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29.実地試験①

 実地試験がスタートし、私と遥とヤニックは当然バラバラではなく一緒に進むことにした。

 洞窟の中を覗き込んだ遥は、


「先、真っ暗だよ。本当にここに入るの?」


 遥がアルノルドを見る。アルノルドは微笑んで首を傾げ、手を洞窟の中に向けて、入ってくださいという仕草をする。

 ふうと大きく息をつき、私たちは洞窟の中に入っていく。入口から10mくらいは外の光が届いて辛うじて明るいが、その先はまさに真っ暗である。


「急に寒くなってきた」


 と、遥は私の腕にしがみついている。

 その3歩ほど後ろにマルセルがいる。腰にはギルドから借りた長剣を刺している。マルセルは私たちに危険があった場合のみ加勢する役目で同行することになった。基本いないものとして扱ってくれとのことだったが、


「光魔法を使って照らしてみたらどうだ?」


 と後ろから声をかけてきた。


「そんなことできるの?」


 私は振り返ってマルセルを見る。しかし、マルセルは「俺はいません」とそっぽを向いた。

 私は初めて魔法を使ったときのように右手の人差し指を一本立てた。そして、その指先に魔力を集中させて光が出るように念じてみた。すると、電球サイズの光の玉のようなものが指の周りに現れた。


「なんか、出た」


 光の玉は周囲をある程度明るくしてくれるけれど、懐中電灯みたいなもので照らせる範囲に限界がある。私は更に念じてみると、光の玉は少しだけ大きくなったものの、やはり照らせる範囲には限界があって、周辺だけが明るくなるだけで先は暗いままだ。しかも、ずっと念じ続けるのも辛い。


「電灯みたいに、一定間隔でこの光置けないかな」


 私は指先の光を壁面に置いてみる。しかし、思った通りにはいかず、その瞬間消えてしまった。

 遥はそれを見て思いついたように私に言った。


「車を出したらどうかな?」


「車?ここで?」


「この先はどうなってるのか分からないけど、ここだったら出せそうじゃない? とりあえずこの先どうなってるのか確認するためにも一定の距離までは車の光で照らせるんじゃないかな」


「バッテリー上がらないかな」


「魔道具化したんじゃないの?」


「いや、電気が入るというイメージは入れたけど、イメージの中にバッテリー入れてた気がする」


「やってみようよ」


 遥は私が答えるよりも先に「やろう!」と空間収納から車を取り出した。

 私は不安を抱えつつも運転席に乗り込みエンジンをオンにしてからライトをハイビームにして洞窟の中を照らした。すると、鳥のような集団が一斉に洞窟の奥の方へと飛んで逃げて行った。黒っぽかったのでたぶんコウモリだったのだろうと思う。真っ暗な時は気づけなかったけれど、ライトで照らしてみると、洞窟内の様子が想像とまるで違っていた。


「これって…」


 遥のテンションが急激に上がったことを感じた。

 てっきり鍾乳洞のような洞窟を想像していたけれど、自然にできた洞窟というよりも人口的に掘られた洞窟といった造りだった。採石場の坑道のような直線的な壁が続いている。天井はそれほど高くはなく、2mちょっとあるかないかくらいで、少し背の高い人ならばジャンプしたら届きそうな高さだった。また、道の幅は徐々に狭まっていっているようで、数メートル先からはこの車で車幅ギリギリ通れるかどうかくらい。車で進むのは難しそうだ。それでもギリギリまで車を進めてみた。照らされる先が更にちょっとだけ伸びた形だ。


「ダンジョンっぽい」


 遥が呟いている。きっと異世界あるあるなのだろう。

 車を降りると、入口の所からアルノルドとドニーズが興味深そうに近づいてきて車を見ていることに気づいた。


「これ、使っても良いですよね?」


 私はアルノルドに聞いてみた。

 アルノルドは頷いて答えた。


「手段に制限はありません」


 私たちはその答えを聞いて、洞窟の中を進むことにした。しかし、あんな数のコウモリが洞窟の奥にいると思うと気持ちが落ちる。

 少なくとも車から100mくらいは光が確保できている。光さえあれば怖さは薄れる。だから、ついつい普段のペースで歩いてしまいそうだったが、遥が止めた。


「異世界あるあるだと、トラップがある。だから気を付けて歩いた方がいい」


 トラップの存在なんて全く考えていなかった。

 遥は足元に転がっていた石を拾って少し先に投げる。特に何の変化もない。再び石を拾って、今度は転がすように投げる。やはり何も起きない。


「よし、あそこまでは進める」


 遥に従って、私たちはゆっくりと歩みを進める。そうして徐々に進んでいく。このまま何もないのではと考えた矢先、遥が転がした石が突然パッと消えた。

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