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今度は……覚えてた。
ゆっくり瞬きをしながら、夢のことを考えた。
今までのものとは違う。臭いや音だけじゃない。ハッキリと、記憶に残ってる。
「――――おはよう」
やわらかな声。隣を見ると、誰かがいる。目を擦れば、徐々にその人物の顔が見えてきて――ハッキリと姿が見えた途端、言葉が出てこなかった。
「怯えないで。私はちゃんと――存在してるから」
心を見透かすように、目の前の人物は、やわらかい口調で話しかけてくる。
「時間が無いから、手短に話すわね。貴方が今見たのは、私が体験した記憶。話すよりも、こっちの方が手っ取り早いと思ってね」
にこにこと穏やかに話すその人は、夢に見ていたお姉さん。さっきまで酷いことをされていたのに、何も無かったかのように、笑顔で話を進めていく。
「つまりは、王華と雑華の現状を知ってもらおうと思ったの。雑華の女は、見ての通りただの玩具。遊ぶだけ遊んだら、後は実験台。ま、王華の方も似たようなものらしいけどね」
「それを見ても、私には……」
どうしたらいいかなんて、わからない。
困惑する私に、お姉さんはそっと、頭を撫でていく。
「貴方には、これからを決めてもらいたいの」
「こ、これからって……。具体的に、何をしたら」
「大丈夫。もうすぐ、選ぶ時がくるから。――貴方はただ、自分がいいと思った答えを出して」
そう言って、お姉さんは私の手を握り、祈るように目を閉じる。
「私に出来るのは、これが限界かな」
「限界って」
「色々、体をいじられてるのよ。だから、たまに自分でも自分を抑えられなくなるの。ま、そのおかげでこうやって話せるんだから、ちょっとは感謝しておくけど」
そう言い手を離すと、お姉さんはすっと立ち上がり、襖を開け放つ。外へ行こうとするお姉さんに、私は思わず腕を掴んだ。
「ま、待って下さい! どこに行くんですか? このままだったら、お姉さんは」
――――死んでしまう。
そんな不吉な考えが、頭を過った。
「……ここには、残れないの。今ここに来れたのは、神様のちょっとした悪戯。本来ありえない奇跡を、体験させてもらっているのよ。そんな奇跡を体験出来たのも――貴方のおかげ」
私の――おかげ?
思わず、手を緩めた。
すると今度は、お姉さんの方からしっかりと手を握り返され、まっすぐ、視線を向けられた。
「そうよ。貴方という存在があったから、私や、私以外の者がしてきたことも、無駄に終わらずにすむの。全てを……終わらせることが出来る」
「終わらせるって……王華と雑華の争い、ですか? そんな大きなこと」
「ふふっ。貴方は、自分の力を信じていれば大丈夫。――そうだ。一つ、貴方に頼みたいことがあるの」
何かと思っていると、そっと顔を近づけてきて、
「っ!? そ、そんなこと!」
驚きの言葉を、告げられた。
「もしもの時は、ね?」
それだけ言うと、お姉さんは笑顔で、あっと言う間に去って行った。
……できるわけ、ないよ。
お姉さんの言葉が、頭を駆け巡る。
出来ることなら、そんなことが起こってほしくないのに――。
『私を――殺してね』
もしもの時があるんじゃないかって、考えてしまう。
どうしようもない思いに、私はただ、涙した。
自分の存在とはなんなのか。
悲しくて、悔しくて……。
お姉さんを行かせてしまった自分が、許せなかった。




