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勇者さま、チェンジは効きません。
重たい書類を一旦返し
渋々、魔界課へ行く魔王さま。その後ろ姿を見送った。
勇者さまは、別の受付で揉めていた。
半分涙目の受付の女性。
自分も大概貧乏くじだが、あれもあれで可哀想だと
心の中で呟く。
その時、勇者さまと目が合ってしまった。
ーー嫌な予感
「もういい。あの女に手続きしてもらう。」
受付の全員が、右端のわたしを見る。
涙目になっていた女は、小声で「八尾せんぱぁい」と
助けを懇願する。
勇者は、こちらを、指さす。
「あの女は、話が通じそうだ。」
侵略担当ですが?
寧ろ敵側の手続きしてますが?と心で呟く。
仕方ないと思い席へご案内する。
「今回はどのようなー」
「討伐だ。」
用件はわかっている。最後まで聞いてほしい。
「討伐ですか。ちなみに、討伐免許はお持ちでしょうか」
「そのような免許は必要ない。」
「持っていないということですね。では――」
八尾は、静かに案内板を指さす。
「3階、免許センターで“討伐免許”の取得からお願いいたします。」
「……討伐に免許がいるのか」
「はい。無免許討伐は、罰則の対象になりますので」
「チェンジだ。」
「できかねます。」




