表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/191

*****


 向こうの世界では、今、雑華の主だった者が一ヶ所に集結していた。束ねているのは女性。その者は、先程まで美咲のそばにいた人物。


「まずは仲間の非難。それから、薬は呪いが進んでいる者を優先ね」


「そんなっ。エメ様にも飲んでいただかねば」


「しばらくは大丈夫よ。リヒトさんから貰った薬を飲んだから」


「なんと! 始祖が姿を現したのですか!?」


「えぇ。だからみんな、リヒトさんを刺激するような行動は慎んで。呪いを解く手助けをしてくれてるんだから、怒らせたらそれこそ全滅ものよ?」


「分りました。――では、他の者にも伝えます」


 数人の男性は深く頭を下げ、その場から姿を消した。

 気が抜けたのか、エメは近くにあった椅子に深く腰を下ろし、大きなため息をはいた。




 あと、どれぐらい――。




 自分は保てるだろうかと、胸に手を当てる。今はこうして普通にしていられるものの、エメは既に呪いを発症している。おまけに、雑華にある呪いは王華とは違う特性を持っており、その特性が強く現れてしまうことを、エメは危惧していた。




「――少しは休んだら?」




 言われて、エメは声がした方を向く。


「戻って来たと思えば、ずっと動きっぱなしだろう? 少しは体を労らないと」


 話しかけたのは、エメと年が同じ頃の男性。持って来たカップをエメに手渡すと、男性は壁に寄り掛かった。


「中身はいつものだよ」


「準備がいいのね。私以外に飲まないでしょう?」


「いつ帰って来てもいいように準備はしてるさ。たまに僕も飲んでるし」


 男性が持って来たのは、花の香りがする温かい飲み物。少し甘くて、でも、飲むとすっきりするそれは、エメが好む物を調合してあった。




「それで――今度はいつまでここに?」




 飲み終えた頃、男性は話しかけた。


「しばらくここにいるわ。もうあちらには戻らない」


「そうか。なら、雅もここに来るの?」


「今は来させるわけにはいかないわ。自我を失う前に手を打たないと、みんなを殺しかねないもの」


「あれ、血はいつも手に入れてるはずだけど――」


「それがね、目の前に命華がいるのに、あの子ったら貰わないの。好きだから吸えないっていうのなら嬉しいけど……」


「そっか。まだ、他人を信じれないだろうからね。エメのことが全てって感じだし、その為に動いているんだから」


 二人は、雅がこれまでに何をしてきたかを知っている。姉であり、最愛の人を護る為、幾人もの血を奪っていることも。


「貴方のことだって信用してるはずよ? でなきゃ、名前を考えてくれ、なんて言わないと思うわ」


「そうだと嬉しいね。――本来、君と結ばれるのは彼だったのに、他に契約を奪われたから恨まれてると思った」


「まぁ、ちょっとはショックだったみたいね。――琥珀は、本当によかったの?」


 それまで話していたトーンとは違い、エメは少し、暗い口調で続ける。


「私は、ずっと一緒にはいられない。子どもだって、子宮に封がされてるから出来ないし……」


 俯くエメ。それに男性――琥珀はため息をつくと、エメの前に行き顔を覗き込んだ。


「エメが悪いわけじゃない。子どもが欲しいなら、手立てを見つければいいだろう?」


 エメの両手を包み込み握ると、琥珀は続ける。




「一人で、なんでもこなそうとしないで。君の痛みは――僕の痛みでもある」




「っ――全く。同じ言葉で口説くなんて」




 芸がないわよ、と琥珀の肩に寄りかかる。


「変わってなくて……安心した」


「酷いな、僕を疑ってたの?」


「数百年も経てば、心変わりするかもって心配するわよ」


「言っただろう? 命が続く限り、君だけを想うと」


 エメを抱えると、琥珀は部屋を移動する。連れて来たのは寝室。ベッドに下ろすなり、今日はもう休むようにと、エメの体を気遣った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ