最後の戦闘
「こそこそしてんじゃねぇよ、お前らはもう負けてんだぜ。」
八方位すべての戦闘が終わり、魔導士達が歓喜に包まれている時、一人北門に立つ人物がいた。
八道だ。
八道は城壁の上で各方位の戦闘状況を見守りながら魔力の錬成を行っていた。
そして残りの戦闘が南門のみとなった時、北門に一万人程度の敵らしき部隊が見えた。
既に魔導士達は南門へと集結し、ヘラスの戦いに魅入っている。
今から魔導士達が北門へと向かってもその部隊が敵ならば国内への侵入を許してしまう。
一度国内への侵入を許せば、敵は死を覚悟してできるだけ国に損害を与えるよう工作するだろう。
「仕方ねぇな。」
八道は腰を上げると、自ら北門へ赴くことに決めたのだった。
「退け、今なら命まではとらねぇよ。」
八道は部隊の装備から騎士国家の騎士団の一つだと判断する。
警告を発するが、騎士たちは聞き入れようとしなかった。
「魔導士一人に何を恐れるか。 そちらこそ退け。 今なら命は見逃してやる。」
騎士団長らしき人物が剣を抜きながら言う。
もし今戦闘になれば魔力を従者たちに送り続けている八道に勝機はなかった。
見栄を張ってここに来たものの、魔導書を開いてはいるものの何も召喚することはできない。
八道は残りの魔力で僅かばかりの身体強化を施し、命と引き換えに、敵を食い止めることにした。
「こんなことならロウロを残しておけばよかったな……」
八道は魔力を節約するためにロウロを帰らせたのだった。
今更呼ぶ魔力は残っていない。
「逃げぬのか、なら死んでもらおう!」
騎士たちは剣を抜き、甲冑に身をかためた重装備で八道へと切りかかる。
だが先頭にいた騎士の初撃が八道に届くことはなかった。
「何してんだ、八道。 死んじまうぜ?」
八道の前にはいつの間に黒いスーツを着た女性、魔導剣を構え、先頭の騎士を切り倒していた。
「九林……」
「情けねぇツラしやがって……死んだりしたら三葉ちゃんに殺されるぜ?」
九林を筆頭に駆けつけたのは国民の誘導を終えた九林グループ総勢三万人。
黒いスーツの男たちはみな、ハンマーや槍、棍などそれぞれの武器を手にして、騎士たちと対峙していた。
「三葉はいねぇよ……。」
八道は九林の背中にそう告げる。
「なんでだ? 助手だろ?」
「避難するように言った。」
「そうか……誘導したのは誰だっけ?」
「九林グループだろうが。」
「ふぅん。私らが三葉ちゃんを止められると思う?」
「なんだと? ……まさか――――――」
「ハーチー……!」
八道は後頭部に致死量のダメージを受けて地面にうつ伏せに倒れる。
「三葉、なんでいるんだよ! 逃げろって言っただろうが!」
「はぁ!? 私はお前の助手だっての! 助手は魔導士のそばにいるのが普通なの!」
そういうと三葉は八道の手を握って立ち上がらせると、片手に持っていた刀を渡す。
「これ、ぬらりひょんから貰ったやつでしょ? 今が使いどころじゃない?」
その刀は以前八道が百鬼夜行の総大将、ぬらりひょんから貰った刀だった。
ぬらりひょんの愛刀は伝説上に残る大妖怪である『九尾の妖狐』によって鍛えられた神剣だと云われている。
その美しさ、切れ味において右に出る刀は存在しないという。
「そうだな、これなら。」
「お、八道、お前も剣で戦うのか。 教えてやろうか?」
「いらねぇよ。 それより敵も痺れを切らしたみたいだぜ。」
八道は刀を抜いて左手に刀を、右手に鞘を持つという独特な構えを取った。
脇構えに刀を構える。
八道自身は気づいていないが、『脇構え』という構えは最強と云われるぬらりひょんの構えでもあった。
「三葉、少しでいい、魔力をくれ。」
「うん!」
三葉は八道の背中に手を当て、自分の魔力を送る。
八道は大きく息を吸い込み、深呼吸をすると、九林と共に敵陣へと斬り込んだ。
「三葉ちゃん! 今身体強化をかけたから戦おうと思えば戦えるぜ!!」
「バッカなにしてんだよ、危ないだろうが!」
「でも三葉ちゃんは素手で魔王を倒したんだろ? ならこの中の誰よりも強いだろ。」
「それは昔のことだ。 敵だ、やるぞ。」
「ああ。」
八道は敵の剣を鞘で防ぎ、刀で深く斬りつけるという戦法をただひたすらに繰り返す。
脇構えという構えは相手に得物のリーチを隠す構えであり、相手は距離感を掴むことができなくなる。
だからたとえ身を反らせて避けたとしても刀は深々と体に突き刺さり、皮膚を破る。
鎧の隙間を的確に突き、八道と九林は回転しながら背中合わせに敵深くへもぐりこんでいく。
それにつづく九林グループの男たちは九林とまったく同じ戦い方で敵を二体一、あるいは三体一の集団戦法で倒していく。
九林は彼らに、『一対一などというふざけた戦い方は戦場じゃ役に立たない。騎士道だかなんだか知らないが捨ててしまえ。 勝たなければいけない戦いでは多対一で確実に勝利するほうがよほど名誉だ。』と常に教え込んでいた。
それに対し騎士たちは一対一を挑んでいく。
誇り高き騎士たちはその誇りのために命を落とし、敵騎士団の陣形等もはや形を無くしていた。
「せいっ! やっ!」
敵騎士の中に無防備な三葉を襲う者はいなかったが、三葉はそんな敵に飛び蹴りを見舞う。
予想外の攻撃に慌てて騎士は反撃するが、三葉をただの少女だと勘違いしているためにどうしても手加減した戦いになってしまう。
「殺すつもりはないからっ!」
三葉も気絶程度に加減をするが、三葉の遊び感覚で失神するのだ。気絶程度に加減すれば、死の一歩手前まで追い込まれる。
しかも剣や槍などの斬撃ではない。
三葉の攻撃は全て打撃だ。
打撃は鎧をも通り直接ダメージを与える。
騎士たちはまだ幼気な三葉に本気を出せるはずもなく、次々と失神していく。
この戦いで敵の敗因があるとすればそれは『騎士道』だろう。
約四割を三葉が打ちのめし、残り六割を八道、九林、九林グループが倒し敵騎士団は壊滅した。
***
「三葉ちゃんすごいな!」
九林が剣を収め、国へと戻る帰路で三葉の肩を叩く。
「そ、そうかな? ハチ、どうだった?」
横でムスッとしている八道は「知らん。」との一点張り。
三葉はしゅんと顔を暗くする。
「八道はなぁ、口を開けば三葉ちゃんの心配しかしてないんだぜ~。笑えるだろ、な!」
九林が三葉にささやく。
「おい! 九林余計なこと言うんじゃねーよ!」
「ハチ……!」
三葉はがばっと八道に飛びつく。
八道は苦しそうにもがきながら三葉の抱擁から逃れる。
「ここではダメだろ!」
八道は盛大にやらかした。
「こ・こ・で・は ??」
九林を含め、九林グループメンバーの幹部達が八道に注目する。
「間違いだ、間違い!!」
「へへへ、楽しみにしてるね!」
「……お、おー」
「照れてんじゃねーよ、八道!」
「うっせ! とっとと地下に帰れ!」
と九林に言い返した八道はその場にすとんと倒れた。
「おい、八道?」
「し、しっかりして!」
「寝かせろ……魔力がねぇんだよ……」
その後、八道は気絶した状態で『両手に華』を実現し、店まで運ばれたのだった。
これで本当に戦争は終結した。
三章終わりです。
いやー……戦闘シーン書くの下手ですねー……
どうすりゃいいんでしょう(笑)
お付き合いいただきありがとうございました。




