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23.目撃者の話

 私たちは首都シャルタルに向け歩き出した。

 大きな通りに出たところに人が溜まって、こちらの細道を覗いていた。その中の冒険者っぽい男性がマルセルに話かけた。


「君たち、この道から来たのか? 変な乗り物見なかったか?」


 マルセルは平然と「こちらの方々の乗り物ですね」と私たちを指して答えた。

 冒険者っぽい男性は「え?」と困惑している。

 言ってしまったら車を隠した意味がないじゃないかと思ったけれど、マルセルは平然と続けた。


「私はウィザード・ロランス従者マルセルだ。こちらの方々は異国から来られたウィザード・ロランスのお客人だ」


 マルセルは私たちにロランスの紹介状を見せるように要求した。

 私たちは慌ててロランスの紹介状取り出して広げた。

 冒険者っぽい男性は恐れおののいて「失礼した」と頭を下げた。


「この王国の人々には見慣れない乗り物で目立ってしまうため、ここで降りることにした。あの乗り物で今後も移動する予定なので怪しいものではないことを広めてもらえると助かる」


 冒険者っぽい男性は私たちをジッと見てから、納得したように頷いた。


「なるほど、了解した」


 マルセルが素直に答えた理由は、車の中で話していた私たちの情報を広める計画の一環だったようだ。


「君は冒険者?」


 マルセルが冒険者っぽい男性に聞く。


「ああ、そうだ。べンチャ王国サレド村出身のアクタスだ。タンクをしている。後ろにいるのが同じパーティのメンバーだ」


 確かに後ろに人はたくさんいる。ただ、たくさんいすぎて、誰が同じパーティの人たちか分からない。

 マルセルは後ろの人達を一瞥した後、アクタスに訊ねた。


「ベンチャ王国出身であれば訪ねたいことがある。君たちは勇者エイタの情報を持っているか。どこかで見かけたとか、我々は今勇者エイタに関する具体的な情報を求めている」


 マルセル、この段階から情報収集をしてくれるのかと感心した。


「いや、残念ながら勇者エイタに関しては具体的な情報は持ち合わせていない。ただ、うちのパーティの一人が…リンゼオ!」


 アクタスは後方にいる集団に向かって呼びかけた。

 すると、その中から一人、ひょろっと細長い感じの男性がこちらに近づいてきた。


「彼はうちのパーティで回復士をしているリンゼオだ。うちのパーティで唯一のエンガ王国出身者だ」


 リンゼオという男性がこちらに到着すると、アクタスはリンゼオに訊ねた。


「お前以前人魚の話してなかったか?」


 するとリンゼオは「ああ、したな」と答えた。


「こちらの方々が勇者エイタの情報を集めているようなので、お前の知ってる話を教えてやってくれ」


「俺の知ってる話でいいの?」


 リンゼオに対して答えたのは遥だった。


「いいです。何でも良いので教えてください」


「エンガ王国内の冒険者ギルドでの話だ」


 エンガ王国は北東の国だったはずだ。

 リンゼオは話を続けた。


「仕事探しにギルドの掲示板見てた時に、青ざめた形相の冒険者が飛び込んできて『空を飛んでいる人のような影を見かけた。魔族が侵入してきたのかもしれない!』と叫んだんだ。ギルド内はもう大騒ぎだ、何人かは飛び出て確認しに行った。そしたら誰かが言ったんだ。『それは勇者エイタと同じパーティにいるという空を泳ぐ人魚じゃないか?』って」


「その人は何故人魚だと思ったんでしょう?」


 今度は私が聞いた。


「その人自身も見たことがあると言ったんだ。それで青ざめた形相の冒険者から詳しい状況を聞いたら、空を泳ぐ人魚で間違いないと」


「人魚だけで、勇者エイタは見てないんですか?」


「俺も話を聞いただけだから詳しく分からないけど、勇者エイタも一緒だったという話はなかったはずだから人魚だけだったと思う」


 空を泳ぐ人魚が本当なら、春ちゃんである可能性が高いかもしれない。


「それはいつの話ですか?」


「2年くらい前かな」


 2年前とはいえ、私たちにとっては貴重な情報だった。


「貴重な情報をありがとうございます」


 私たちは彼らに礼を言い、人溜まりを抜けて、首都シャルタルに向け大通りを歩きだした。


「マルセルありがとう。こんなすぐに情報に触れられるなんて想像もしてなかった」


「冒険者は五大国を廻ってるから情報を持っているやつが多い。まあ、ヴァッヂ、シャルタル、ベンチャをぐるぐるしてるだけのやつらは大抵レベル低めで持ってる情報も乏しいとは思うが」


「国によって難易度が違うということ?」


「そうだ。北側の国は魔王国に近いせいで魔素の影響を受けているのかダンジョンにいる魔物が強い。あの車に使った魔石もエンガ王国内のダンジョンで遭遇したキングヒノプスと戦って得たものだ。魔物が強ければ強いほど獲得できる金額も高くなる。だから腕に自信のある冒険者は北側の国へ行き、自信のない冒険者は強い魔物があまり現れないヴァッヂ、シャルタル、ベンチャをぐるぐるしてる」


 そこで遥が話に入ってきた。


「ロランス様には北に行かないようにと言われたけれど、エンガ王国で目撃されたならば行かざるをえないよね」


 それに対し、マルセルは冷静に反論した。


「今は北に魔族が入り込んだ可能性があるとロランス様が言っていたろう。出来る限り近づかないほうがいい。それに人魚が目撃されたのは2年前だ。今エンガ王国にいるとは限らない。急いでエンガ王国に行かず、少しずつ精度の高い情報を集めていって、それでも北にいる可能性が高いとなった時に方法を考えるべきだ」


 それはマルセルの言う通りで、私もヤニックも自然と頷いていた。

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