31.実地試験③
二つの分かれ道。どちらに進むべきなのか。奥を照らしても違いが分からない。右か左かそれだけだ。
すると、遥が「ん?」と何かに気づいたような反応をした。
「なんか分かるかも」
「何が?」
「空気の流れ。風の流れというのかな」
遥の言葉に、私もヤニックもピンとこなかった。何故なら、
「風なんか吹いてなくない?」
私が言うと、遥は、
「でも感じるの。何で感じるか分からないけど感じる。右側から風が吹いてきて、左側に流れていってる」
「それ本当?」
「本当。でも、どっちに進むのが正しいかというのは全く分からない」
すると、後方からマルセルが小声で言った。
「わずかな風でも風属性の者は感じるらしい。風が吹いてくるということは、その先に空気孔のようなものが存在するということだ。逆に空気が流れていくということは、そちら側に水がある。その水が川なのか、自然に湧いたものか、人工的に掘られた結果水が湧いたか分からないが、宝というものは水に近い場所に置かれていることが多い」
マルセルはド素人集団の私たちにヒントをくれたようだ。
「じゃあ、左側に行くべきってこと?」
私はそう言ってマルセルを見た。しかし、相変わらずマルセルは顔を逸らした。
私たちは左側を選択した。相変わらず石が消える陣が定期的に現れる。つまりはこの選択は正解ということだろうか?
やがてポチャ、ポチャ、という水が落ちる音が聞こえてきた。
その時だった。スマホのライトに何かが反応した。ガチャガチャガチャと物音がする。先ほどのコウモリ軍団だろうか?私はスマホで上下左右に動かして辺りを照らしまくった。
「ゴブリン?ゴーレム?ミュータント?」
遥が言った。
私が「何?」と聞くと、遥は目を細めた。
「奥にいる。何か大きなモンスターみたいなの」
「え?!」
私とヤニックは同時に声を出した。
そしてマルセルも警戒して剣に手をかけた。
私は奥を照らすが光の届く範囲には何もいない。
「どこにいるの?」
遥は目を細めてじーっと奥の方を見ている。
「夏ちゃん、光飛ばせないかな? 距離感が分からないんだ」
私は「分かった」と言い、ヤニックにスマホを持ってもらい、そのままマルセルを見た。
「杖、貸して」
マルセルはマジックバッグから杖を取り出して、「はい」と素直に貸してくれた。
「ありがとう」
私は魔法レッスンの時と同じように杖を使って星を描いて丸を描いて光を前に飛ばしてみた。すると、
「あ、一体倒れた。ヤバい、こっちに向かってくる。3体?4体?5体!5体!とりあえず連発して」
遥が焦った口調で言う。
「わ、分かった」
私は星を描いて丸を描いて光を前に飛ばすを何度か繰り返した。そのたびに遥が反応している。
「当たった!あ~外れた。当たった当たった。外れた、もうちょっと右。当たった。あと2体。当たった。あと1体」
遥と違うところで焦った声がした。
「来た!」
スマホを持っていたヤニックがライトの光の中に影を見た。
その姿は私にも見えた。私は慌てて星描いて丸描いて光を飛ばした。しかし慌てたせいで外れ、それは目の前まで迫った。
「壁出します」
ヤニックが地面に手を置くと、ゴゴゴゴゴという音と共に目の前に岩の壁が立ち上がった。その瞬間バンっと壁に何かが体当たりする音が聞こえた。
「今の何…」
私はマルセルを見た。
マルセルは剣に手を当てたまま答えた。
「岩のゴーレムだ」
岩の壁はまだバンッバンッと音が鳴っている。ヤニックの壁はかなり頑丈らしくなかなか破られない。
「どうしようか」
遥が私に聞いてきた。
私はそのままヤニックに訊ねた。
「ヤニック、あの壁って離れてても解除できるの?」
「見えてる範囲なら」
「なら、ちょっと離れよう。場所さえ分かれば次は狙い撃ちする。そうだ、あそこの陣後ろは?」
もはや見えないけれど、先ほど通り抜けてきた陣を指す。
「最悪、攻撃魔法が当たらなかった場合、陣が敵を消してくれる可能性にかける」
遥は大きく頷いた。
「それにしよう」
私たちは後方へと戻ってゆく。ルーズリーフの印が役に立ち、スムーズに陣の後ろにスタンバることができた。
スマホライト係は遥が担当となり、ヤニックは手を地面につけた。
岩の壁はまだバンッバンッと音が鳴っている。
「いきますよ」
ヤニックの確認に対して、私は杖を構えて「OK」と答えた。
「解除します」
ヤニックの声と同時に壁がガラガラと音を立てて崩れた。そして岩のゴーレムが姿を現した。こちらに迫ってくる岩のゴーレム。私は狙いを定めて星を描いて丸を描いて光を放った。光は岩のゴーレムに直撃し、岩のゴーレムは爆破されたように破砕し、その場にポトッと赤い石が落ちた。




