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第99話 コンスタンの民俗風俗

 それから一週間ばかり経ったかしら。セシルお兄様もまだ滞在しているの。んー、このまま指示待ち、というのは性に合わないのよね。

 となると。


「図書館、ですか」

 ジャンドル領事に確認。まずは情報が必要よね。コンスタン王国の科学レベルも確認してみたいし!

 ちなみにアルプミティ外務卿は一足早く帰国したわ。私の受け入れが仕事だったみたい。

「王宮に大きなものがあるようですが…。限られた者しか入館できない、とかで」

「よくありませんわ。知識は大衆に公開してこそ価値があるのに」

「どうも、その辺りの考え方がアリアと異なりようでしてな」

 よければ、とお茶をご用意いただいたわ。ご相伴に預かることにしましょう。

 真っ黒な液体だったわ。これは。

「コーヒーでは?」

「はは、よくご存知で。アリアでは超がつく高級品ですが、コンスタンでは一般的なようです。逆に茶がとにかく高い」

「ちょっと海を挟んでいるだけなのに、随分違うんですね」

 でも、安いなら安心ね。数ヶ月ぶりのコーヒー。コレットと飲んで以来だから、半年ぶりくらいになるかしら?

 ジャンドル領事から色々なお話をお伺いしたわ。

 自然哲理の概念はかなり薄そう。まだまだ中世的な考えが多いみたいだわ。

 そんな中で、アレクセイが一人で近代化を目指しているみたいだけれど…。

 そんな状態で、上手く行くのかしら?

「いずれにせよ、フランソワ様は特命外務担当官です。申し入れは可能と思いますが…」

「あの皇太子が素直に応じれば、ですけれど」


 こういう時はエラリーさんに相談ね。同じく退屈そうにしていたわ。

「何か、は言ってくると思うよ?」

 流石エラリーさん、私もそう思う。

「申し入れるにしても、自分で行った方がいいんじゃない? あとはチャンスを待つか、だけど」

「チャンス?」

「ほら、別に場を設ける、って言ってたじゃん。その時申し入れしてみたら?」

「いつやるのかしら?」

「さぁ?」

「エラリーさん、もう私のことは、十分にわかっていると思うけど…」

「暇なのね?」

「ええ、とっても! という事で、街に行こう! ほら、何か困っている人がいるかもしれないし!」

「まぁ…そうね、とりあえず行こうか。私も街には興味あるんだよね、ふふ、先に情報を集めてお父様をぎゃふんと言わせるんだから!」

 エラリーさん、なんだかちょっと頼もしくなった気がするわ。


「とりあえず飯」

 護衛のシオンとお兄様とバルトロメを連れて街中へ。シオンの一言目がそれだったわ。

「悪くないわね」

 食事には文化が現れるものね。アリアだって、王都はゆったりと食事を楽しむ文化であるのに対して、工業都市ギルテニアや商業都市シャルルなんかはインスタント料理というか、「早い安い美味い」が持て囃されるわけよ。ここは王都だけれど港町だから、シャルルみたいな雰囲気もあるんじゃないかしら?

「お嬢、海鮮が有名だぜ」

 バルトロメが案内してくれたわ。

「そうだな、久しぶりに巻貝亭に行くか」

 とは、セシルお兄様。

「巻貝亭?」

「何度かコンスタンには来ているからね」

 平然と言ってのけるセシルお兄様にも慣れてきたわ。確かに昔飲んだコーヒーはお兄様がコンスタンで仕入れた、って言ってたっけ。

「それじゃ、そこに行きましょう!」

「…鮨は食べないよ?」

「エラリーさん、きっと新鮮だから大丈夫だって」


 って思いましたらね?

「オイスター! オイスターが有名なんだ! わ、ちゃんとカルパッチョもある! やっぱお魚はこうじゃなきゃ!」

 エラリーさんが大興奮したていたわ。

「邪道だわ」

 刺身にオイルかけただけじゃん、誤魔化しじゃん! 付け合わせはバケットよ。あとは海鮮の煮込みとかもあるわね。

 ただ。

「何か物足りないような?」

「醬が無いんだよ、この国」

「なんてことでしょう」

 それは悲しいわ、お魚の魅力が半減しているわ。醬さえあれば、オリーブオイルもお塩もいらないのに!

「んー、レモンの香りが最高!」

 エラリーさん、なんで刺身は食べられないのに生のオイスター食べれるの?

「何を言ってるの、フランソワ。知らないの? 牡蠣って海のミルクなんだよ。要するに飲み物なの、牛乳だって生で飲むでしょ?」

「たまにお腹壊すじゃない」


 一方でシオンは串焼きにむしゃぶりついていたわ。

「うまい」

「なんのお肉?」

「羊と…ヤギかな、これ」

「…わたしちょっと苦手だわ。スパイスなのかしら、いろんな味と香りがするもの」

「香辛料が豊富みたいでね。ビールにはよく合うんだが」

「お嬢、これはどうよ」

「ナニコレ」

 バルトロメが出してきたのは、小鉢に入ったドロドロのペースト状のものだったわ。茶色くて、複雑な香りがして…食べ物なの? これ。

「米でもパンでも合うぜ」

「そ、そうなの?」

 えっと、このポタージュ? を米と合わせたらいいのかしら。

「辛っ、ナニコレ変な味!」

 香辛料なのか分からないけど、何味か分からないわ! 鼻を突き抜ける香りが充満しちゃってるの! なんか土っぽいというか!(土を食べたことはないわ)

「はは、『カレー』というらしいよ」

「カレー?」

「香辛料のディップといえばいいのか…。僕も作り方はよくわからないのだけど」

「あ、私好きかも!」

 エラリーさん?

「バッサでも香辛料はガンガン効かせるんだよね、悪くなり辛くなるんだって。パクチーとか、山盛りだもの」

「な、なんてこと…エラリーさんに食事で負けるなんて…」

「うまい」

 シオンは良い子ね、なんでも美味しく食べられて。

 と思ったら。

「かたい」

「それ、月桂樹の葉っぱよ。食べ物じゃないわ」

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