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26.冒険者ギルド

「ここが、首都シャルタルの冒険者ギルドだ」


 そう言ってマルセルが見上げたのは東京駅のような赤レンガ造りの建物だった。

 マルセルの先導で、私たちは建物の中に入っていく。

 中に入ってすぐ、遥は「アニメで見たままだあ」という種類の感動をしている。ヤニックも何やら興奮したような笑顔を見せている。

 遥は異世界あるあるとして時代設定が中世ヨーロッパ風と言っていたけれど、確かに。中世ヨーロッパの建物にそれほど詳しくない私でも言っている意味が分かった気がした。木造の太い柱に支えられた広い空間、レンガの壁面に木製の大きな扉と窓枠、幾重にも重なった木の梁がむき出しになった高い天井、全体的に茶色っぽい室内。

 室内にはテーブルと椅子のセットがいくつか設置されているが、全ての席が冒険者らしき人達で埋まっている。正確に数えたわけではないけれど、男性8割、女性2割くらいの比率だ。アウトドアが好きそうな屈強な男性の集団、屈強な男性の集団の中に冒険者というには貧弱そうな男性が何人か紛れている集団、屈強そうな男性の集団の中に何名か女性が混じっている集団、女性だけの集団。同じような集団がいくつかある一方で、全く違う雰囲気の集団もいたりするが、彼らは私たちに気づくと決まって同じ顔をした。視線で分かる「あいつら何者だ?」感。

 そして、何人かに一人は顔見知りのようで、マルセルの元にやってきて、


「よお、マルセル。冒険者復帰か?ウィザード・ロランスに捨てられか?」


 と聞き、そのたびにマルセルが、


「こちらはウィザード・ロランスのお客人で、俺は任務として彼女たちの護衛をしているだけだ」


 と答えている。そして彼らを突っぱねるようにマルセルは私たちに声をかけた。


「突っ立ってないで行くぞ」


 マルセルに呼びかけられ、私たちは後に続いた。

 そして向かったのは銀行の窓口のような場所だった。

 マルセルは受付の女性に「どうも、ドニーズ」と声をかける。


「あら、マルセルさん久しぶり。ウィザード・ロランスに捨てられて冒険者に復帰するの?」


 と答える受付の女性、ドニーズ。


「なんでどいつもこいつも俺が捨てられたと思うんだよ」


「違うの?」


 マルセルは私たちを指して言った。


「ウィザード・ロランスのお客人だ。冒険者登録をしたい」


 ドニーズは私たちの頭の先から足の先まで確認するように見た。


「異国の方ですか?」


「ああ、一名はアドリア村出身だ」


 マルセルの言葉を聞いて、ドニーズはヤニックに視線を移した。


「ウィザード・ロランスとの繋がりを証明できるものはお持ちでしょうか」


 ドニーズは私たちに言った。

 マルセルは「あれを」と続いて言った。

 当然私たちが提出するものはロランスの紹介状だ。

 ドニーズはそれぞれの紹介状をチェックした後、ふうと息をついてから立ち上がって


「奥の部屋へ」


 と、受付カウンターの奥ある扉を指し、そしてロランスの紹介状を持ったまま受付の背後の扉に入っていった。 

 マルセルは首をぐるりと回して、「はあ、すげーな」と呟いてから私たちに言った。


「行くぞ」


 マルセルの言葉で、私たちは奥にある扉の前に移動した。

 私はマルセルの呟きが気になったので聞いてみた。


「何がすごいの?ロランスの紹介状?」


「そうだな。想像はしてたけど想像以上だ」


 扉の前で待っていると、扉が開かれ、ドニーズが姿を現した。紹介状はもう持っていなかった。


「どうぞ、こちらへ」


 ドニーズの案内で、私たちは6畳くらいの部屋に通された。

 部屋の中央には、おしゃれなカフェにありそうな木製の二人掛けダイニングテーブルセットようなものがあり、テーブルの上には布がかけられた物体がある。上部は丸くなっているので、布の中は球体だろうと予想する。


「こちらで少々お待ちください」


 と、ドニーズは私たちに告げてから、部屋を出て行った。

 私たちは誰も椅子に座らず、ただ立っていた。


「この部屋は?」


「俺も初めて入る。たぶんVIP部屋だ」


 遥は「VIP…」と何やら嬉しそうに呟いた。

 その表情と真逆の顔をしていたのがヤニックで、マルセルに確認した。


「ロランス様の紹介状はここで没収されてしまうのでしょうか?今後の旅の強いお守りだと思っていたんですけど、もうあの紹介状は使えなくなるということですか?」


 ヤニックの質問を聞いて、私と遥も急に不安になった。

 マルセルは「う~ん」と首をひねり、


「没収は無いと思うが…」


 と答えた。

 トントンと部屋の扉がノックされ、ドニーズと共に恰幅の良い中年男性が入ってきた。


「よお、マルセル久しぶり」


 マルセルは軽く頭を下げて、「お久しぶりです」と返した。

 中年男性は私たちの前に立ち、


「ここでギルドマスターをしているアルノルドです」


 と自己紹介をした。

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