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25.首都シャルタル

 雑談しながら歩いているうちに石造りの高い壁が見えてきた。とにかく横に長く、目の前一面が壁といった感じだ。


「あれは?刑務所?収容所?」


 私がマルセルに聞くと、


「首都シャルタルだ」


「城塞都市ということ?」


 頭に浮かんだのは有名な世界遺産であるフランスの城塞都市カルカソンヌ、そのように見える。

 私の問いに、マルセルは「城塞都市?」と少し首を傾げた。その言葉にピンと来ていないようだった。


「アドリア村のような小さな集落は別だが、首都シャルタルのような主要都市は殆どがこういった壁の中にある」


「殆ど?ということは例外もある?」


「元々は五大国が敵国同士だった時の名残で、外敵の侵入を防ぐために造られていた。サンバチスト様の勢力圏となり戦争が無くなった今は無用の長物になっていて、この壁を維持するのにも相当な経費が掛かるから維持費をケチっている西のヴァッヂ王国なんかは首都以外の地方の街では壁が劣化しても直さずに順次撤廃していっている」


 遥は「へえ」と相槌を打った。


「そして、こういった壁に囲われた都市には冒険者ギルドがあると考えていい」


 そう話している間に首都シャルタルの入口に到着した。入口は大きな門のようになっていて、現在は重々しい鉄の扉が開かれた状態になっている。その両脇には警備兵のような人たちが立っている。


「壁を撤廃している国もあるのに都市に入るのにチェックがいるの?」


 私はマルセルにそっと聞いた。


「どこの国も首都は入るのにチェックがある。そこには国の王族が住んでいるからな。顔見知りになれば顔パスさせてもらえるが」


 次いで遥が聞いた。


「私たちも入れる?この服で不審がられない?」


 するとマルセルが呆れたような顔をする。


「ロランス様が何のために紹介状を書いたと思ってんだ? あの紹介状の威力は絶大だ。今のうちに出しておけ」


 マルセルに指示通り私と遥とヤニックはロランスの紹介状を手に持った状態で入口に向かった。国際空港の入国審査のような気持ちになり緊張したが、警備兵はマルセルと顔見知りのようで、


「よお」


 と警備兵の方からマルセルに話しかけてきた。しかし、その視線はすぐに私たちの方へと向けられた。


「連れか?」


「ああ、そうだ。ウィザード・ロランスのお客人だ」


 マルセルの返事を合図に、私たちはロランスの紹介状を広げた。

 警備兵は紹介状を一枚ずつチェックして「間違いないな」と納得したように言った。


「てっきりウィザード・ロランスに見限られたのかと思ったよ」


 マルセルはムッとした顔をして、


「俺はロランス様に重大な任務を与えられたんだっ」


 警備兵は手のひらを門の奥に向け「どうぞ」という仕草をした。そして、私たちの後ろにいた人たちのチェックに移った。特に疑われることもなく、すんなり壁の中に入れた。


「ほらな、ロランス様の紹介状の威力は絶大だと言ったろう」


 私たちは大きく頷いた。とんでもないスーパーパスポートを手に入れた気分になった。


「では、まずはこのまま冒険者ギルドに向かうぞ。そして登録する。その招待状の威力をもっと実感することになるだろう」


 マルセルの先導で冒険者ビルドに向かうことになった。

 首都というだけあって、往来する人の数が今までとは比較にならないほど多い。男女差では男の方が多いような感じだ。

 街の中はプラハあたりの旧市街といった感じ作りになっている。全体的にピンクや薄黄色、橙色といった壁面の石造りの建物が並ぶ。高さは4階から5階建てで統一されている印象だ。門から真っすぐ伸びた大通りに面している1階はお店が並んでいる。パン屋さんや肉屋、食堂、薬局に武具店といったラインナップだ。時折酔っ払った集団が店から出てきて大騒ぎしている。


「異世界だあ」


 と遥が目を輝かせて感動している。


「すごい、すごい」


 この世界の住人であるヤニックも初めて見る光景だったらしく興奮した様子できょろきょろしている。

 500メートルくらい先だろうか。大通りの先に巨大な宮殿のようなものが見えてきた。


「あれは?」


 マルセルに訊ねると、


「王宮だ。まあ、あそこに近づくことは滅多にない。入れるのは新年の挨拶の時くらいだ」


 とマルセルは答えた。

 見学して見たいなと思ったが、現役で使っている王宮なのであれば諦めざるを得ない。

 そうこうしているうちに目的地に着いた。


「ここが、首都シャルタルの冒険者ギルドだ」

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