↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/225

第83話 瓶詰について(再考察)

数日後、王立学院。


「ん~?」

「どうしたでやすか、姫さま」

 いつものセドリック研究室よ。フロリーナショックが多少落ち着いて、ようやく研究に専念できる環境になったのよ。

 四月も半ばになって、汗ばむ時期になってきたわ。たまに降る春雨が良い感じの清涼剤ね。

 今日は私とマルタだけなの。フロリーナは不在よ。ギリアム先輩に押し付けたの。先輩、嫌がっていたけど。

「瓶詰のレパートリーを考えてみたのだけれど」

「拝見しやす。…姫さまでも酸味縛りでやすね」

「色々試したけどね、あのこん棒がどうしても消えないのよ」

 あのこん棒。真・顕微鏡で見つけた、『美味しいブイヨン真空締め』で現れたやつよ。


「仮説なんだけどね?」

「へぇ」

「あのこん棒、多分酸性に弱い」

「そうでやすね」

「でも、蓋をしないで腐ったやつには出てこないの」

「姫さまもそうお考えでやすか」

「マルタも?」

「へぇ。あっしの考えですが、『空気が無いことが発生の原因』でないかと」

「そういう結論になるわよね?」

「へぇ。信じられねぇですが」

「考えられるのは二つよね。実は真空に存在する。もしくは『空気が無いことを好む』」

「真空には存在しねぇと思いやすが…」

「そうよね。となると『空気が無いことを好む』になるのだけれど…」

「呼吸とか、しないんでやすかね?」

「呼吸…そうか、試す価値はあるわね」

「と、言いますと?」

「腐ったのに出てくる小生物を真空に置くのよ」

「面白そうでやすね。もしかしたら、真空だとその小生物がこん棒に変わるかもしれねぇでやす」

「変質…可能性あるわよね。虫が蛹から成虫になるプロセスみたいな」

「へぇ、その通りでやす。実験を用意しやすね」

「私も手伝うわ」


 そんな折だったわ。

「ふ、フランソワ!」

 アルフォンスが来る時って、大抵何かが起こってるのよね。

 割と重大なことが。

「今度は何かしら?」

「ゆ、夕食の場で…」

 時計を見たわ。確かに夕食の時間ね。

「夕食なら、準備ができたら行くけれど」

 そういう事じゃないのは分かっているのだけれど、私も成長したの。

 余計な面倒ごとには巻き込まれたくないって。

 でもねぇ…。

「学食の衝立が崩壊したんだ!」

「なんで?」


◇◇◇


 とりあえず、目の前の事を理性的に説明する前に、前提条件を伝えておかなければならないわ。

 王立学院の学食はひろーい、千人規模の舞踏会でも開けるんじゃないか、ってくらい大きなホールになっているの。

 ただ、その中央よりやや下座に衝立があるのよ。

 設置の理由は簡単よ。昔の貴族のお坊ちゃまとお嬢さまがこう言ったの。

「平民と飯が食えるか!」

 ってね。

 それ以来、貴族は衝立の上座側、平民は下座側で別れて食事をしていたわけよ。

 ちなみに私は殆ど下座で食事をしているわ。上座の社交場が苦手なの。


 それでね、最近、男子貴族中心にフロリーナ親衛隊、っぽいのができたのよ。

 最近じゃないわね。フロリーナが来た翌日には結成されたらしいわ。

 その親衛隊たちが一生懸命衝立を破壊している…様子なのだけれど…?


「や、やぁ…フランソワ…来てくれたのかい?」

 ギリアム先輩が憔悴していたわ。

「先輩、疲れ果ててますけれど、お父様に絞られまして?」

「いや、まだ王都に行ってなくてね…」

 先輩にしては珍しく優柔不断ね。気持ちは分かるけれど。留年しました、ごめんなさい。なんて私でもお父様に言いたくないわ。

「では、この事件をどう処理するか、頭を抱えていらっしゃると?」

「ああ…そういう事…になるのかな? こうなるならさっさとヴィクトールに会長職を譲っていれば…」

 弱気だわ。あの天才魔導士ギリアム先輩が超弱気だわ。

「無理に会長職を継続されなくても」

「言ったほうがいいかな?」

「いいえ?」

 ヴィクトールが頼りなさすぎて、やむなく継続していることは知っているので。しかも評議会の満場一致で。

「で、何が起こったんです?」

「聞いた話だけれど…」

 という事でギリアム先輩から聞いた話よ。

 事件は今日の夕方に起こったらしいわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。