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27.検査

 ギルドマスター・アルノルドは、私たち一人一人を見定めるように見てから確認するように聞いてきた。


「右からハルカ・ツチヤさん、ナツコ・ツチヤさん、アドリア村ヤニックさんでお間違いないですか?」


 全員同じタイミングで「はい」と頷いて答えた。

 すると、アルノルドは先ほどドニーズに持っていかれたロランスの紹介状を持った手を見せ、


「お返しします」


 と、一人一人に紹介状を返した。

 その瞬間、私も遥もヤニックもとてつもなくホッとしたような顔をしていたのだろう。アルノルドは少し困惑したような顔をした。


「ん?何か?」


 アルノルドの質問に私は答える。


「いや、この紹介状は没収されるのかと心配してまして」


 アルノルドは大きく口を開けて「ははははは」と笑ってから、


「こんな大事なもの、没収なんてことはいたしませんよ。本物かどうか確認する必要がございましたので、一時的にお預かりしただけです」


 そして、両手を握るようにパンッと合わせてから、


「では、どなたから始めましょうか」


 私、遥、ヤニックは一度顔を見合わせてから、無言でアルノルドを見た。

 アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせてから、


「おや、説明がまだでしたか」


 とドニーズを見た。

 ドニーズは特に反省する様子もなく反応した。


「ええ、この部屋にお通ししただけです」


 ドニーズの言葉を聞いて、アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせた。この両手を握る様にパンッと合わせるのはアルノルドの癖なのだろうな。


「なるほど。状況は把握。まずは魔力検査から受けていただきます」


 アルノルドはテーブルの上の物体にかかる布を取り上げた。そこに現れたのはバスケットボール大の水晶のような透明な球体だった。


「まずはこちらに手を当てていただいて、魔力の属性、その魔力量を検査いたします。ウィザード・ロランスが紹介状を書かれるような方々なので問題ないかとは思いますが、ルールとなっておりますので」


 アルノルドは私たち3人を見比べ、照準をヤニックに絞った。


「それではヤニックさんからどうぞ」


 指名されたヤニックは緊張した面持ちで前に出て、球体の前の椅子に座った。その後、アルノルドは球体を挟んだ反対側の椅子に座った。


「どうぞ、手を当ててください」


 アルノルドの指示に従い、ヤニックは恐る恐る球体に手を当てた。すると、球体の中に茶色い埃っぽいものがぐるぐる渦を巻き始めた。

 アルノルドはドニーズを見る。

 ドニーズは書類に何やら書き込んでいる。書き込み終えるとドニーズはアルノルドを見て頷いた。

 アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせた。


「終了です。それでは次は…ハルカさん」


 球体に手をおいたままのヤニックは不安そうにアルノルドに聞いた。球体の中はまだ茶色い埃っぽいものがぐるぐる渦を巻いている。


「このまま手を離しても良いんですか?」


「ええ、大丈夫です」


 アルノルドの言葉を受け、ヤニックは恐る恐る球体から手を離す。すると、球体は再び透明に戻った。


「ヤニックさんは土属性ですね」


「はい、そうです」


「魔力量も問題ないです」


「ありがとうございます」


 ヤニックは恐縮そうに頭を下げて、遥に席を譲った。

 代わって座った遥は、アルノルドの「どうぞ」という合図を受けて球体に手を置いた。すると、球体の中で白っぽい雲のようなものと薄っすら青い線のようなものがぐるぐる渦を巻き始めた。

 アルノルドはヤニックの時と違い「ほお」と顎に手を当てた。その次にドニーズを見た。

 ドニーズは書類に何やら書き込んでいる。書き込み終えるとドニーズはアルノルドを見て頷いた。

 アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせた。


「終了です。それでは最後、夏子さん」


 しかし、遥は席を立たず、何かを求めるようにアルノルドをじっと見ている。

 アルノルドはその視線に気づいて、


「ハルカさんは風属性ですね」


 遥が気にしたのはそこではなかったようだ。


「ほおって言ったのはどういう理由ですか?」


 アルノルドは大きく口を開けて「ははははは」と笑った。


「そこが気になりましたか」


 遥は「はい」と大きく頷く。


「風魔法ではあるのですが、少々特殊でしてね」


「特殊?」


「波が混じっているというのかな」


「波?」


「水魔法の要素が混じっているというか、水は出せないけれど、水魔法のようなことを風魔法でてきるのでは?という形ですかね。実地試験の方でそれは確認しましょう」


 遥はほんのり嬉しそうな顔をして「分かりました」と席を立った。

 代わって私が席に着いた。

 アルノルドは「どうぞ」と球体に向けて手を差し出したので、私は球体に触った。すると、キラキラとした小さな星のような、太陽の光を受けた塵のような、とにかく小さな黄色っぽい光の粒がいくつも出てきてぐるぐると渦を巻き始めた。その中に七色に光る小さな粒もいくつか混じっている。


「これはまた珍しい」


 アルノルドが顎に手を当てて球体の中を覗いている。


「珍しい?」


 私が尋ねると、アルノルドは渦の中の何かをじっと見ているようだった。


「光属性自体珍しいのですが、その中でも特に珍しいというのかな。虹…なのか?」


 アルノルドはじーっと球体の中を覗く。


「虹?」


 私が聞くと、アルノルドは首をひねった。


「いやあ、そういった属性は聞いたことがないのだが…うーむ。これも実地の方で確認しましょう」


 アルノルドはドニーズを見た。

 ドニーズは書類に何やら書き込んでいる。書き込み終えるとドニーズはアルノルドを見て頷いた。

 アルノルドは再び両手を握る様にパンッと合わせた。


「では実地試験へ」

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