表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/40

良房の刺客

平安時代の「承和の変」を舞台にした歴史ファンタジーです。

 御簾の向こうから、淳和院后の驚きがヒシヒシと伝わってくる。


「な、何と、にわかには信じられぬ話じゃ。

わらわも、門番からの報せを受けておらねば、一笑に付しておったであろう」


 その言葉を遮るように、舎人が現れて、「院后様に申し上げます」と言い置いてから…


「大納言殿の使者がお見えです」と平伏した。


 淳和院后は、その舎人に見覚えがないらしく、猜疑心を露わにして、「お主は何者じゃ?」と問い詰めるが、舎人は平伏したままだ。


 本来、来客の取次ぎを女房や乳母ではなく、舎人が行うのは、どう考えても不自然だ…


 次の瞬間、平伏していた舎人が、懐から短刀を抜き放ち、私に、獣の如き速さで飛びかかってきた。


 されど、やいばが私の喉を切り裂く寸前、「バチン!」という破裂音が鳴り響き、舎人が、頭から床板に叩きつけられ、蹴鞠のように跳ねてから、廊下に飛ばされてしまう。


 そして、舎人が叩きつけられた床板には、何故か、潰れた眼球がべったりと張り付いていた。


 御簾の向こうから、「ヒッ!」という短い悲鳴が聞こてくる。


 すると、音もなく、数人の黒装束が部屋に雪崩れ込んできた。


 覆面で表情は読めぬが、皆、決死の覚悟で臨んでいるのだろう。

 されど私は、座したままで静かに賊の一団を見渡した。


「橘逸勢殿がにえとなられ、空海と良房の間で談合が成っておるというのに、それを、一方的に反故とされるおつもりか?

 されど、私にとっては好都合。

空海から、逸勢の死を無駄にするなと、仇討ちを止められておったのに、そちらから飛び込んでくれるとは…」


 一番手前の黒装束が、無言のまま太刀を振り上げると、またしても、「バチン!」という破裂音が響き渡って、弾かれたように吹き飛んだ黒装束が、部屋を仕切るしとみを突き破って動かなくなった。


 それを見た黒装束の一団に動揺が走る。


 蔀の向こうに倒れている黒装束は、頭が内側から破裂して、眼球が飛び出し、耳や鼻から大量の血が吹き出していた。


「身体の内に宿りし雨を、徐々に膨らますのではなく、一瞬で破裂させた。

 案ずるな、皆、楽にあの世に送ってやる」


 その言葉が終わらぬ内に、潮が引くように、黒装束の一団が静かに引き上げていく。

 命あっての物種だと、悟ったのだろう。


 賢き判断だ。


 長い沈黙の後に、御簾の向こうから驚きの声が上がった。


「何と…そなたは物の怪の類いなのか?

とても、人とは思えぬ…

 まるで、雷神らいじんが振るういかづちの如き妖術ではないか…

 神祇伯殿の力がこれ程とは…

そなたの力を見込んで、頼みたきことがあるのじゃ。

 我が子、恒貞の前世よりの穢れを、祓うてはくれまいか…」

読んで頂き、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ