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「……本気、なのね?」
「えぇ。オレの手で、貴方を消します
」
二人の雰囲気が、辺りを支配する。
それまで女性に挑んでいた兵士たちはその雰囲気に圧倒され、ただその場に立ち竦むしかできなかった。
「だったら仕方ないわ。私も、貴方を殺す」
「――オレには勝てませんよ」
その言葉を最後に、二人の戦いが始まった。
先程のまでの戦いが、まるで赤ん坊を相手にしていたかのように。少年との戦いは、全くの別物だった。
二人の周りの空気が、それぞれの流れを作っている。近くにあるものは全て、二人が直接触れずとも、空気の流れのみで壊すことができていた。
これが……感染した者同士の戦い。
雑華がどれだけの力を持っているのか、肌で直接実感した。
「――――姉さん!!」
叫ぶように、少年は言う。
真剣な少年とは違い、女性は尚も笑顔で……。
「ごめん、なさい……やくっ、そく。守れな、かった」
胸に短剣を突き立てられても、女性は笑顔のまま。
途端、少年はその場に崩れるように倒れこんだ。そしてゆっくり女性の元へと近付くと、何度も何度も謝りながら、女性の頬を撫でていた。
「――い、今だ! 雑華の遺体を処理しろぉ!!」
兵士たちは、少年から女性を引き離す。そしてどこかへと、女性は運ばれてしまった。
「離せ! 貴様ら、姉さんをどこへやるつもりだ!?」
「雑華は処分する! お前も感染者だな?!」
少年が感染者とわかると、兵士たちは、少年を殺そうと襲い掛かる。
すぐ逃げれると思ったけど、女性にやられた傷が酷いのか、なかなか思うように逃げれないでいた。
私も少年を追いかけたけど、なんとか追い着くのがやっと。追いかけている途中、少年が後ろを振り返る。初めて少年の顔を見た瞬間……私の頭に、ある人物の顔が思い出された。
もしかして――この人。
その顔には、見覚えがあった。
だってその顔は、いつも見ている顔で。
「!? いたぞぉー! ヤツはあそこだ!!」
兵士たちが、少年を見つけた。
危ないと口にしようとした途端、またしても景色が歪み始めてしまう。目覚めてしまうと思った私は、無駄だとわかっていても、足掻かずにはいられなかった。
消える景色の中、私は何度も何度も、その少年の名前を叫んだ。
――――――――――…
――――――…
―――…
「美咲、美咲っ」
「っ!?――おじぃ、ちゃん?」
「大丈夫。ここに怖いものはないぞ」
「怖い、もの――」
そういえば――小さい頃にも、こんなことがあったっけ。
「いやなっ、ゆめ――みんな、死んで、く」
「そんなものは忘れなさい。前は否。前は否――」
頭を撫でながら、おじいちゃんは続ける。
「夢は夢。事世に前は否なり」
口に、丸いなにかを入れられた。
甘い花の香り。これは――飴?
「忘れなさい。それは美咲の記憶じゃない」
飴が溶けていくと、それに合わせて気分も落ち着いていく――。
「眠りなさい。今度は、美咲の夢を」
私の――夢?
なんのことだろうと思いながら、私はもう一度、眠りに落ちていった。




