第22話 訪問者
結局、俺も一緒に戦に出ることになってしまった。
俺としては勇者を名乗る以上、いずれは戦いに出ることもあろうかと心づもりはしていたのだが、ジェームズが最後まで反対してくれた。この国の騎士として、公爵に逆らう行動が俺には少し意外だった。
マールスとの約束のこともあるのだろうが、まだ勇者として完全に覚醒していないであろう俺の身を案じてのことだったようだ。ジェームズの立場は大丈夫かな。心配してしまう。
だが、ジェームズの奮闘虚しく、結果は既に決まっていた通り。
ジェームズも最終的にはベルナドッテ公爵の意向に逆らうことはできなかった。
それでも、戦に慣れていないだろう勇者に間違いがあってはいけないと、ジェームズを含めてアルファー騎士団から5人出ることになった。
この規模の戦闘にアルファー騎士団から5人も出陣するのは異例のことらしい。
勇者の安全を考慮したら当然のことだとジェームズは言う。
流石にベルナドッテ公爵と言えども、まだ王にも合わせてもいない勇者に死なれては困る、ということもあるようだ。
なんだか俺個人を心配してくれているというよりも、勇者を失うわけにはいかないといった本音がヒシヒシと感じられた。
さて、俺はもちろん、こういった戦いの場に出向くのは初めてである。
合気道の試合とは訳が違うのは、予想の範疇である。なんてったって集団戦だからね。1対多ならともかく、多対多の試合なんてないしね。
俺は俺なりに緊張してはいるつもりなのだが、いかんせん戦のことも、敵のことも解らなさ過ぎて、正直なんとも言いようがない。単なる不安とも違う別の感情があるのは確かだ。
「海の物とも山の物ともつかぬ者に部隊の命運を握らせるわけにはいかん。」とは、部隊長マーカスの言葉だ。
この部隊長……マーカスには、読めない戦力はむしろ邪魔になるので後方にいてくれとも言われた。
なので、勇者であることは一部を除き伏せられた。
まぁ、至極当然な対応だな。俺が部隊長でも同じことをするな。
ある程度の数を集めるため、城塞都市に戦があることのお触れが出された。これは、城塞都市ならではのことかもしれないが、臨時の歩兵や従士を雇い入れるためだ。
普段から兵士をしている職業軍人だけでは、部隊の運用に支障がでるのだ。
騎士の身の周りの事や荷物運び、武器の手入れ、食事の準備など諸々のことをこなす人間が必要らしい。
知ったようなことを言っているが、なんて事はない。俺も先程ジェームズから聞いて知ったばかりだ。
それはそうと、公爵に反対意見を言ったり、アルファー騎士団の人選を任されたりするジェイムズは、そこそこのお偉いさんなのかと思って聞いてみたら、何とアルファー騎士団の団長だった。
それなら、はじめに言ってくれればいいのに……水臭いなぁ。
夕方に入ったアガルテの要塞城だったが、もう完全に日が暮れて夜になっていた。
部隊編成や戦の準備にもある程度の時間がかかることから、出立は明日、日の出前になった。それにしても、これだけ早く準備ができるのは、それだけここが戦と隣合わせである証拠だろう。
俺は、特にする事もないので充てがわれた部屋でゆっくり過ごす事にした。
☆
しかし、じっくりと考える暇を与えてはくれないものだな。
俺は、用意された部屋でひとり紅茶を飲みながら物思いにふける。
テーブルには籠に入った果物と、先程メイドが持ってきた紅茶と焼き菓子が置いてある。
20畳ほどの広さでシンプルながらも高級感のある調度品が備えられている客間である。天蓋付きのベッドもある。
それなりの待遇をしてくれてはいるようだ。
それにしても、メイドには正直がっかりさせられた。
なにがって? 俺が異世界のメイドに過剰な期待を寄せ過ぎていたためか、至って普通だったのだ。
イヤね。メイド本人は可愛かったよ。
でもね、服装がね。普通なんだよね。
もし、俺にメイドが持てるようになったら絶対……あ、また、妄想してしまった……。
とりあえず。ここに来るまで色々とスキルも付与されたみたいだし、一応確認しておこうかな。
そう思い俺はステータスを確認する。
「ステータス・オープン」
ピロン♪
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タダノ ヒデオ
♂ 17才
種族:人族
職業:勇者
ランク:E
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レベル:1
HP 10/10
MP 0/ 0
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加護:超美少女女神アストレア
称号:異世界人・召喚勇者
属性:なし
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【スキル】【アイテム】
【設定】
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う〜ん。ここはどうやら変わってないっぽいな。
それにしても、ランクEがめっちゃ気になる。
女神は確かにSって言ってたもんな。
Sクラスって言われたから、勇者に決めたようなもんだったのに……。要確認だな。
さて、スキルはっと……
ピロン♪
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【スキル】
『言語解析』
○日本語
●ベルグランデ語
『視覚強化』Lv.1
『聴覚強化』Lv.1
『嗅覚強化』Lv.1
『身体強化』Lv.1
『気配察知』Lv.1
『危険察知』Lv.1
『魔力探知』Lv.2
『物理耐性』Lv.1
『乗馬上進』Lv.1
『悪路走破』Lv.1
『単位換算』Lv.1
『駿馬疾風』Lv.1
エキストラスキル
『思考加速』Lv.1
ユニークスキル
『限界突破』Lv.1
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おぉ。増えてる増えてる。
あれ? さっきはスルーしてたけど、『言語解析』の所に日本語ってあるな。横の○はなんだ?
あ! 『日本語』ってイメージしたら日本語の横が●になって、ベルグランデ語の横が○になった。
これって、選択できるって事なんだな。
便利なのか不便なのかはまだわからないか。
これも、追々だな。
さて、次は……と、その時ドアの向こうに気配を感じる。
コンコン。
その気配の主がドアをノックする。
誰だろう? 知らない気配だな。
俺は、席を立ち、歩いてドアを開ける。
するとそこには、ひとりの女性が立っていた。
誰だ?
それにしても可愛い娘だな。
胸まで届きそうな長く茶色い髪。彼女が着ているのは、膝上辺りまでの丈の真っ白いチャイナドレス。
そのドレスは、ナイスなバディーを隠すことなく披露している。
なぜかバストも下半分しか隠れていないため、思わず胸に目が行ってしまう。
それにしてもデカイ。Fカップはあるんじゃなかろうか。
そんな肢体とは裏腹に何処か幼さが残る童顔。
年は19か20歳くらいだろうか。ロリ顔巨乳だな。
「コンバンワ ダンナサマ ヘヤ ハイル イイカ?」
胸の谷間から目が離せないでいると、彼女は片言の言葉でそう聞いてきた。
「え? てか。どなた?」
その女性は、驚いた顔をしたがすぐに真顔になり、
「なるほど、そういうこと。取りあえず入らせてもらうわね。」
今度は流暢な言葉でそう言うと、彼女は俺の許可を得ぬまま部屋に入ってきたのだった。
謎の女性の登場です。
今後彼女はどんな立場になるのでしょうね。




