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「――心配無い」




 優しく微笑む叶夜君に、私は未だ、心配そうな表情を浮べていた。


「俺はまだ発症していないし、何より、産まれた時からちゃんと薬を飲んでる」


「本当に……?」


「あぁ、本当だ。もし発症しても、すぐにどうこうなるってわけじゃない」


「それなら、いいですけど。――雅さんは、どうなんですか? もしかして、私と一緒だと辛いんじゃあ……」


「あいつは――」


「オレのこと呼んだ~?」


 頭上から、声が聞こえる。

 まさかと思っていたら、その声の人物は、私たちの目の前に笑顔で下り立った。


「やはり来たか……」


「オレの話してるんだから、来ないわけにはいかないだろう?」


 そう言って、雅さんは私の隣に腰掛けた。

 またしても、二人に挟まれた状態。今はまだケンカをする様子はないけど、いつ火花が散るのかと冷や冷やしてくる。




「――今夜、三人であの人の所に来いってさ」




 唐突に、雅さんがそんなことを言う。

 話がわからない私に、雅さんは相変わらずの笑顔を向けた。


「今夜、オレたちと出かけてほしいんだ」


「夜中に、ですか?」


「そうだよ。オレとしては、二人きりがいいんだけどねぇ~」


 いつかのような、艶のある声。

 恥ずかしがる私に、雅さんはどんどん距離を縮めてくる。


「ち、近い……です」


「いいじゃんか~。抱き合った仲なんだし」


「――俺の存在を忘れるな」


 そう言って、叶夜君は私を引き寄せる。

 途端、その場の雰囲気が変わるのがわかった。またしても一触即発な状態で……私の心臓は、色んな意味でドキドキしっぱなしだった。


「アンタのじゃないんだからいいだろう?」


「お前のでもないだろうが」


「そ、それより! 話をしましょうよ、ね?」


 叶夜君を引き離し、二人をななだめるように話題をそらす。

 今日は私の声も届いたようで、二人は耳を傾けてくれた。


「それで、どうして私まで行くんですか?」


「ごめんね、詳しくは来てからって言われてるから」


「おそらく大事な話だろう。わざわざ“三人で”って言ってるようだし」


 よくわからないけど……行かないわけにはいかないみたいだ。二人の雰囲気が、それを物語っている。


「ってかさ――」


 そう口にした途端、雅さんは目を輝かせる。なんだか嫌な予感がした私は、自然と、雅さんから距離を取り始めた。――すると。


「美咲ちゃん、超~カワイイ!」


 満面の笑みで、両手を広げ迫る雅さん。

 抱きつかれる! と感じた私は、咄嗟に前へと身を乗り出し、二人から数メートルの距離をとった。逃れることに成功したものの、尚もめげずに抱きつこうとする雅さん。それを察した叶夜君は、素早く雅さんを取り押さえた。


「ちぇっ。なんでジャマするかなぁ~」


「相手の迷惑を考えろ!」


「だってさ~。メガネしてる美咲ちゃん、超~イイと思わない?」


 指差す雅さんにつられ、叶夜君もじーっと、私に視線を向けた。

 言われるまで忘れてた。確かにまだ、私は眼鏡をかけたままだったんだ。

 慌てて外す私に、雅さんは残念そうな声をもらす。


「せっかく似合ってたのに~」


「お、お願いですから、真面目に話して下さい!」


「怒った顔もいいなぁ~。――やっぱ、欲しいよね」


「!? お前……」


 小さく、雅さんは何か呟く。それを聞いた叶夜君は、どこか険しい表情を浮べた。


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