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「――――あはははっ!」




 楽しげに、高らかに笑う声がした。

 どこからするのかと声の主を探せば――そこには、血に染まった服を着た女性がいた。




「こんなのじゃない。私は……まだ足りない!」




 手にしていた物を、無造作に投げ捨てる女性。一部がこちらに転がってきた途端……体から、力が抜けてしまった。




 転がってきたのは――頭。




 青ざめた顔が、私のことを見ている。

 女性が血を抜いたんだろうと考えれるほど、意外にも頭は冷静で。だけど体は、恐怖のあまりそこから動けないでいた。




「――やめてくれ!」




 突然の大声に、私は声の主に視線を向けた。やって来たのは、自分と同じ年頃の少年。顔は見えないけど、多分、前に見た少年なんだろう。


「あら、エルじゃない。――どうしたの?」


「……姉さん」


 苦しそうに言う少年とは対象的に、女性はなにがおかしいのか、また笑い出す。それはとても嫌な声で……胸が締め付けられるような、悲しい音声をしていた。


「ちょうどいいわ。――エル、貴方が欲しいの!」


「これ……全部、姉さんが?」


 楽しそうに笑いながら、女性はさも当たり前のように肯定する。それを聞いて、少年はますます顔を歪めた。


「だって……みんながいけないのよ? 私を殺そうとするんですもの」


「それは……姉さんが」


「感染したから? エル……貴方も、私を殺すの?」


「っ! そんなこと……!」


 二人のやりとりに、私は目を逸らした。きっと、これから二人は争うと……そう直感した。




『――――見ていて』




 それは、とても優しい声。

 頭に直接聞こえるこの声は、ブレスレットを渡してくれた時の声と同じ。




『目を逸らさないで……お願い』




 目の前にいる女性は、相変わらず少年と話をしている。私に聞こえるこの声とは、別の人なんだろうか?




『もうすぐ……消えてしまうから。理性を無くして、私はただ、血を食らうバケモノになってしまう』




 血を、食らう……?

 それを聞いて、目の前にいる人と声の主は同じなんだと理解した。




『あの子はきっと、自分を責めてる。お願い……エルを助けて。エルの命を、……心を』




 何をすればと思っていると、目の前の二人は、激しいく火花を散らし始めた。


「私に逆らうつもり? 姉を殺すの!?」


「オレは……オレは助けたいんだ! こんなことやめてくれ!」


「エルは感染してないからわからないのよ。この渇きがどんなに苦痛なのか! そうよ……エルも同じになりましょう!?」


 そう言って、女性は少年に飛び掛る。素早く腕を掴んだと思ったら、そのまま勢いよく少年を地面に叩きつけた。


「ふふっ、これで少しは……大人しくしてくれるわね?」


 念の為なのか、女性はもう一度、少年を地面に叩きつけた。

 も、もうやめて!!

 声に出したいのに、私の声は、響くことはなく。どんなに叫んでも、口から音声が発せられることはなかった。


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