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*****


 月が照らす夜――そこに、争う二人の少年がいた。

 戦いというには一方的で。一人の少年が、あまりにも有利な状況だった。




「――――もう終わり?」




 ふふっと笑みを浮かべながら、少年は地面に倒れている少年を見た。


「おま、え……とうとう、本当に堕ちたのかっ!」


その言葉に、またしても少年は――雅は笑う。


「そんなの今更でしょ? オレがどれだけ長い時間、この渇きに耐えてきたのか。――キョーヤ、アンタにはわからない」


「っ! だったらミヤビ……俺は、お前を殺す」


 叶夜は、懐から何かを取り出した。それを目の前に出した途端――雅の表情が変わる。


「アンタが持ってたんだ。皮肉だね、またそれを雑華に使うなんて」


「ふっ、皮肉なのは……お互い様、だろう」


 吐き捨てると、叶夜は手にしている短剣を雅に向ける。そしてもう片方の手で、今度は薬を取り出した。


「――黒い薬?」


 見たことの無い薬に、雅は興味を示す。それを飲み終えると、叶夜は微かに口元を緩めた。


「これで……少しはマシになる」


「? なにがマシっ?!」


 言い終える前に、叶夜は襲いかかった。今までとは違う動きに、雅は警戒を強め始める。


「危ない物持ってんじゃん。それ、劇薬でしょ?」


「あぁ。――それも、呪いを凝縮したな」


 叶夜から繰り出される蹴りが、さっきとは比べ物にならい衝撃。なんとか両腕で防ぐ雅だが、薬の効果が出ているせいか、徐々に押され始めていた。


「お前は絶対……俺が殺す!」


「ははっ、イイ目になってきたじゃん。本気で殺す覚悟ができたってことか!」


 叶夜から一旦離れ、雅は様子をうかがう。これから楽しめそうだと言わんばかりの表情を浮かべながら、雅は叶夜を見た。




「なんで……もっと早く助けを求めなかった!」




 重い一撃に、雅はひるむ。そして叶夜を押し返しながら、叫ぶように言い返した。




「お前に……お前になにがわかる! 王華にはわからないくせにっ!!」




 次は、雅が重い一撃を与えた。それに叶夜は膝をつき、ギリギリの状態で耐えしのいでいた。

 王華と雑華には、簡単には埋められない溝がある。それは、どんなに時が経っても埋められることはなく……今もずっと、その溝は埋まっていない。




「俺だってな……ずっと俺でいられない! そんなの、お前がよく知ってるだろうが!?」




 いつ終わるともわからない争い。次第に、叶夜に変化が現れ始める。




「――――っぐ!」




 それは、薬の効果が無くなることを示していた。

 強力な物は、その反動も大きい。決着がつけられないとなると、叶夜が不利になるのは時間の問題だった。


「そろそろ時間切れ、ってこと?」


 怪しく微笑む雅に対し、叶夜は徐々に、顔を歪め始めた。激しい攻撃に、このままではやられると思った時。




「――――止まれ」




 凛とした声が、その場に響く。

 瞬間、二人は同時に声の主を見る。

 目に映ったのは……一人の女性。白銀に紅を足したような、輝く髪。

 瞳は淡い紫を宿し、肌は透き通るように白い人物。


「見ない顔だね。アンタの仲間?」


「知らない……こんな人、見たことない」


 女性はゆっくり歩みを進め、庭へ出た。改めて女性を見た叶夜は、あることに気が付いた。背格好や着ている服を見て、〝ある人物と同じ〟だと察した。


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