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「長の命に――従うだけだ」
「立派な忠義ですが、それはアナタの意思ではありませんよ?」
「長の言葉が――全てだ」
「盲目ですね。貴方には、果たしたい願いは無いのですか?」
「長の願いが――全てだ」
「やれやれ。ここまで強力とは――では少々、体に聞いてみますか」
じろり、左手を凝視する。その中でも小指に意識を集中するなり、
「――――消えろ」
途端、根元からごっそり、弾けるように小指が消えた。
「っ――…」
「やはり、これぐらいで声は上げませんか。本当にアナタの意思は無い、と言うのですね?」
「感情は無駄――それは、己を惑わせる」
「否定はしませんが、悪いものでもないですよ?」
「感情は無駄――それは、己を狂わせる」
「まだ拒絶しますか。随一の作品と言うのは、間違いでは無いようですね」
なんとか立ち上がろうとする叶夜。
それにため息をつくと、上条はまた、叶夜の一部を凝視する。
「――――消えろ」
手首からごっそり、左手が消える。さすがに今度は、叶夜も苦悶の声をもらした。
「戻る気が無いのであれば、長に伝言を」
視線が合うと、上条は続ける。
「彼女は渡さない。欲しければ私を殺しなさい、とね」
歯を食いしばり立ちあがると、叶夜は一気に大きく跳ねた。鎌をしまったところを見ると、もう戦う気は無いようだ。
「次は――答えと共に命華を」
告げると、叶夜は姿を消した。
上条にとっては、叶夜の方がこのような事態になるのは想定外だった。順番から言えば、雅が先に自我を無くすだろうにと。
「他人は――信用出来ませんね」
ぽつり、空を見上げ呟く。
何を思っているのか。その表情からは、意図を読み取ることは出来ない。
◇◆◇◆◇
見えたのは――空。
瞬きをすると、今が夜なんだとわかった。
「――――気が付いた?」
私に話しかけているのは男性。見覚えのある顔だと思えば、相手はエルだった。
「っ――ここ、は」
「どっかの木の上」
「どうして、外に」
「キョーヤが美咲ちゃんをさらおうとしたから、さっき取り返したところ。家に戻るのはまだ危ないから、とりあえずはここにね」
さらわれた……だから、また呼ばれたの?
腕を上げ、まじまじと自分の手を見つめる。
次に顔に触れ、自分の記憶にある顔であるかを確かめた。
「? なにしてんの?」
「私の、瞳は――」
「それがどーかした?」
「色は――どんな色を」
「どんなって、髪よりちょっと濃い茶色でしょ?」
記憶にある姿とは違う。私が私であった時は、左右色が違って(髪色は同じだけど)いた。
どんな仕組みかわからないけど、都合がいいことなのはわかる。
「からだ――辛くない?」
「ん~ちょっと辛い、かな」
へらへらして言ってるけど、なんとなく直感した。彼には今、血が必要なんだと。
「――――嘘つき」
呟くと一気に、エルを下に向かって引きずった。
別に、ケガをさせようってわけじゃない。これぐらいの高さ、彼にはどうってことないとわかってるから。
「っ~~~なんで急に――?」
下敷きになったエルの両肩を抑え、じっ、と視線を合わせる。
「こうでもしなきゃ、エルは吸わないでしょ?」
胸に触れれば、鼓動に微かなブレがある。記憶違いでなければ、彼は今、力を消耗しているはずだ。




