◇◆◇◆◇
ガチッ! ギギギッ、ギ。
キンッ、キンッ――カチッ!
……なんの、音?
目を開けて見えたのは、薄暗い空間。
「?――――いっ!?」
起き上がった途端、ドサッと体が落ちた。ちょっと痛かったけど、おかげで視界がはっきりしてきた。
「――ほら、お姫様が目覚めたよ?」
知らない声。誰かと思えば、見えたのは雅さんと男の人。お互い刃物を向け合ってて、いつになく険しい表情の雅さんを心配していれば、
「お姫様からも言ってくれないかな? 僕は話し合いがしたいだけなんだ」
笑顔のその人からは、穏やかな雰囲気しか感じない。嘘を言ってるのかもって思うけど、私を見るその目は、本当のことを言っているように思えた。
「雅、さんっ……」
話し合いでなんとかなるならその方がいい。それにこのままじゃ――…
「発作が……起きてますよね?」
息が荒いし、汗もたくさんかいてる。いくら戦ってたからと言っても、あまりに不自然だ。
「…………ったく」
手にしていた刃物をしまうと、雅さんはそばに来るなり私を背にして前を見た。
「手短にしろ」
「わかってる。簡単に言うと、僕と一緒に来てほしいんだ。もちろんお姫様も」
「なんだ、琥珀も命華が欲しいの?」
「違うよ。僕はただ、君をエメに会わせたいだけ」
「! エメさんっ、大丈夫なんですか?」
「あれ、お姫様はエメと会っていたの?」
「夢では何度か。実際には……昨日、初めて会いました」
「はっ!? 昨日って、ホントに昨日?!」
「は、はい。雅さんと叶夜君が戦ったあと、目が覚めたら隣にいて」
「なんでっ……だってエメには自我がっ!」
すがるような声で、雅さんは男の人に言った。
「血がいるはずだろう? まさか治ったなんてこと」
「それはないけど、今は屋敷で休んでる。それで君を探しに来たんだ」
「……それがホントだって言う証拠は?」
「これでどう? エメの血液」
懐から小瓶を取り出すと、それを雅さんに向かって優しく放り投げた。
「匂いでわかるだろう? それは無理やり採取したものじゃないってことが」
「…………」
納得したのか、雅さんは大きなため息をつきながらその場に座り込んだ。
「とりあえずは信じる。今まで琥珀がウソつくなんて、一回もなかったし」
「ありがとう。行けるならすぐにでも案内するけど、動けそう?」
「あぁ~…ちょっとダルい」
「なら薬を飲まないと。もし無いなら――」
男の人は申し訳なさそうに、私に視線を向けた。
薬がないとなれば方法は一つ。私の血をあげるのが、一番の方法だ。
「必要ない。ってか、これ飲めばいいことじゃん」
そう言い、小瓶の中の血を飲みほした。
「だ、大丈夫、なの? 本当に辛いなら――」
私は、雅さんにあげたい。
まだ怖さはあるけど、できることはしたいって気持ちが強かった。
「大丈夫だって。美咲ちゃんこそ辛いんじゃない?」
いつもの笑顔で、雅さんは私をソファーに座らせてくれた。
「悪いけど、琥珀は外で待ってて。ちょっと話したいことがあるから」
「わかった。でも、なるべく早くしてね」
いなくなると、雅さんはソファーに腰掛けうな垂れていた。しばらくそのままだから、やっぱりどこか悪いんじゃないかって聞けば、返ってくるのは大丈夫の一点張りだった。
「なんだか、ムキになってない?」
「そんなことはイイから、エメと会った時のこと聞かせてよ」
「……エメさんの過去を、見せてもらって」
「過去ってどんな?」
「それは……あまり、いい内容じゃないから」
「気にせず話してよ。たいていのことじゃ驚かないし」
そう言われても、やっぱり内容が内容なだけに言いにくい。




