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月が照らす夜――そこに、争う二人の少年がいた。
戦いというには一方的で。一人の少年が、あまりにも有利な状況だった。
「――――もう終わり?」
ふふっと笑みを浮かべながら、少年は地面に倒れている少年を見た。
「おま、え……とうとう、本当に堕ちたのかっ!」
その言葉に、またしても少年は――雅は笑う。
「そんなの今更でしょ? オレがどれだけ長い時間、この渇きに耐えてきたのか。――キョーヤ、アンタにはわからない」
「っ! だったらミヤビ……俺は、お前を殺す」
叶夜は、懐から何かを取り出した。それを目の前に出した途端――雅の表情が変わる。
「アンタが持ってたんだ。皮肉だね、またそれを雑華に使うなんて」
「ふっ、皮肉なのは……お互い様、だろう」
吐き捨てると、叶夜は手にしている短剣を雅に向ける。そしてもう片方の手で、今度は薬を取り出した。
「――黒い薬?」
見たことの無い薬に、雅は興味を示す。それを飲み終えると、叶夜は微かに口元を緩めた。
「これで……少しはマシになる」
「? なにがマシっ?!」
言い終える前に、叶夜は襲いかかった。今までとは違う動きに、雅は警戒を強め始める。
「危ない物持ってんじゃん。それ、劇薬でしょ?」
「あぁ。――それも、呪いを凝縮したな」
叶夜から繰り出される蹴りが、さっきとは比べ物にならい衝撃。なんとか両腕で防ぐ雅だが、薬の効果が出ているせいか、徐々に押され始めていた。
「お前は絶対……俺が殺す!」
「ははっ、イイ目になってきたじゃん。本気で殺す覚悟ができたってことか!」
叶夜から一旦離れ、雅は様子を窺う。これから楽しめそうだと言わんばかりの表情を浮かべながら、雅は叶夜を見た。
「なんで……もっと早く助けを求めなかった!」
重い一撃に、雅は怯む。そして叶夜を押し返しながら、叫ぶように言い返した。
「お前に……お前になにがわかる! 王華にはわからないくせにっ!!」
次は、雅が重い一撃を与えた。それに叶夜は膝をつき、ギリギリの状態で耐え凌いでいた。
王華と雑華には、簡単には埋められない溝がある。それは、どんなに時が経っても埋められることはなく……今もずっと、その溝は埋まっていない。
「俺だってな……ずっと俺でいられない! そんなの、お前がよく知ってるだろうが!?」
いつ終わるともわからない争い。次第に、叶夜に変化が現れ始める。
「――――っぐ!」
それは、薬の効果が無くなることを示していた。
強力な物は、その反動も大きい。決着がつけられないとなると、叶夜が不利になるのは時間の問題だった。
「そろそろ時間切れ、ってこと?」
怪しく微笑む雅に対し、叶夜は徐々に、顔を歪め始めた。激しい攻撃に、このままではやられると思った時。
「――――止まれ」
凛とした声が、その場に響く。
瞬間、二人は同時に声の主を見る。
目に映ったのは……一人の女性。白銀に紅を足したような、輝く髪。
瞳は淡い紫を宿し、肌は透き通るように白い人物。
「見ない顔だね。アンタの仲間?」
「知らない……こんな人、見たことない」
女性はゆっくり歩みを進め、庭へ出た。改めて女性を見た叶夜は、あることに気が付いた。背格好や着ている服を見て、〝ある人物と同じ〟だと察した。




