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◇◆◇◆◇




「―――目が覚めましたか?」




 声の方を振り向けば、そこには白いYシャツにスーツのズボンを履いた男性が。一瞬知らない人かと身を硬くしたものの、それが先生だとわかった途端、一気に緊張が解れた。


「気分はどうですか? うなされていたようですが……」


「……ちょっと、よくないです」


 そう言うと、先生は私の額に手を当てる。熱がないことを確認すると、安心したのか、安堵の表情を浮かべた。


「実は昨夜、怪しい気配が近付いていたので、寝ている間に、私の自宅に移動させてもらいました」


 すみません、と先生は謝罪する。


「体は、まだ痛みますか?」


「はい……痛い、です」


 起き上がれそうもないので、横たわったまま先生に言う。


「話すのも、無理はしないで下さい。――少し、話を聞いてもらっても構いませんか?」


 雰囲気から、大事な話なのかと察した私は、頷いてそれに答えた。


「ありがとうございます。石碑での時は時間がありませんでしたので、続きをと思いまして」


 詳しい話が聞ける。そう思ったら、私の手は自然と、シーツを握りしめていた。


「キョーヤから多少は聞いたかもしれませんが、まずは、私たちについて説明しますね。王華と雑華、これは元々、【カルム】と呼ばれる一つの種族でした。ですが、カルムの中で呪いを持つ者が現れてしまい、それから種族は、二つに分かれたと言われています。

 ちなみに、私はカルムの中でも始祖――古い血筋の、二つの種族の祖にあたります。幸い、感染は無いまま、ここまでこれています」


「王華と雑華は……どう、違うんですか?」


「血を吸わなければ生きれない、という点では、どちらも大差はありません。ただ、雑華の方が、呪いの進行が早いようですね」


 どちらも変わらないなら、どうしてわざわざ、分れる必要があるんだろう――?どちらも呪いがあるなら、協力して道を探ればいいと思うんだけど。


「何か、疑問がありますか?」


 気になることは聞いて下さいと言う先生に、私はゆっくり疑問を口にした。すると先生は、それは出来ないことなのですよ、と悲しげに言う。


「確かに、呪いがあるのは基本的には同じですが――元々、王華は純血を重んじる者たちの集まり。対して雑華は、人や他の種族と子を成していました。それが王華から見ると、とても不快なものだったようです」


「元は同じなのに……酷い」


「えぇ、全くです。ただ、産まれながらの雑華もいます。感染しても発症を抑えられれば、ある程度は普通に生活が出来きますから。とは言っても、寿命は平均より低いですけどね。一応、子供を産むことも可能です。その場合、その子は産まれながらに雑華ということになります」


「治療する方法は……無いんですか?」


「……今のところは。ですが」


 先生は私を見つめ、真剣な表情をする。

 なにがあるのかと思っていると、重々しく、その口を開いた。


「命華の血で治る……そう言い伝えられてはいます」


「命華の……血で?」


「そうです。だから命華は、常に両方から狙われる」


「じゃあ、二人が私を護ってくれるのって……」


 血が欲しいから、とか?

 今まで優しかったのはその為なのかと、二人を疑ってしまう自分がいた。


「――多分、アナタが考えているようなことは無いと思いますよ」

「えっ――?」

「二人が血の為に優しいのでは、と思ったのではないですか?」


 先生には、私の考えなんてお見通しらしい。頷けば、先生は小さなため息をもらした。


「確かに、二人は貴方という存在の血が欲しいでしょう。自分の命に関わることですからね」


「だったらやっぱり……」


「もちろん、可能性が無いとは言い切れません。――ですが、彼等がそんな者だと、本気で思いますか? 確かに、アナタを護ってほしいとお願いをしましたが、少なくとも、今まで接してきたことを考えれば、そんな心配は無いと思いますよ」


 今まで、二人は私のことを心配してくれた。必死になってくれたし、そんな人を疑うなんて、罰が当たっちゃうよね。


「その――どうして、護るように頼んだんですか?」


「いずれ、私だけでは手に負えないと思いましてね。アナタのことが二人に見つかってしまったので、それでお願いをしたのです」


 先生の話で、三人がどういう関係なのか、だいぶつかめてきた。

 叶夜君は王華で、雅さんは雑華――産まれながらの雑華かはわからないけど、今一番辛いのは雅さんじゃないかと思った。


「――っ!?」


「日向さん? どうかしましたか」


「ちょっと……頭が」


 ……頭が、重い。目蓋も重くなっていき、これ以上話を聞けそうにない。


「負担をかけてしまいましたね。――ゆっくり、休んで下さい」


 やわらかな声と共に、頭に重さを感じる。心地よい感覚に、私の意識はすぐ、眠りへと落ちて行った。


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