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「もしかして……」
「!? まさかアンタ」
雅も気付いたのか、驚いたような表情を見せる。しかしすぐに雅は真剣な表情に変わり、標的を女性に変え襲い掛かった。
それにすかさず反応するも、叶夜は一歩遅れていた。薬が完全に切れたのか、次第に、体が重くなっていく。
「っ――やめ、ろっ!」
叫び声と共に、女性が立っていた場所が崩れる。しかし、そこに女性の姿など無かった。
「――――消えた?」
その言葉に、叶夜は辺りを見回した。すると――自分の隣に女性が立っていたのを、今更のように気が付いた。
「君は……日向さん、なのか?」
答えることなく、女性はただ、優しく微笑む。そして叶夜に近付き、ある言葉を囁いた。
「――――休みなさい」
途端、叶夜はその場に膝を付く。立ち上がろうとするも、体がいうことを利かない。薬が切れたからかと思っていたが、それとは違う感覚が体を包んでいた。
「何を――っ?!」
突然、叶夜の両頬に女性が手を添える。何をするのかと思えば、叶夜の額に、唇を落とした。
「――――これで、大丈夫」
そう言って、女性は叶夜から離れる。そして無言のまま背中を向け、雅の方へと歩き始めた。
「よせっ! そいつは君を殺す!」
声など聞こえていないのか。女性は足を止めることなく歩き続ける。
「アンタ……なに者?」
それにも答えることなく、ただ一言、
「――足が動かない」
と、静かに言葉を口にした。
女性が何をしたいのかわからない二人だったが、雅はすぐに、その意味を理解することになる。
「っ!? アンタ……オレになにをした?」
顔を歪める雅に、女性はその問いに答えることなく言葉を口にする。
「――膝を付く」
途端、雅はその言葉どおりとなった。
そこでようやく、叶夜にも理解ができた。女性が口にした言葉が、そのまま言われた人物の身に起きていると。
「くっ、……オレを。どうするつもりだっ!」
声を荒げる雅に、女性はゆっくりと近付く。しばらく見つめる女性に、雅は相変わらずの態度をとる。
「なにか言えよ! オレに……一体なにをした!?」
「――――大丈夫」
優しい口調で話しかける女性。そして言葉と同じように、優しく、雅を抱きしめた。
「――なんの、つもりだ」
「――頑張らなくていい」
そう言って、女性は雅の両頬に手を添えると、
「これで……大丈夫」
ゆっくりと、まるで愛おしい者に触れるように。長い口付けを、雅の額に落とした。
「―――恨んでない」
その言葉に、雅は目を見開く。
「あなたは……悪くない」
途端、雅の目に涙が浮かぶ。それは頬を伝い、女性の手にも伝っていた。
「オレ、はっ……」
「――――大丈夫」
すぅっと、頬に添えた手を離す。そして女性は、再び優しく、雅を抱きしめた。安心して力が抜けたのか、雅はそのまま、女性に体を預け気を失った。
ようやく体が動くようになった叶夜は、二人のもとへ急いだ。女性に近付いた途端、女性は雅を抱えたまま倒れてしまった。
それと同時に、それまで輝いていた髪の色が消え――紅を含んだ白銀だったのが、少し濃い茶色へと、色を変え始めた。
「――やはり君が」
それは、叶夜が思っていたとおり。女性だと思っていたのは少女で――よく知っている人物。
「――――日向さん」
頬にふれながら、名前を口にする。
どうしてこんなことが起きたのか……理由はわからないが、美咲が自分たちを助けてくれたことだけは理解できた。




