13.復習
ロランスから一通り情報を得て、私と遥は車に戻った。
寒くも暑くもないのでエンジンをかけずに済んで助かった。ロランスから魔道具のランプを一つ借りられたので真っ暗にならずにも済んでいる。
ミニバンで良かったと心から思った。私たちは車の後部座席をフルフラットにして寝ころんだ。
「ママが生きてる」
遥は嬉しそうに言い、仰向けになっている私を上から覗き込んだ。
「絶対連れて帰ろうね。エイタ君も」
「そうね。でもまずはこの世界について理解しないと」
私はスマートフォンを取り出して、ボイスメモを開いた。ロランスの話をひっそり録音していたのだ。
遥は驚いている。
「録音してたの?」
「そりゃするでしょ。ミーティングは録音が基本よ。固有名詞とか覚えられないよ」
「確かに。唯一覚えられたのがベンチャ王国へは川の下流経由で行った方がいいというのと、北には行くなってことくらいだった」
ベッドにうつ伏せになり、バインダーノートのロランスに書いてもらったページを開くと、ボイスメモを再生する。そしてロランスの言葉を追いながら、ザックリとした絵に文字を書き込んでいく。
この山がキレネー山、下にあるのがシャルタル王国、この小さな丸がここ、アドリア村。東がクレマンスが加護するベンチャ王国で、西がヴァッヂ王国。北西がマチュヤ王国で、北東がエンガ王国、その上に魔王国がある。ヴァッヂ王国との国境がセリル川、ベンチャ王国との国境がロッジ川…。
北西のマチュヤ王国を加護する魔法使いがガエタン、北東のエンガ王国を加護する魔法使いがファビアン。ガエタンの方は筋肉バカ。
一通り書き込んだ。
「この村が東寄りにあったら良かったのに。なんで西寄りの村に落ちちゃったんだろう」
遥はバインダーノートを見ながら言う。
しかし私は言った。
「むしろロランス様がいるところに落ちたことを幸運と思うべきよ。もしいなかったら、車ごと墜落死してたかもしれないんだから」
遥は納得したという風に息を飲んだ。
「確かに…」
「こうやってこの世界の情報も聞くことができたし、春子やエイタ君がこの世界で生きていることを確信できたし、本当にラッキーだった」
遥は大きく頷いた。
「ねえ、ねえ。ママ、私のこと分かるかな?」
「そりゃ分かるでしょ」
「ママが最後にあったのは9歳の私だよ。ちっちゃい子供だよ」
今、遥は16歳。私からするとまだまだ子供だけれど、身長は私と変わらない。むしろ私よりも少し大きいくらいだ。でも…
「9歳の時から顔は変わってないよ」
「それって童顔ってこと?」
「そうとも言うかな」
遥が「うーーん」と唸る。
私は大事なことを思い出した。そして運転席のカバンを取った。
「どうしたの?」
遥が聞いてくる。
「汗拭きシート。遥も使う?」
「あ~、使う使う!お風呂入りたい」
「この世界、お風呂あるの?」
「あってほしいよ。水浴びとか嫌だよ」
私はカバンの中から汗拭きシートを取り出して、遥に一枚渡した後、自分の体を拭いた。
遥も体を拭いている。
一通り体を拭き終わった後、今度は車に積んでおいたクレンジングシートを取り出した。
「何でそれが入ってるの?」
「決算期とか経理に巻き込まれて泊りの日があるじゃない」
「あ~」
「その時対策で積んでるの。これはW洗顔不要タイプだから便利なの」
私はバックミラーを覗き込みながら化粧を落とした。これでスッキリ。
「それ、メイクしてなくても使える?」
「今、汗拭きシートで拭いてたじゃない」
「え~、顔用のがあるなら、そっちで拭きたい。一枚ちょうだい。私も顔拭く」
こうして一通り拭き終わってスッキリした私たちはフルフラットに横になり、そのまま眠った。




