22.マルセルの方針
車を収納した後、遥がずっと考えていたらしい疑問をマルセルに伝えた。
「どうして一回首都シャルタルに寄るの?時間の無駄じゃない?そのまま港町まで行けばいいのに」
するとマルセルは「それはこの世界を分かってなさすぎる」と上から目線で言ってきた。
「この先の利便性を考えるのであれば、まず首都シャルタルの冒険者ギルドに登録するべきだ」
「私たち冒険者登録するの?!」
遥が驚いて聞く。ヤニックも驚いている。
マルセルは大きく頷く。
「あんたらの目的は勇者と人魚を探すことだろ?ベンチャ王国に行ったからと言ってすぐに見つかるわけでもないだろう。見つかるまで時間はかかるはずだ。だとしたら、それまでの生活費を稼がないとならない。あんたら、この世界の金持ってないだろう?」
私はマルセルの言い分に「確かに」と納得した。財布はあるけれど日本円でこの世界では意味をなさない。一万円札だってただの紙切れだ。
「金稼ぐ方法はいろいろあるが、人探しするということは移動を伴うことが前提だ。つまり、店を開くとか御用聞きをやるとか、そういう定住地が必要な仕事は無理だ。移動前提で金を稼ぐならば冒険者が最も条件に合う」
「でもでも、私たち魔物と戦うの無理だよ。戦うなんて経験したことないもん」
遥が言うと、マルセルは何を言ってるんだ?という風に言った。
「攻撃魔法使えてたじゃないか」
すると、それに納得したのはヤニック。
「使えてました。しかも夏子の方はかなり強い魔法だった」
ヤニックが私を見て言った。
「そうなの?丸太倒しただけだよ」
「丸太を倒すのがまず難しいんですよ」
そんな強い魔法を出したと思ってなかった。あ~丸太倒れた~くらいの感覚だった。
マルセルはヤニックのフォローに礼をしてから話を続けた。
「それに冒険者の仕事は魔物を討伐するだけではない。魔鉱石探しや危険性が低い薬草探しもある。それにロランス様の紹介状を持っているのだから、ロランス様の加護国であるシャルタル王国内で登録するのが良い」
なるほどと納得しかけたけれど気になったので聞いてみた。
「シャルタル王国で冒険者登録してもベンチャ王国で登録しなおさなければならないのでは?」
「夏子の言う通りベンチャ王国に入ればベンチャ王国内の冒険者ギルドに登録する必要はある」
「だったら、ここで登録しても意味がないのでは?」
「冒険者の登録するためには試験を受けなければならない。冒険者の仕事を振るに値する人物なのかどうか見極められる。そこで不合格になれば登録できない。しかし合格さえしてしまえば、サンバチスト様勢力圏の五大国の往来は自由になるし、冒険者ギルドに登録する際の試験を省略できるようになる」
「パスポートあればビザ要らないみたいな感じかな?」
遥が小声で聞いてきたので、私は小声で「似たようなものだろうね」と答えた。
「そういう意味でもロランス様の紹介状の威力が最も強く出るシャルタル王国内で最初に登録するのが最も有利だ」
確かにマルセルの言う通りだと思った。
「なるほど、勉強になります」
とヤニックも大きく頷いた。
もしもマルセルが同行してくれなかったら、私たちは生活費を稼ぐ手段や五大国の往来など色んな意味で途中挫折していた可能性がある。ロランスの気遣いと、引き受けてくれたマルセルには感謝だ。
「では、首都シャルタルに向かおう」
こうしてマルセルの案内で首都シャルタルまで歩いて向かうことになった。




