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縁側で寛ぐ上条。こちらに向かう足音に振り向けば、そこには雅の姿があった。
「――落ち着きましたか?」
「――まぁ、ちょっとは」
間隔を開けると、雅も縁側に腰を下ろした。
「なにがあったか――聞いてます?」
「もちろん。アナタが何をし、日向さんにどう変化が現れたのかも」
「じゃあこれは知ってます? 彼女、オレが寝てる部屋に来ました」
「それはまた、日向さんにしては大胆なことを」
「言っときますけど、手出しはしてませんから」
「わかっていますよ。離れた部屋にいたとはいえ、アナタの気配は見張っていましたので」
妙なことをすればすぐわかると、上条は微笑む。
「ですが――吸血は、しなかったのですか?」
発作を起こしたことを考えれば、命華である美咲から貰うのは自然なこと。しかし、雅は首を横に振った。
「まだ、オレはいけますから」
「無理に吸えとは言いませんが……目的を果たしたいのであれば、彼女に頼りなさい。あまりに強い発作は、私の作った薬も効果はありません」
上条が言ったことをどれだけ気に留めているのか。雅は話題を変え、聞いてほしいことがあると言ってきた。
「生まれ変わりって……あると思いますか?」
「えぇ、あるでしょうね。しかし、前世の記憶を所持しているのはごく僅かかと」
「普通はそうですよねぇ……」
何とも言えないため息をつき、雅は俯く。先程まで起きていたことを思い出しているのか。その表情はどこか曇っていた。
「おそらくですけど……オレ、美咲ちゃんの前世と関りがあります」
「それはまた興味深い。その時の彼女とはどういう関係で?」
「関係も何も……たまたまケガしたのを助けてもらっただけ。そのあと話したりして、血まで渡すって言ってた変わり者ですよ」
思い出しているのか、先程までの曇った表情とは違い、少しやわらいだ顔をしながら話す。
「村人からはぶられてんのに恨まないし、オレの心配までするし。――ホント、なんなんだって感じですよ」
「それを一般的には、好ましいと定義するのですよ?」
「――好ましいかなんて」
正直、わからないと口にする雅。認めたくないのか、話はこれで終わりと言わんばかりに立ち上がると、雅は来た部屋とは反対側の部屋に歩いて行った。
「エメさんの言ったとおりですか。惹かれているというのに、実に頑固な性格ですね」
一人残った上条は、これからのことを想像しながら、まだしばらく空を眺めていた。
◇◆◇◆◇
目を覚ますと、見慣れない物が目に入った。木目の天井に、自分が寝ていたのは布団で――驚いて飛び起きたけど、叶夜君の家だってを思い出した。
……今頃、お姉さんは。
昨夜のことを思い出した。すぐに自我がなくなるってことはなさそうだけど、このままにしておいたら、本当に殺さなきゃいけない事態になりそうで……。
なんとかしたいのに、いい手立てが思いつかない。
「――――日向さん」
襖の向こうから、先生が呼びかける。返事を返せば、先生は飲み物を持って来た。
「ありがとうございます」
「少しはいいようですね。しばらくは、ここで休んでいて下さい」
「あのう……二人は?」
「心配はいりません。〝アナタが助けたので〟怪我は無いですよ」
私が……助けた?
覚えがなくて、思わず首を傾げていた。
「私も実際に見てはいないのでわかりませんが、どうやら、命華としての力が強まりだしているようですね」
「!……本当、ですか?」
「えぇ。自在に操るにはもう少しかかるでしょうが、体に馴染んできていることは確かです」
嬉しいけど……実感がわかない。
花を創ることで呪いを解いたって聞いたけど、やり方もわからないし。
ぎゅっと、毛布を握る手に力が入る。言葉に詰まっていると、先生から意外な言葉が告げられた。
「今度、花を作る方とお会いしましょう」
間の抜けた声を出せば、先生は神妙な面持ちで話を続けていく。
「しかもその方は、命華と親しい間柄でした」
「その人が作る花は……命華と、同じなんですか?」
「今は違うようですが、元は同じだったと聞いたことがあります。幸い、その方とは数日前にお会いしました。アナタの調子が戻り次第、その方に会いに行きましょう」
もしかしたら、花を作ることができるかもしれない。
そうしたら、叶夜君や雅さん。お姉さんや他のみんなも、助けることができるかもしれない!
そう思ったら、胸のつかえが和らいでいく気がした。




