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魔王さま、失礼します。
会議室には、沈黙が流れる。
「もう一度一からやりましょう」
課長が、入室からお願いします。と魔王さまを一度退出させる。
コンコン。
先ほどよりも強いノックが響く。
「どうぞ。」
扉が開く。
「入るぞ。」
「失礼します、です。」
エルさんが即座に訂正する。
魔王さまは小さく咳払いをする。
「……失礼すー」
エルさんが魔王さまを睨む。
魔王さまは、小さな声で失礼します。と言い直した。
席に座ると同時に、佐藤が身を乗り出した。
「で、なんで働きたいん?」
「支配するためだ。」
「帰ってええで。」
「まだ始まったばかりです。」と八尾が止めに入る。
佐藤はニヤニヤしながら続ける。
「ほなさ、もし上司に怒られたらどうするん?」
「消す。」
「怖い怖い怖い」
エルさんが頭を抱える。
「魔王さま、“消す”は禁止です。」
「……我慢する。」
「どこまで?」
「半日。」
「短いわ!」
「……本番、大丈夫でしょうか」
八尾が小さく呟く。
課長は、微笑んだままだ。
「大丈夫ですよ。」
少し間を置いて——
「たぶん。」




