどういう能力なのか…」


 アルノルドは何やら「う~ん」と考えている。


「何をしたら分かるんですかね?」


 私は聞いた。

 しかしアルノルドは「う~ん」と考えたまま、


「見たことが無い属性なのでねえ、どうやって出すか、どういう力があるのか、全く想像ができないんですよね。私としては確認したかったのですが…次回、正式な依頼を受ける際に同行させてください」


 アルノルドの提案に私は驚いたが、それ以上に目を丸くして驚いたのが後ろにいるドニーズだった。

 私はマルセルを見た。

 マルセルはニタニタ笑って言った。


「いや~、参ったな」


 マルセルの言動の真意が分からなかった。しかし、マルセルとアルノルドの間に何か通じ合っているものがありそうだ。

 そしてドニーズが静かに部屋を出ていき、一枚の紙を持ってすぐに戻ってきた。そしてその紙をそのままアルノルドに渡した。

 アルノルドは一瞥してからニカっと笑い、マルセルに紙を渡した。


「面白そうじゃないか?」


 アルノルドが言う。


「ほぉ、そういうことですか」


 マルセルが答える。


「何?どういうこと?」


 遥が割って入った。

 アルノルドは再び両手を握るようにパンッと合わせてから、私たちをニカっと笑って言った。


「本日の試験であなた方のパーティーを見ましてね、これがピッタリなのではないかと」


 続いて、マルセルは私たちに紙を見せた。


「かなり良い報酬の仕事だ。遥の遠視が役立ちそうだ」

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