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――金属音が聞こえる。
重い目蓋を開ければ、険しい表情の先生が見えた。
「日向さんを返しなさい!」
「長が望んでいる」
「では尚更、渡す訳にはいきませんね」
先生の瞳が変わる。途端、叶夜君は大きく後ろに飛び退いた。
「少々手荒ですが、致し方ありませんね。――骨でも圧し折りますか」
恐ろしいことを、先生は平然と言ってのけた。
思わず目を見開けば、先生は私に視線を合わせる。
「見ない方が賢明です」
ニコッと見せた笑みに、背筋が凍った。
優しい口調なのに……今の先生は、とても怖い。初めて見る雰囲気に、余計目が離せなくなってしまった。
「――邪魔をするなら」
目の前に、刃物が見える。それはいつか、私を襲った男性を殺したのと同じ鎌だった。
「日向さんを抱えたまま、私を相手にするおつもりで?」
「支障は――無い」
強く密着したと同時。鎌は、先生がいた場所をえぐっていた。
「や、めっ……」
止めてと言いたいのに、体に力が入らない。
二人の戦いが激しくなるのと比例して、体に走る痛み。でも、これはチャンスだと思った。昨日も酷い痛みの後、叶夜君と雅さんを助けた(覚えてないけど)ようだし、このまま痛みが激しくなればもしかしたら――私はひたすら、この争いを止めることを願い続けた。
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イヤな気配がした。
まさかと思って美咲ちゃんのとこに行けば、部屋はもぬけのから。リヒトさんもいないとこを見ると、連れ去られたって可能性大か。
気配を探れば、あったのはキョーヤの痕跡だった。
ったく、いくらなんでも気を抜き過ぎた。
呪いを凝縮した薬を飲んだなら、オレよりもアイツの方が危険になる。
そもそもアイツは長の子ども。ずっと自分を保つなんてことはできないんだ。
――強い悪寒がする。前にも感じたことのあるそれは、リヒトさんが力を使っている時と同じだった。
「……さすがにヤバい、か」
予想どおり、キョーヤとリヒトさんが交戦中。美咲ちゃんがいるから、リヒトさんは手加減するだろうって思ったけど――結構ヤバい。美咲ちゃんに当てないだろうけど、問題はアイツだ。いくらリヒトさんが気を付けても、アイツがどこまで避けれるか。
「――――っ」
「!?」
一瞬、リヒトさんがオレを見た。
やっぱりいることに気が付いてたらしい。その後も、何度か目で合図を送ってくるのに合わせ――次の合図で、キョーヤに飛びかかった。
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「――やっぱお前、後ろが甘いな?」
声の方を向いた途端、叶夜に抱えられていたはずの美咲は雅が奪っていた。
「いくら死なないからって、隙アリ過ぎ」
「――感情で動くお前よりマシだ」
「はっ、ただの人形に言われたくないね」
「無駄口はいいから、早く行きなさい!」
まだ言い足りないのか、少し不服そうな表情を浮かべる雅。だが上条に睨まれれば、そんな考えは吹っ飛んだ。
「おっと。追われては困りますよ」
鎌を掴み、叶夜の動きを止める。
「アナタの相手は――私です」
一段と輝きを増した瞳。先程までは問題が無かったのに、本能が、上条に逆らうことを許そうとしない。振り上げようにも、腕に命令がいかないどころか、その場に立っていることすら危うい体に、叶夜は眉をひそめた。
「では、答えていただきましょうか」
そこにいるのは、間違いなく上条理人。しかし今の上条からは、普段見せる温厚な雰囲気は感じられない。
「答えなくても構いませんが――その場合、体の一部を〝消す〟ことになりますので」
穏やかな顔。だが、身にまとう雰囲気は冷たく。ここにいるのは王華や雑華が恐れる、〝伝承にある始祖〟そのものだった。




