表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/253

32.実地試験④

 ゴーレムの破砕を確認した後に、はあ、はあ、と自然と息が荒くなった。たぶん緊張していたのだろう。


「すげーな」


 マルセルが背後でボソっと呟いた。

 遥が目を細めて奥の方を見ている。


「大丈夫、もうゴーレムの姿は見えない」


 私たちは再びヤニックの岩の玉を転がしながら、陣が現れたら印をつけながら奥へと進んでいった。途中ゴーレムが倒れただろう崩れた岩の中に赤い石が落ちているので、それも回収していった。

 ピチャ、ピチャ、という水が落ちる音が大きくなってくる。

 やがて、目の前に池のようなものが現れた。水はとても澄んでいて、どこから光が入っているのか分からないけれど青く光っている。薄暗さはあるもののスマホライトがなくても十分周辺の確認ができるくらい光が届いている。天井部にはところどころ石灰のようなものが筋のように出ていて、そこから水がピチャ、ピチャ、と落ちている。


「あれ」


 ヤニックが池の中を指している。

 その先に紙に書かれた鳥のようなものがあった。鳥だと思っていたけれど、鳥のように見える花のようだ。水の中で花がいくつか咲いている。


「花?」


 遥の呟きに、マルセルが答えてくれた。


「万薬草だ」


「万薬草?」


「万の病に効くとされている薬草だ。魔素を含んだ水の中で育つ。実際には万ほど効くものではないが、万薬草の花は中級ポーションの原料になる」


「ポーション!」


 遥のテンションがまた上がったのを感じた。ポーションが何か分からないけれど、おそらく異世界あるあるで、マルセルの話を聞く限り薬代わりなのだろう。

 水は澄んでいて底まで見えるけれど、浅くはないことだけは分かる。万薬草の花はこの水の底で咲いている。


「これ、どうやって採ればいいの。この水、魔素を含んでいるんでしょう?魔素を含んでいる水に入っていいの?」


 私はマルセルを見る。しかし、相変わらずマルセルは顔を逸らす。私はそのままヤニックを見る。


「ヤニックの壁造る魔法で底を上げることは?」


 しかしヤニックは首を横に振った。


「生えている場所が遠くて魔力が届かないと思います」


 そこに「ねえ」と遥が入ってきた。


「私が試していい?」


 遥はそういってステータスを見る仕草をした。親指と人指し指を立て、スクロールする仕草をした。そして何かを押した。その後、遥は水の中の万薬草を見た。同時に、


「成功!」


 遥の声と共に、遥の手の中に万薬草の花が乗っていた。


「何したの?」


「私のスキルの中に遠視召喚ってあったでしょ?あれは何だろうと思ってたんだ。ここに来るまでの間に遠くを見ることができた。あれが遠視なのかなと思ったんだけど、召喚ってなんだろうって。もしかしたら遠くのものを取れるのかなって」


「取れたんだ」


「取れた、はい」


 遥は私に万薬草の花を渡してきた。


「空間収納に入れて」


「わかった」


 私は遥に言われるがまま空間収納に入れた。

 続けて遥は万薬草の花を二つ手に取った。


「私とヤニックの分、はい」


 と遥が私に渡してきたので、私はそのまま空間収納に入れた。


「俺の分も、1つで良い。できれば2つ」


 慌てて声を出したマルセル。

 既にステータスを閉じていた遥は、


「これ、一人いくつ採っていいの?」


 とマルセルに聞き返す。

 それを受けてマルセルは水の底の花の数を確認する。


「1つでいいや。ダンジョンなら全部ってところだけど、ここは試験用の施設だから採りすぎも良くないな」


 ここはダンジョンではなく施設なのか。だから人工的に掘られた形だったのか。ん?つまり先ほどの岩のゴーレムも作り物?

 そんなことを考えている間に遥はマルセルの分の万薬草を手にしていた。


「ありがとう」


 マルセルは万薬草を受け取るとそのまま自分のマジックバッグにしまい、そして私たちに言った。


「ゴーレムから落ちた赤い石は回収されると思うけど、この万薬草はもらえるはずだ。これを売れば宿屋1か月分くらいにはなる」


 驚いた。そんなに高価なものなのか。


「本当?じゃあ寝間着も買える?」


 遥が嬉しそうにマルセルに訊ねる。


「宿屋の宿泊期間を短くすればな。それよりも早く戻らないと試験に落ちるぞ」


 マルセルの言葉を聞いて、慌てて腕時計を見た。時計は8時半を回ろうとしている。この世界の時間では+8時間と仮定して16時半くらいだろうか。昨日の日没を考えると…


「あと30分くらいで戻らないとマズいかもしれない」


「やばいじゃん」


 私たちは急いで戻ることにした。真っ暗な中、スマホライトをヤニックに任せ、私は指先に光を出しながら来た道を出来る限り急いで戻る。陣に印を残しておいたおかげで帰りは早かった。

 やがて車のヘッドライトが見えてきた。私は指先の光を消し、ヤニックから受け取ったスマホのライトも消した。車まで辿り着くと急いでエンジンをオフにして、今度は自分の空間収納の中に車をしまった。

 そして私たちは入口に戻った。まだ太陽の光は残っている。


「日没には間に合いましたが、依頼物はいかがですか?」


 入口部分に立っていたアルノルドが訊ねてきた。

 私は空間収納の中から万薬草の花を3つ出して、アルノルドに見せた。

 アルノルドは両手を握る様にパンッと合わせて笑った。


「おめでとうございます。合格です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ