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気を失った美咲を、雅は自分の家に連れて来ていた。手入れが行き届いていないそこは、あちらこちらに腐食が見られる。住むには不便だが、寝ることにしか使わない雅にとっては気にならなかった。
ここにはベッドは無く、大人が一人寝そべることができるソファーが一つあるだけ。そこに美咲を寝かせると、壁に寄りかかりため息をもらした。
「もうすぐ連れて行く」
誰もいない一室で、雅は話を続ける。
「手付け代りだ。血は先にやるよ」
ごぼっ、ごぼっ――…
部屋の隙間から、何かが湧きだす。
すると雅は、美咲に近付くなり手の平を切りつけた。深くないが、床に血液が滴り落ちるほど。それに反応しているのか、湧き上がったモノは血を目指し集まった。
「充分だろう? 他のは集めてあるから、それを持って行け」
応えるように、湧き出したモノは音をたてその姿を消した。
血を拭うと、雅は美咲のそばを離れた。
調子が思わしくないのか、顔には汗をかき、立つのもままならない状態。発作が起きたと理解するなり、雅は上条から貰った薬を急いで手に取った。残る数は十数粒。あと二、三回飲むぐらいしか残っていない量に、思わず笑いがもれた。
「どうせ……戻れないんだ」
残りを一気に飲み干し、壁に寄りかかり効果が出るのを待った。その間、雅は自分に残された時間の使い道を思案していた。やることは決まっている。成し遂げる為には、命華がどうしても必要だと。理解しているのに、心の奥ではこれが本当に最善なのかと問いかける自分がいることに、雅は苦悩していた。
「……っん、で」
苦しげにもれた声。
何に対して出た感情なのか。
頭を抱える姿からは、自分を責めているように見える。
「――――やっと見つけた」
安堵の声。視線だけを向ければ、そこにいたのは若い男性。
「久しぶり。僕の声、届いてるかな?」
白髪に琥珀色の瞳をした、懐かしい人物が立っていた。
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「――――早かったのね」
許しもなく屋敷に侵入した人物に、エメは待っていたと言わんばかりの雰囲気を放つ。
「貴方の気配を探るのは、そんなに難しいことではないので」
「正確には、今の状態ならってことでしょ?――その様子なら、なんとかなりそうね」
侵入者は叶夜。全く話が通じないかと思っていたが、会話ができる状態にエメは少しほっとしていた。
「大方、私を連れて来いって言われたんでしょ?」
「そうだ。貴方にはこれから、俺と共に来てもらう」
「いいけど、何をするのかぐらい聞かせてもらわないと――ねぇ?」
「俺は貴方を連れて来いとしか言われていない。それ以外の情報は提示できない」
「そう。だったら――」
ネックレスに触れ、中央にある石を引き千切るなり、
「捕まえられたら、大人しく行ってあげる」
石を床に叩き付け、ガラスを割り外に逃げ出した。
弾けるなり強烈な光を放つそれに、叶夜はあまりの光に目が眩んだのか。しばらく動くことが出来ず、窓に近寄るのがやっとだった。
「――――無駄なことを」
力も早さも自分が上。逃げられても大した支障ではないと、叶夜はゆっくり、エメを追いかけることにした。




