第1話 プロローグ
2026年8月2日:大幅改訂しました。
天地未だ分かれざりし時、光と闇と相混じりて一つなりき
時至りて二つは相分かれ、久しく争ひき。
光ついに世を成し、闇は遠つ果てへ退きぬ。
かくて成れる世を、ミルドガルドと号す。
ーーー創世記より
◇◇◇
アリア皇国
王都アリア 王宮内にて
「フランソワは王立学院で元気にやっているのね。安心したわ」
アリア皇国第50代皇王、ビアンカ・レジーナ・ド・アリエル・アリア。
アリア皇国、初の女性皇王である。
「思ったよりな。馴染んでる感じだったぞ」
「久しぶりに会いたいわね。即位して以来、一度も遊んでないし。ホント、あたしなんか皇王のガラじゃないっての」
王冠がわりのティアラを手に取って、机に置いた。ここからは皇王ではなく、個人の時間ということだ。
「で、面白い話、あるんでしょう?」
ビアンカの目が光る。ああ、とアレフが頷いた。
「恒例の、魔道測定なんだが」
報告書を手渡す。
ビアンカがざっ、と目を通した。
「この子ね。シオン。平民かしら?」
「平民だ。出身はシュタイル島らしい」
「魔力9999…。やるじゃない、私ですら8000なのに」
「しかも、属性不明だ。色彩判断では『漆黒』らしい」
「五大属性のどれにも該当しない、か」
ビアンカが頷きつつ、さらにページを捲る。何かを探すように。
「フランソワなら、最後のページだ」
「わかってるじゃない、アレフ。一応ね、ゼロだと思うけど…」
その、ビアンカの手が止まる。
「測定不能?」
「ああ。故障ではないらしい」
「学院の魔力測定器はシルバ製の最高品質でしょ、測定不能なんて聞いたことがないわ」
「本人は、『魔力が低すぎて反応しなかったんじゃない?』なんて軽い調子だったけど」
「フランソワらしいけど」
はー、とビアンカがソファーに座り直した。
「あの子、結構、目立ってるみたいじゃない」
「いい方と悪い方があるけど」
「とりあえず悪い方」
「学院でボヤ騒ぎを起こした」
「実験で爆発でもしたの?」
「いや、喧嘩。魔導士と」
「…それはフランソワ、悪くなくない?」
なにしろフランソワは魔法を使えないのだ。
「学生同士の諍いだろ、お前も多かったし」
「私はちゃんと揉み消したわ」
「俺だけど、消したの。いい話、行っていいか」
「どうぞ」
「学院を救った」
「思ったより話が大きかったわ」
「魔法大会、あるだろ。恒例の」
「あたしが三連覇したやつね、学生時代に」
「それ。会場のコロシアムで、魔力暴走が起きた」
「なんで?」
「なんで、っていわれても」
「コロシアムの魔力制御、私が全力でぶっ壊そうとしても壊れなかったのよ?」
「壊そうとしないでくれよ? ともかく、決勝戦で生徒会長のギリアムと、例のシオンが激突して、結果暴走したらしい」
「ギリアム…聞いたことがあるわ。プロヴァンス侯爵のご長男よね」
「そ、魔力は7000くらいかな」
「学生よね?」
「ああ」
「なんで大魔導師並みなの」
「そう言われても。相手のシオンは9999だし」
「あたしですら、学生時代の最高値は6500なのに…っ!」
「悔しがるところが違くないか?」
「で、フランソワがどうやって。魔力もないのに」
「よく、わからなかった」
「なんでよ」
「なんだか、じゃらじゃらと空き瓶のついた槍を投げたんだが」
ビアンカが首を傾げた。
アレフもよくわかっていない。
「一回、行こうかしら。学院長から、コロシアム修復の稟議が来てるし」
「そうしてくれると助かる」
「じゃ、あとは任せたわ」
「はいはい」




