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*****


 人里離れた山奥。

 上条は木葉に連れられ、長い長い道を進んで行った。周りは高い木々で囲まれ、月灯りが無ければ見えないほどの暗い道を歩いて行けば――突如として、開けた場所に出た。

 目の前にあるのは、大きな武家屋敷。そして木で作られた頑丈そうな門の前には、屈強な男性が一人ずつ、左右に立っていた。


「――通せ」


 木葉の一言で、門が重い音を立てて開かれる。しばらく進むと、ようやく、屋敷の入口に辿り着いた。


「相変わらず、こういう場所が好みなのですね」


「えぇ。蓮華様は基本、お一人で過ごされたいようですから。――ここが、長の部屋です」


 とある一室に着くなり、木葉は床に膝を付いた。


「蓮華様、客人を連れて参りました」


「――――入れ」


 小さな返事。

 静かに戸を引くと、木葉は軽く頭を下げ、その場から立ち去った。




「――何をしている?」




 面倒そうな声。早く入れと言われ、ようやく、上条は部屋へ足を踏み入れた。


「お久しぶりです。まだ体が思わしくないと聞きしましたが……本当、アナタは無理をしますね」


「――お互い様だ」


 布団に横になったまま、蓮華は口元を緩める。


「やはり、美咲のそばにいたか。予知は正確だったらしいな」


「私の行動も……全て、お見通しだと?」


「いや。知っているのは限られている。私が封印されること。子が生まれる時期。そして――お前が、いつ現れるか、だな」


 ふう、と息をはき、蓮華は体を起こす。

 背中を支えようとする上条だったが、構うことはない、と蓮華に言われてしまう。


「お前は心配のし過ぎだ」


「そんなこと。まだ、不安定なのでしょう? 無理はなさらないで下さい」


「無理などしておらん。寝たままの方が悪い」


「全く。昔から変わりませんね。――女性扱いされるのは、慣れませんか?」


「必要ない。この体の何処に、〝女性らしいか弱さ〟がある? ないであろう?」


 自虐的に言う蓮華に、上条は深いため息をはいた。


「そういうところも変わりませんか。ある意味、安心感を覚えます」


「ふっ。お前も人のことは言えまい」


 和やかな雰囲気。久々に本音を言い合える者と出会えた安心感からか、二人の表情は明るかった。


「お前、人の世では医師をしているらしいな」


「えぇ。元々、そういった知識はありましたから。蓮華さんは、やはり花を?」


「花もだが、茶もしている。だが、家元としているのは面倒だ」


 近況を言い合う二人。ひとしきり話が済んだところで、蓮華は一旦、深呼吸をする。そして――。




「お前に――大事な話がある」




 真剣な表情で、話を切り出した。


「美咲のことを、お前はどれだけ把握している?」


「命華……それも赤の命華であり、フィオーレだということ。あとカミガキと言うことも。そして今、覚醒をしようとしていること。あとは……」


 言葉に詰まり、視線を逸らす桐谷。それを急かすことなく、蓮華はじっと、桐谷が話し出すのを待った。


「……すみません」


「気にするな。他に、何か気付いたか?」


 無言になる上条。なかなか踏ん切りがつかないようで、数回深呼吸をした後、


「――――私の子ども、ですよね?」


 ゆっくりと、まっすぐ蓮華を見ながら問うた。

 しばらく見つめていれば、蓮華はふっと口元を緩め、




「そうだ。だが産んだのは――私だ」




 と、あり得ない言葉を、口にした。

 その一言に、上条は思考が停止した。蓮華の言葉がすぐに理解出来ず、しばらく間を置いてから、ようやくその意味を理解し始めた。


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