第76話 フロリーナ姫様の来襲
「ハンス!」
いつものお茶会会場、校舎裏の日陰場所。
「フランソワ…久しぶり…!」
そうなのよ。ハンスとは船が違ったから、フェンリル・ベルクを撤退してから一度も会って無かったのよね。だから2ヶ月ぶりくらいになるかしら。
「いや〜しかしハンスはん、隅に置けんなぁ。こんな美人さん連れてきて!」
「あ…うん…その…」
あら、ハンスが困り果てて…ぶほぉ!?
「本当だよね。フィヨルドって色白の美人さんが多いって聞いていたけれど、本当だったんだ!」
「ふふ、みなさんお上手ね。アリアの男性はみなさん情熱的なのかしら?」
「当然や! 情熱の塊やで!」
「そうそう、女性のためなら命をかける、これが粋、ってやつなんだ」
「男の子ってすーぐ鼻の下伸ばすからきらーい。ねぇ、マルタ?」
「へぇ、エラリーさん、あたしは詳しくねぇです」
「何を言ってるんだい、エラリー。学友との交流じゃ無いか。ぜひお名前をお伺いしたいね」
「そそそそそそこまでっ!!!!」
慌てて仲裁に入ったわ。
後ろでニコニコしながらお話を聞いている『ハイネス』に記憶があるもの、というかついこないだまで同じ船だったし!
その後ろで今にも剣に手を掛けそうな女騎士は初めて見たけれど!
「ウェンディだ」
ではなく!
「ふふふふふフロリーナ殿下、どうしてここに!?」
『殿下』、というパワーワードにピシッ、と場の空気が凍ったわ。
「フランソワさん、ご機嫌よう。せっかくアリアに来たのだし、留学させてもらう事にしたの。ハンスも留学生でしょう?」
謎の美女が…いえもう謎でもなんでも無いのだけど!
相変わらずニコニコとハイネスオーラを振りまきながら問われたわ!
「そそそそその通りハンスはこちらの王立学院の留学生にございますが、何分この場は学院の吹き溜まり、卑賎なる平民どもの会合場所にございますわ、ぜ、ぜひフロリーナ殿下にはもっと相応しい場所をご用意しますゆえ、し、しばしのお時間を…」
ニコラスとアルフォンスが絶対零度で固まったわ。凍りつく様が見えたみたい。
ははは…、とハンスも冷や汗。
どん、と土を突く音が響く。ウェンディとかいう女騎士が、剣の鞘ごと地面を突いたのよ。
「図が高いぞ、貴様ら! この御方をどなたと心得る! 亡命の身分とはいえ、フィヨルド王国の至光にして第一王女、フロリーナ・フォン・フィヨルド殿下にあられる!」
「あら、私は気にしていないわよ。とっても新鮮で楽しそう! みなさん、どうか私のことはフロリーナと呼んでくださいね。ご一緒させてくれて嬉しいわ」
ここで一旦CMを挟ませてもらうわ。
阿鼻叫喚よ、阿鼻叫喚!!!!
はい、CM終了。
ニコラスとアルフォンスは燃え尽きているわ。真っ白によ。
「あの…ごめんね、本当はまっすぐに学院長に挨拶に行く…予定だったのだけれど…」
ハンスが戻ってきたわ。収集がつかなくなって、先に用事を済ませましょう、とハンスが先導してくれたのよ。あのハンスが! フィヨルド動乱で輜重隊の責任者を務めただけあるわ。随分と成長したのね。
ともかく。
「どうしてここに…」
「その…たまたまアルフォンスと校門で会って…。そしたらフロリーナ様が『ハンスの学友なら挨拶がしたい』とおっしゃって…」
余計なことを!!!!
「天然お姫様ってのも手が負えないわね…魔導真理学部は大騒ぎじゃないかしら? あの箱入り娘感、貴族連中のいい注目の的よ」
「おれ、関係ないな」
シオンはスコーンにむしゃぶりついてるわ。この子はプレーン派みたい。
「ギリアム先輩も苦労しそうね。よかったわ、自然哲理学部で」
なんて思っていたのだけど!!!!!
「今日は講義の前に、留学生を紹介しますね。さ、どうぞ」
翌日、セドリック先生の講義よ。あら。留学生なんて。フロリーナ殿下の他にもフィヨルドからの留学生がいるのかしら。
そう思った私を全力で殴りたい。
「みなさま、初めまして」
今度は私とエラリーが固まったわ!
「フィヨルド王国から留学生として進学させてもらいました。フロリーナ・フォン・フィヨルドですわ。どうぞご機嫌よう」
なんで!!!!!




