第3話 魔法大会総括編。シオンの魔法と一般魔法、その違いは?
「まずはな、全体的な総括やけど」
ニコラスのデータから共有することにしたわ。一番正確なデータは大気圧測定器なのよね。ほら、ニコラス特製の記録装置を付けていたから。グラフになっているの。真ん中が標準で、上だと気圧が上がった(測定器の蓋が引っ込んだ)、下だと気圧が下がった(蓋が開いた)という事なのだけれど。
「魔法の発動のたびに、気圧は基本的には上がっとった」
「魔法の種類を問わずに見られた傾向でやす。ただ、例外が一つありやして」
「シオンの魔法ね」
時間帯と合わせてみると、シオンが出場した試合だけ、下方向の記録が残っているの。ニコラスは『消えてるように見えるんや』と言っていたけれど、データ上も『空間を削り取っている』ように見えるわけよ。
「他のデータとも照合してみましょうか。磁器計測なのだけれど、面白い傾向があったわ。反応したのは大きく二つね。一つはアイアンサイド戦」
「あの、鉄躯鋼装とかいう魔法やな」
「そう。恐らく土魔法で金属を生成したのだと思うのだけれど、それに反応したのだと思うわ。でも、面白いのはこっちの方よ」
もう一つのデータを差し出す。
「雷系魔法に反応があったの」
「電気と関係があるってぇことでやすかね?」
「電気と磁力の相関関係は、まだ誰も立証していないはずだわ」
セドリック先生を見る。
「そうね。ただ、実例がない訳じゃないのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。フランクリンの雷実験は知っているわね?」
「当然でっせ」
試合中にもニコラスが話していたわ。雷が鳴り響く中で凧を上げて、雷が電気だと証明したのよね。絶対に真似しない方がいいわ。一歩間違えたら怪我じゃすまないし。
「そのフランクリンが、電気と磁気について考察をしているわ」
「そうなんですか?」
「ええ。帯電したものに、どうも磁力があるらしい…のだけれど、まだ証明には至っていないわね」
「どうやれば安全に証明できるのかしら?」
「エレキテル、使ってみましょか?」
「あるの?」
「ラボのもので良いかしら」
セドリック先生が研究室の棚から出してくれたわ。実物を見るのは初めて。
「使い方はわかる?」
「わかりまっせ!」
ニコラスがハンドルを回した。ばちばち、とライデン瓶が反応する。確かに、雷の光だ。
「方位磁針はあるけど…」
まだ実家に返却していないのよ。お父様にはもうしばらくお借りさせて、とお手紙を送ってあるわ。
「…反応はないわね」
「せやな」
「電気が弱ぇのかもしれねぇでやすね」
「一番反応したのは…そうね、シオンとギリアムの魔法がぶつかった時だったわ」
あの時、磁針はぐるぐる回転して、制御が効かない状態だったから。
「強い電力がぶつかると、磁力が生まれるんかな?」
「そうね…仮説の域を出ないけれど」
「ひとまず、メモを取っておきましょうね」
セドリック先生の言う通りだわ。メモメモ。
・雷魔法と磁力の関係について
・仮説:電流が磁力を発生するには、強い電気が必要?
「方位磁針についてはここまでかしら。最後はマルタね」
「へぇ、検電器でやすが、基本的には雷魔法で反応しやした。ただ、千切れちまったのはシオンさんの時で…」
「これは判別が難しいわ…。シオンの魔法なのか、ギリアムの雷魔法なのか、分からないもの」
「逆にいうと、魔法=電気、という図式が誤ってるんやないか?」
「雷魔法以外で反応していないから、そうとも取れるのだけれど…それも変なのよね」
「姫さま、どういう意味でやんす?」
「接地槍よ」
「せやな」
「そうでやすね」
魔吸槽が暴走した時、確かに接地槍は効果を発揮したわ。それに、シルクとゴム、二つの絶縁体は機能したと思うし…そうでなければ、私はここにいないはずだもの。
「そうね。では、今分かったものをもう一度まとめましょうか」
セドリック先生が黒板の前に立った。
「まず、気圧と魔法。これは相関関係が認められたわね。初級魔法より中級、中級魔法より上級魔法の方が振れ幅が大きかった。ただし、シオン君については逆の反応を示した」
「その通りです」
続けて、
・電気と魔法の関係は現時点では不明
・磁力と魔法の関係も不明
・ただし、電気と磁力に相関関係がある可能性あり
「こんなところかしら?」
「となると…魔法大気説が有力そうですね」
「今のところはね。それが精霊説なのか、原子説なのか、立証を深めたいところだけれど…そうね、ミクロの世界を探してみてもいいかもしれないわ」
「と言うと?」
「大切なものだから、丁寧に使ってね」
そう言って、セドリック先生がある道具を取り出した。
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魔力と大気の関係は?
新しい道具、顕微鏡は一体何をフランソワに見せてくれるのでしょうか?
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