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魔王さま、消せません。

水曜日 13時


私は、課長と一緒に魔王さまの面接に同席した。


コンコンとノック音が響く。

面接官が、どうぞと促す。


扉が開く。

入ってきたのは、魔王さま。


「失礼す…します。」


「よろしくお願いします」と深々と頭を下げる。


おかけください。と面接官が指示をする。


魔王さまは、顔をあげ驚く。

「ヘラクレスではないか」

「本日面接担当の後藤です。」


面接官は、ケンタウロスの後藤さん。

息災であったかと話しかける魔王さまだが、

後藤さんは、「魔王さま、お名前をお願いします」と話を打ち切る。


「わかっておろう。我は、魔界の王ー魔王だ。」


「では、志望動機をお願いします。」

「うむ。世界を征服する為に…社会を知る必要があるからだ。」


昨日の練習の結果が、混ざっている。

後藤は「わかりました。」とだけ答えた。

表情は変わらない。


「長所と短所をお願いします。」

「我の全てが長所だ。短所はない。」


私は、お茶を喉に詰まらせた。

「では、魔王さまが、一番得意なことはなんですか。」

「圧倒的な武力だ。」

「わかりました。」と後藤は無表情でメモを取る。


「次に、上司に注意された場合、どう対応しますか」


一瞬の沈黙。

「……消す。」


ゴホッ。

「魔王さま、それは禁止です」


横で課長が静かにフォローする。


「……我慢する。」


「どの程度ですか」


「半日。」


少しの沈黙。

「ありがとうございました。」と後藤は、ペンを置き魔王さまを見る。

「結果は、後日ご連絡いたします。」


「うむ。」


魔王さまは立ち上がり、満足そうに頷いた。

「余裕だったな。」

私は、何も言えなかった。




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