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――遥か昔。神や人の世界が、繋がっていた時の話。
のちに王華と雑華と呼ばれる、花を糧に生きる種族――カルム がいた。その種族は自然から成った者で、花以外にも、清らかな場所であれば生きていける者もいたらしい。
自然と共存する彼らだったが、ある時、異変が起き始める。糧となる花が、突然意味を成さなくなってしまったのだ。色んな種類の花を試すも、自然にある物ではどうにもならず……衰弱していくのを、ただ待つしかできなかった。
そんな中現れたのが、花を作れるという一人の女性――これが後に、命華の始祖 にあたる種族。彼女は彼らに合った花を作り、衰弱していた者たちに渡した。すると、彼女から花を貰った者たちはみるみる回復していき、以前と変わらないほどの元気を取り戻していった。その種族たちはカルムたちのそばで生活し、花を作り続けたが――それも、長くは続かなかった。
次の異変は、その花を作る種族に起きた。子ども、特に女の子が産まれなくなり、その数は激減。これに困ったカルムは、僅かに残った作り手を奪い合い、争いを始めてしまう。命華はそれから逃れようとするものの、そのほとんどが捕らえられ、今までの生活から一変。奴隷のような生活を強いられることとなった。
そしてついに、捕らえられた作り手は数を増やすことなく――最後の一人となってしまった。
その一人とは、最初にカルムたちを救った女性。この頃には、作り手に対する扱いは変わっていたことものあり、最後の作り手 は丁重に扱われた。だが、花を得られるのは地位が高い者だけ。生きるのは高貴な生まれだけという考えが広がっており、得られない者たちは、代わりになるものを探し始め――あるモノに、目を付けた。
それは――人間の血。
花と人間の血は似ているらしく、それはまさに、花に代わる代物になった。始めは少しずつ、人間から許可をもらい得ていてが、次第に欲求を抑えられなくなり、人間を殺す者が出始めた。
そして今度は――人間との争いが始まった。
最初は、独占するから人間が殺されるのだと主張していたものの、それだけでは治まらないのか、怒りの矛先は、作り手にも向けられた。
そしてその戦いの最中、作り手は、何者かによって殺されてしまう。この争いを期に、カルムたちは、人間がこちらの世界に来られないようにと隔たりを作った。
それと同じくして、作り手たちが亡くなったとされる場所から、花が咲くようになった。まるで血のように色付いた、深紅の花が。試しにそれを口にしてみれば、今までの物とは比べ物にならいほどの回復力。これで生きていける、と喜んだのも束の間。その花を糧にした者の中から、次第に、自我を失う者が現れ始めた。特に激しかったのが、最後の作り手を埋葬した場所に咲く花を糧にした者たち。喉の渇きは増し、何を試しても満たされない。人間の血を飲めば多少治まるものの、それも長くは続かず。
花によって早く自我を失うか。
血によってゆっくり自我を失うか。
残された道は、どちらか一つ。
それをみなは――呪いだと恐れた。
カルムと、人間に殺され作り手たちの思い。自分たちだけが滅びるのは認めないといわんばかりに、その勢いは、ただ増していくばかりで。
きっと……どちらからがいなくなるまで。
いや。どちらも消え去るまで、この呪いは止まらないのだろう。
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「――これが、俺たちの話」
話し終わった叶夜君は、疲れたような表情をしていた。
なんとも言えない気分になってしまい、私はしばらく、黙ってしまっていた。
「大丈夫か?」
「……いえ。ただ、悲しい話だなって」
助けた人たちから責められて、しかも、奴隷のようなって……。
王華と雑華の人に対する恨みは、計り知れないんだろうなと思った。
「ほとんど昔話みたいなものだから、どこまで真実かなんてわからないがな。――だが、もしこれが本当なら……俺は、償うべきだと思ってる」
まるで、自分が罪を犯してしまったかのように。叶夜君は、悔しそうな表情をしていた。
「私にできることは、協力します。だからその……そんなに、考え込まないで下さい」
心配する私に、叶夜君は苦笑いを浮かべた。
「悪いな。気を遣わせて」
「気にしないで下さい。それにしても……その作り手が命華なのはわかりますけど、どうして人間である私が?」
「あくまで俺の予測だが…それも罰なんじゃないか? あえて糧となる人間に命華の力が現れれば、抑制が効かないやつならそこで命華を殺してしまう。そうすれば永遠に、その繰り返しだからな」
「抑制って……じゃあ、本当は叶夜君も」
我慢をしているの? とは、聞けなかった。
ただ単に、怖かったんだと思う。襲われるのももちろんだけど、こうして普通に話せなくなるのが、とても嫌に思えた。




