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勇者さま、山田と呼ばれ続けます。
3番窓口ーーー
堂々と提出された書類には、無駄にでかい文字だけが並んでいた。
「これでは、処理できません。」
受付の女性は、書類を勇者へ返す。
「なぜだ。記入したぞ」
「山田さー……」
「勇者だ。」
一瞬、沈黙が走る。
受付の女性は咳払いをし、言い直した。
「山田さま。氏名のみ大きくご記入されています。生年月日、住所、年齢などもご記入いただかないと、受付できません。」
勇者は目を見開く。
「そんな小さな欄に、俺は書いたことがない。」
「では、免許の手続きはできません。」
勇者は堂々と言い切ったが、あっさり跳ね返された。
渋々、2番窓口へ戻る。
「書いたぞ」
「はい。では、お呼びしましたら視力検査室へお願いします。」
淡々と作業を進める女性。
ーーー数分後
「山田さまー。山田勇者さまー」
僧侶の格好をした男が勇者を呼び出す。
「俺は、山田ではない。勇者だ。」
「はい。山田勇者さまですね。こちらにお願いします。」
僧侶もまた淡々と答える。
勇者はため息をつきポツリと呟きながら、案内された視力検査室へ入るのだった。
「………山田ではない。」




