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目的の場所に着いた雅たち。周囲を警戒しながら四人で屋敷に押し入れば、意外なことに、門を護る者も、中を見回る者もいなかった。たまたま侵入した場所がそうだったのかと考えたが、進むにつれ、最初から警備がされていないのだと、蓮華や上条は核心した。
「私たちが来ると知っててこれか。――なめられたものだな」
「もしくは、余程の準備がしてあるのでしょう。私たちを止めるほどの何かが」
「…………あのう」
まだ重い空気を放つ上条に、エメは声をかける。立ち止まりこちらを振り返るのを見て、おそるおそる、エメは自分が見たことを話し始めた。
「長は……箱を持ち出して、命華を出してました。あの人は……美咲ちゃんの母親、ですよね? もしそうなら、長はその方も利用して、私たちを止めにかかるんじゃないかと」
目を見開く上条。彼にしては珍しく、視線が少し泳いでいる。
「どんな……様子でした?」
「まともには動けそうにありませんでした。でも、少し受け答えはできていたようです」
「どうして彼女が……っ」
「予知の範囲内だ。そう驚くことはない」
「っ!?……蓮華さん、アナタは何処まで知っているのですか?」
「シエロが現れること。私が知るのはそこまでだ。エメとやら、お前も多少は知っているのだろう?」
「いいえ。こちらの予知に、赤の命華に関わる内容はないので……」
一瞬、雅を見る。彼に聞かれたくないことでもあるのか……それを見逃さなかった蓮華は、エメの手を掴む。
「リヒト、ここから分かれて探すぞ」
戸惑うエメを連れ、蓮華は奥に進んでしまった。
残された上条と雅。二人きりで余計に緊張する雅を見て、上条は重いため息をついた。
「仕置きは後回しです。罪悪感があるのなら、全力で日向さんを取り戻すよう、頑張って下さいね」
表情はまだ冷やかだが、口調がいつものような穏やかさを含んだのを感じた雅は、ようやく一息をつくことができた。気を引き締め向かう二人。その時、分かれた二人は何やら話をしていた。ここで別れる意味がわからず、エメは蓮華に質問をしていた。
「か、華鬼の長っ。どうして二手になんて――」
「アイツらがいては話し辛いだろう?」
屋敷を見回りながら、蓮華は気になっていたことを問いただす。
「〝死の予知〟――それも、二つ受けたのだろう?」
目を見開くエメに、蓮華は核心を持った。
「お前から、長としての力を感じた。スウェーテの者には、こちら同様命華に似た力がある。代によって差があるらしいが――お前の場合、予言に近いものではないか?」
「…………聞いてたとおりの人。勘がいいって言うか、本当、鋭すぎます」
「前任の長とは交流があったからな」
「あははっ。それなら納得です。確かに、私には予知に近いものがあります。それが力を継ぐ際、一番馴染みやすい存在方法だったらしいので」
「だが、どうして女のお前に力がある? そちらの種族は本来、男が継ぐはずだろう?」
「あくまでも一時的な処置だったんですが……渡せなくなってしまいまして」
「察するに、呪いの進行か」
「まぁ、自分のせいなんですけどね。私が襲ったことで、あの子にも呪が発症してしまって」
「だが、穢れておらぬだろう? 誘発されたのなら、起きるのは表面的な発症のみ。大事な核となる内側――魂にまで感染は及んでいない。渡すことに支障はないはずだが」
「条件を満たしてないんです。私たちの儀式では、代々作り上げた血と、本来の名前の意味を理解すること。この二つが必要なのに……あの子、それを拒否してるんです」
「拒否? 長にはならないということか?」
「そういうわけじゃないんです。私が力を継いでることは、あの子には言ってませんし。なんて言うか、自分じゃどうにもならないことが起きて……それで、自分自身を信じれないって感じなんです。本当はできることでも、自分が信じてなきゃ意味がありません。かと言って、こっちから言ってどうにかなるものじゃないですし、もっと重要なことも……まだ、話せてないんですよ」
俯くエメ。だが蓮華は、その話を聞き納得の声をもらした。
「これで合点がいく。要の事柄は、この後起こるということか」
「? 要、ですか?」
「私が知ってる予知には続きがあってな」
「そんなっ、リヒトさんにウソついたんですか!?」
「嘘ではない。言う時ではないと判断したまでだ。冷静さを欠いているところに、シエロだけでなく美咲のことまで言えばどうなるか――それこそ手間がかかる」
「私たちがそんなことしたら、逆鱗ものですよ……。でも、予知を知ってるなら、助け出す方法もわかるんですよね? すぐに行かないと!」
「焦るな。もうしばらく、私たちは〝手出しをしてはいけない〟。美咲はこれから大事な選択をする。それによってはエメ、お前の力、本来の持ち主に渡せるぞ」
間の抜けた声をもらすエメ。
対して蓮華は、これから起こることに神経を張り巡らせていた。




