ヒロイン視点:私の家
私は貴族の家に生まれた。
7人兄弟……と言っても、複数の愛人を持つ父の子だ。 家を継ぐ力を持つ子どもが欲しいだけの、条件に合う女がいれば嫁に入れて子を産ませる、事務作業のような子作りで生まれた子どもたち。
強くもなく、そして弱くもない私は、早々に父の騎士団に入れられた。騎士としてボロボロになって生きてきた。金のため、時には傭兵まがいの汚い仕事もさせられた。
分厚くなった手のひら。焼けた家に飛び込まされたときにできた、顔半分の大きな火傷痕。傷だらけで硬い、筋肉質の体。 嫁の貰い手なんかあるはずもない。私はいつも、身内からも嘲笑の的となっていた。
対して、実家にいるのは美しいだけの妹。
どうやら父が、本当に恋をしたらしい、美しい男爵令嬢の娘だ。その母親は出産とともに失われたが、残された娘は輝くように美しく、希少な回復魔術が使えた。
宝物のように愛され、他の兄弟たちからも蝶よ花よと大事に育てられた、私とは一つ違いの妹。
そんな彼女が、ある日、国内の片隅に住み着いた強大な魔物の「生贄」に選ばれた。 儚い涙をこぼしながら「領民のためなら……」と健気に語る彼女に、誰もが涙した。
そして、皆が私を憎んだ。
「なぜ選ばれたのがお前ではないんだ!」
「彼女こそ生きるべきだ!」
「どうして平気な顔をしていられるんだ、冷血漢め!」
「可哀想だと思わないのか!」
「選ばれたのがお前だったらよかったのに!!」
冷めていて、いつも無表情な私には、何を言ってもいいと思われていたのだろう。選んだのは私ではないのに、誰もが私を罵った。妹が庇えば庇うほど、私への風当たりは強くなる。
もう、全部嫌だった。終わらせたかった。
だから私は、妹の乗る生贄の馬車を襲撃し、その白い衣装を奪って山へ登った。妹が着せられていた白い白布は、本来“魔物の花嫁”として捧げられるための衣装だ。衣装を身につける。覚悟は家を出たときから決まっている。
終わらせる方法を、私はこれしか知らなかった。




