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幕間 多忙な1日 -叙任式の巻-

「只今より、クルセ新設騎士の任命式を行う。」

 そう高らかに宣言したのは、クルセの行政官であるラヴェルさんだ。今、俺たちはクルセの俺の屋敷にいる。公的な儀式なら庁舎の方でするべきなのだろうが、今日は任命式と言うか内示なのでクルセの屋敷(うち)でやることにした。まぁ、この後の予定のこともあるしね。正式な叙任式は後日、諸々の準備が整ってから執り行う予定だ。


「ソフィア・ユースティティア殿。前へ。」

 ラヴェル行政官に呼名されたソフィアが俺の前に立つ。


「ソフィア・ユースティティア。貴殿を副団長及び第1騎士隊隊長に任ずる。」

 俺はそう言って、ソフィアに認定書を渡す。本来は、剣を佩かせ、盾と槍を授けるようだが、装備は商談も今日したばかりだし、紋章も決めたばかりなので渡せる装備がない。代わりと言うことで前の世界に習って認定書を渡すこと意した。これも急遽用意した物ではあるが……。


「エドワード・ベリング殿。前へ。」

 次は、アルファー騎士団から移籍してきたエドワードだ。彼にしてみたら、今日来て今日の任命である。まぁ、初めからそのつもりだろうから、其程の問題はないはずだ。


「エドワード・ベリング。貴殿を副団長及び第2騎士隊隊長に任ずる。」

 考えた結果、ベリングさんには副団長を務めて貰うことにした。と言うのも、ソフィアは俺と共に行動することが多くなることが予想される。俺たちがいない時の騎士団はベリングさんに任せることにした。勿論彼も了承してくれた。実質の団長代理だ。そのうち、俺の今後の行動次第では、その肩書きを名乗って貰うことになるかも知れない。


「グラハム・グラディウス殿。前へ。」


「グラハム・グラディウス。貴殿を第3騎士隊隊長に任ずる。」

 グラハムには、第3騎士隊隊長を任せることにした。今回ウチの騎士団に正式な騎士爵として在籍するのは、ベリングさんとグラハムの二人だけだ。ちょっと頼りない感じがする彼だが、ここは第3騎士隊を任せておくべきだとの判断だ。まぁ、アルファー騎士団代表として武術大会に出るくらいなのだから、武術に関しては問題ないだろう。問題があるとしたら、精神面だな。これは、精進して貰うこととしよう。


「ジョン・ジョーダン殿。前へ。」


「ジョン・ジョーダン。貴殿を第5騎士隊隊長に任ずる。」

 ジョン・ジョーダンは、クルセ東防衛隊隊長をしていた人物だ。ウチの騎士団に兵士として採用した中には、元防衛隊出身の人間も多く含まれている。彼と、第6騎士団を任せるアルベルト・ロンドゲルには主に元防衛隊の指揮を任せようと思う。

 そうそう、第4騎士団はここにはいないが、バニラに任せようと思っている。


 最後にアルベルトの任命をして、任命式を終了した。



 

  任命式の後、場所を食堂に移して皆で会食をすることになった。流石の元領主の館だけあって、これくらいの人数なら余裕で収容できるスペースがある。調理するのは勿論、自慢の我がシェフだ。そうそう、名前も知らなかったので、あの後ネビルさんに尋ねてみた。彼の名前は、アルノー・フラグレコ。日本からの転生者で年齢は32歳。リナの所にいたシェフとは、前世で同じ店で修業した仲間らしい。どうやらその店で何かあったらしいのだけど、流石にそこまで詳しいことは聞いていない。彼は、こちらに転生してからというもの、幼少から料理の修業に励み、若干16歳の時にベルグランデ国王杯という料理コンクールで優勝したらしい。天才料理人としてかなり名を馳せた強者だそうだ。そのコンクール優勝が縁で宮廷料理人として数年働いた後、独立。ネビルさんの紹介で迎賓館のグランドシェフとして働くことになったという。

 まぁ、そんなことは良いんだけど、要はとても素晴らしい料理人てことだね。料理に関しては、かなりこの世界に影響を与えてるみたいだ。


「ヒデオ、いつまでもブツブツ言ってないでさっさと開始の合図でもしなさい。さっきから給仕が今か今かと待ち構えているわよ。」

 俺が、シェフのことを回想していると、リナに突っ込まれた。今日一日はこのパターンが多いな。


「そうだね……。う、うん。それでは……」

 そう言いながら俺はグラスを持って席を立つ。それを見た皆が慌てて同じく席を立つ。

 あれ? 何か昔の癖で席を立ったけど、こっちじゃこういう感じじゃないのかな? そういや。こっちのパーティーは、途中で主賓が現れて、それから挨拶するんだっけ? まぁ、いいや。俺の騎士団だし、俺風で行こう。


「え〜。皆さん。この度は我が騎士団へ入団いただきありがとうございます。私が一応団長を務めさせていただくタダノ ヒデオです。」


(ヒデオ・イロアス・アストライア)

 横から小声でリナの突っ込みが入る。


「あ、元いヒデオ・イロアス・アストライアです。」

 俺がそう言い直すと、皆の顔が笑って良いのか駄目なのか非常に難しいことになっている。仲間内だけなら突っ込みも入るのだろうが、新顔が5人もいるからな。ちょっと、アウェーな雰囲気さえ感じるよ。自分の騎士団だけど……。


「え〜、この度は……」

(ちょっとヒデオ。こっちでは、最初に長々と挨拶なんかしないわよ。)

(わかってるけどさ。何となく言い始めちゃったからさ……。)

(もう。さっさと、挨拶して給仕に合図出しちゃいなさい。)


 リナにそう言われたけど、皆、席を立っているし、もうこのまま行くことにした。その前に俺は、給仕に言って皆に酒をついだグラスを運ばせる。ちょっと不思議そうな顔をする者もいたが、特に文句も言われなかったので良しとする。


「今日は、本当にありがとう。ラヴェルさん。騎士団設立に多大な尽力を頂きありがとうございます。」


「内を仰いますかアストライア卿。これもクルセのため。我々こそ、アストライア卿には感謝を。」

 そう言って、ラヴェル行政官が頭を垂れる。俺は、それに対して頷いて答える。


「ベリングさん。グラハム。ウチに来てくれて本当にありがとう。君たちには大いに期待している。特にベリングさんには急なお願いにも拘わらず、副団長の任を受けてもらって助かった。礼を言う。」

 俺がそう言うと、ベリングさんとグラハムは力強く頷く。


「ジョン、アルベルト。君たちには、騎士団だけではなく、クルセの防衛隊との架け橋としても期待している。是非、頑張って欲しい。これまで、クルセ(ここ)を守ってきたのは君たちだ。これからも、君たちの働きには大いに期待している。」


「「はっ!」」

 俺の言葉に、ジョンとアルベルトが声を揃えて返事する。


「後は、ソフィアとシルビア。そして、リナ。これからもよろしくな。」

 俺は、全員を見回してグラスと高々と持ち上げる。


「正式な発足儀式じゃないので皆、楽に楽しく食事をして欲しい。ウチの自慢のシェフの料理を存分に楽しんでくれ。それでは、かん……」


「あ! ヒデオ様?」

 俺が乾杯の音頭を取ろうとした当にその瞬間、シルビアが俺に声をかける。どんなタイミングで話しかけるんだよ。


「な、なんだよシルビア。当に今って時に。」


「あ、ご、ごめんなさい。でも、始めに聞いておきたくって。」

 流石に、タイミングが悪かったことに気付いたのか、頬を赤らめながらシルビアが言う。


「で? 何? 聞きたい事って。」


「あ、あの、この騎士団って名前はあるんですか? 皆、クルセの騎士団とかアストライア卿の騎士団とかって言ってるんですけど、正式な名称は何ですか?」


「ほら見なさい。だから早く決めなさいって言ってたのに。ごめんなさいねシルビアちゃん。まだ決めてないみたいなのよ。」


「あ、そうなんですか……。」

 リナの言葉に残念そうに苦笑いをするシルビア。


「い、いや、決めてるぞ。」


「え? いつの間に?」

 リナが素で驚いた声を出す。


「いや、リナがこの会までには決めろって言ってたからさ。」


「まぁ、それはそうなんだけどね。で? 何なの? 我が騎士団の名は。」

 リナの問いかけに皆が俺を注目する。そりゃそうだよね。自分達が所属することになる騎士団の名前だもんね。


青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)。俺たちの騎士団の名は青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)だ!」

 俺は、できるだけ堂々と声を張って言っていた。じゃないと、ちょっと小っ恥ずかしい気がしたんだよ。


青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)ね。悪くないわね。」

青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)ですか! 流石はヒデオ様。」

「うん。良い響きだ。青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)。」


 どうやら、皆にも好評のようだ。青龍から取ったのがバレバレなのでどうかなとも想ったけど、紋章で龍丸紋を使用することになった時点で、俺的にはほぼ確定だった。


「ヒデオ様。青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)をベルグランデ王国一の騎士団に致しましょう!」

 グラハムが、満面の笑顔で言う。

「そうしましょう!」

「そうだ!」

 それに皆も呼応するように声を上げる。


「皆、ありがとう。まだまだ若輩者。行き届かぬ所もあるかも知れないけど、俺と共にこの騎士団を成長させて行って欲しい。」


「「「「「はい!」」」」」

 皆の声が揃う。なんだか気持ちいい。

 俺は、再度グラスを高々と持ち上げる。


青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)に!」

「「「「「青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)に!!!」」」」」


 皆が一斉に唱和すると、待ってましたとばかりに給仕たちが料理を次々と運んでくる。運ばれてきた料理を皆が美味そうに食べる。美味い食事と美味い酒に、会話も弾んでいるようだ。

 こうして、青龍騎士団(ブルウ・ドラゴ)として初の会合(食事)がスタートした。


 ちょっと疲れる一日だったけど、皆の楽しそうな顔と美味い食事のおかげで、最後は良い1日で終わりそうだな。


「遅くなりました。」

 それがそんなことを考えていたら、突然扉が開いて声が聞こえてきた。


「バニラちゃん!」

 シルビアの声に反応してよく見てみると、そこにはバニラがいた。


「おぉ! バニラ! 帰ってきたんだ。」


「はい。ネビルさんに知らせて貰ったんで。」

 なるほど、流石はネビルさん。それにしても、どうやって連絡取ったんだろう? ネビル家特別の方法でもあるのかな?


「そっか。帰って早々悪いけど、ちょっとこっちに来て自己紹介してくれないか?」


「はい。」

 そう言って、前に出たバニラが自己紹介をする。


「バニラには第3隊の隊長を任せるつもりだから、そのつもりでな。」


「分かりました。微力ですが頑張ります。」

「バニラちゃん! 早くこっち来てよ。いっぱいお話聞かせて!」

 俺とバニラの会話も気にせず、シルビアがバニラに声をかける。


「うん。今行く。」

 そう言うと、バニラはちょこんと会釈してシルビアの方へ駆けていった。それにしても、なんだかバニラがちょっと明るくなった気がするな。以前は結構無口だったと思うんだけどな。修行の地で色々あったのかな?

 バニラとシルビアが楽しそうに話している様子を暫く眺める。他の皆も、仲良くやってるみたいだ。


 それにしても、初めはできるだけやっかい事には手を出さないようにしようと思っていたけど、結局はこうして貴族になって騎士団を任されることになってしまった。予定とはちょっと違うけど、どうせやるなら、楽しく、そして、皆が幸せになるように俺なりに頑張ってみることにしようと思う。

  皆の楽しそうな顔を見ながら、そんなことを考える俺であった。

いつも読んでいただきありがとうございます。

次章に向けて1週間ほど更新おやすみします。

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