なんでやねん(魔物視点)
なんでやねん(魔物視点)
人間を食うのは、別に生きるためやない。ただの道楽や。
昨日もたまの贅沢で、人間をいっぱい見つけたから活き造りで美味しくいただいた。腹も膨れたし、ちょうどええ山を見つけて昼寝を決め込んだ——んやが。
目が覚めたら、自分の周りに立派な囲いみたいな結界が作られていた。
なんでやねん。
すっごい脆い囲いだが、どうやら人間界の小物は入れない仕組みらしい。防犯的には昼寝にぴったりだった。ワシは強めの魔物なので、そもそも食べなくても死なない。
「まぁ、惰眠を貪るのも悪うないな」
グーグーと寝ていたら、なんか一匹、人間がやってきた。 白い布に包まれて、時々石の上に載せられている。どうやら「おやつ」として捧げられているらしい。せっかくなので、起きては「おやつ」を貰い、食べては寝るという極楽生活を続けていた。
だが、そろそろ飽きたし家に帰ろうかと思っていた矢先。 白い布にくるまれた、なんか武装した女が「おやつ」としてやってきた。
「化け物! 絶対に妹はお前に渡さない!!」
妹って何や?
新しい「おやつ」の商品名か?
ちなみにワシの姿は、双頭を持ち、黒く鈍く輝く鱗に覆われ、コウモリのような4つの羽を持つ巨大な蛇。そんな大魔物を前に、人間の雌が刀を振り回してギャーギャー言っている。何がしたいんか、さっぱりわからん。
「お前は何を求め、ここまできた?」
優しいワシは、もう家に帰るだけだし、今まで「おやつ」くれてたお礼と言っては何だが一応話を聞いてやることにした。人間に願い事を聞いてやるなんて、我ながら優しすぎる。これでもワシ、本当はすげー強いんやで?
普通なら人間みたいな下等生物、ワシ、相手にせえへんのや。そこいらの雑魚とは格が違うんやで?
「……私は、お前の花嫁としてここに来た。
いざ、勝負。そのクビを貰い受ける!」
体に電撃が走った気がした。
え? 花嫁? え? え? え? お前、ワシの嫁になりに来たん???? 自分の意志で? それとも、無理やり?
混乱で言葉が出ないが、こういう時は気持ちを落ち着けなあかん。まず、本人の意思確認、これ大事。
人間どもは、よく分からないが生贄とか嫁とか言って、ワシにお願いを聞いてもらうために可愛い子を派遣してくる。ここはまず聞かんことには始まらない。
「自分の意志なのか。それとも誰かの願いのためか?」
「私が自分の意志で来なければ、誰がこんなところに来たがるものか!」
頭の中にごーーーーん!っと鐘が響いた。
結婚や! 嫁が来た!
自分の意志で、ワシの嫁にきおったでぇえええ!!
あ、あかん、冷静にならんと。せや、まずはその顔を見せてもらわんと、年齢とか、ほら、大事な確認事項が……。
バッと勢い良く布を取った女は、歴戦の勇士を思わせる傷だらけの体に、顔半分が焼けただれていた。 その容姿を見て、ワシは震えた。
……なんちゅう美女!!
素晴らしい。その傷のついた体はまさに戦い抜いた戦士の証!
弱者でありながら研鑽を続けたいじらしさが胸に刺さる。
顔まで傷つけてでも勝ちを譲らぬその志は称賛に値する。
年齢も若すぎない、まさに妙齢!!
弱さは罪だ。
弱さは命取りだ。
なのに、そんなに傷だらけになりながら、弱さを覆すために戦い抜いてきたその志が眩しすぎる!
美しすぎて直視に困るレベルや!
嬉しくて震えが止まらん。だって、こんなかわいい美女が嫁に来たっていうんだぜ?
スゲくね?
これはぜひとも連れ帰って、故郷の魔物どもに自慢せなあかんな!!!!
ちょっとモジモジしながら、女を見つめる。
いや、照れてる場合じゃない。
彼女を……まずボコボコにして、ワシの強さを示さねば。
これほどの志を持つ女だ、その剣を向ける姿は弱いやつに嫁に行くはずがないという気合の表れに違いない!
「さあ、かかってこい我が花嫁」
「死ね化け物!!!!」
魔物の言語は、作者の地元の限界集落(over85歳)の方言を参考にしています。
本来は「じゃろがん」「じゃが」などの古い田舎語ですが、読者が読めるように mild に調整しています。
関西弁風に聞こえるかもしれませんが、実際はもっとゆるい田舎語です。雰囲気で楽しんでください。
【ガチ方言Over85歳版】
「わっしゃーのよめになりにきたんかいな?」
「なんでなんじゃがん!」
「わっしゃーそんなんいうけんどがわからんのやけんが。」
【本編mild方言Under85歳版】
「わしの嫁になりにきたやと!」
「なんでやねん!」
「そんなん言われてもわからんがな!」
若い(Under85)世代はテレビの影響で関西弁ポイです。




