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ハチミツ魔道譚  作者: 夏玉 希
魔道国家防衛戦
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24/27

各方面戦闘記録


以下は、戦後、マイチへと伝わった各方面での戦闘報告をまとめたものである。




北。

優秀な指揮官による作戦指揮と獄門鬼兵隊の連携が見事に取れ、味方被害は単騎で突撃していった鬼一人のみ。戦争として奇跡とも言えるような圧勝だった。

そして北部防衛隊約三百三万人は劣勢と思われる北西へと援護に向かった。



北西。

この方位に援軍としてやってきた従者は射手座の天使達。

八十八人という少ない人数だが腕は確かだった。


だが集団戦ともなると、個々の力だけではどうにもならないところもある。


中・遠距離の魔導士達と天使たちでは押し寄せる敵の波に飲み込まれ、敵の二割を倒す代わりに八割が命を散らせた。


そして敵軍が国門へと押し迫ったところで、側面から北方防衛隊が突撃。

敵軍は勝利を疑っていなかったため、北部を攻めていた仲間が負けるはずはないと思っていたのだ。

不意を突かれた敵軍は大きく崩れ、混戦の中、北方防衛隊の指揮により、千五百万の九割を撃破。


だが獄門鬼兵隊を含め、魔導士達三百三万人の半数を失った。

こうして北西も守れたものの、援軍に行けるほどの人数も、士気も残ってはおらず、各自再び自分の死守する門の守備に就いた。

ここで獄門鬼兵隊は残った約百五十万人を二手に分け、北と北西の両側の守備に就く。



北東。


彼らの援護にやってきていたのは大江戸の百鬼夜行。

ぬらりひょんを筆頭とする百鬼の妖怪たちは千五百万の軍勢を見ても、余裕の表情であった。

彼らの自信とその余裕は遥か昔、東方の国で幾度となく参戦してきた戦の経験から来ており、その修羅場をくぐり抜いて今ここにいることこそがその強さを示していた。


百鬼夜行は魔導士達の援軍を必要とすることもなく、一方的に敵軍を蹂躙し、三十分もかからずに全滅させた。


この活躍により北部の敵は一掃し、それを知った北部と北西部の兵士たちは西へと加勢に向かい、北東部と百鬼夜行は東へと向かった。



東。


ここにやってきていた従者はオリュンピアの神兵隊。

その数は一千万。

この東部防衛戦が最も激しい戦いになると思われた。


そしてその通り、敵軍千五百万、東部防衛隊千三万、互いの刃と刃がぶつかりあうまさに総力戦になった。


オリュンピアの神兵隊の力は獄門鬼兵隊と同じく一騎当千。

だが東部を攻略しようとしていた敵軍には、この時代の勇者と呼ばれる騎士が従軍し、百を超える騎士団を持つ騎士国家、そして世界最大の領地面積と最新鋭の兵器を持つ軍事力を誇る帝国、そしてこの国に次ぐ魔導国家が所属していた。


おそらく敵の作戦としては東門を真っ先に攻略し、多方面が戦闘を繰り広げている間に内側から崩すつもりだったのだろう。


魔導士三万人だったならこの東門はあっという間に陥落していただろう。

そして獄門鬼兵隊であったとしてもその数に押しつぶされていただろう。


オリュンピアの神兵隊はその人数と個々の力で敵軍と真正面から衝突した。

後方からの援護もほぼ同じ。

敵軍は防衛隊に劣る魔導士の力を帝国の兵器で補い、ほぼ互角の戦いを繰り広げていた。


序盤、防衛隊の魔導士達はオリュンピアの神兵達と共に勢いで押していた。

だが中盤になると国内の戦闘によって疲弊していた魔導士達の魔力が尽き始め、援護の魔法も少なくなっていった。

それを察知したのか敵軍はこれを機に、と一気に前線を押し返し、勢いの弱まった防衛隊を崩していく。


そしてそれより防衛隊は押し返すこともできずじわじわと交代の一途をたどっていた。


だがそこに北のほうから祭囃子を立てながら空を飛ぶ巨大な屋形船でやってきた一団がいた。

『大江戸の百鬼夜行』である。


百鬼夜行は屋形船ごと敵軍に突っ込むと、敵軍を中心から崩していく。


中心に風穴を開けられた敵の前線は前方と後方から挟まれ、成す術なく命を落としていった。


そして遅ればせながら援軍に駆けつけた北東部防衛隊により魔導士の後方支援も復活し、再び攻勢にでた東部防衛隊は程なくして勝利を収めた。



もはや敵軍は南にしかいない。

東部防衛隊と北東部防衛隊、百鬼夜行は南東へとなだれこんだ。




西。


到着と同時に敵軍へと突撃したタイタロスの魔物達。

深淵に住む彼らにとって人間の血肉は八道から受け取る魔力よりなんかと比べ物にならない食料だ。

タイタロス周辺に住む魔物達に人間の血肉を食べた経験はなかった。

だが彼らの本能が目の前に隊列を組んでいる兵士たちを最高の食料だと告げていた。

八道によって背後にいる魔導士を襲うことは許されなかった魔物達は目の前に大量に群れを成す食料に襲い掛かった。


彼らの本来の敵は神である。

伝説の中でタイタロスの魔物達は神々と戦い、死闘の末に敗北する。

神々を敵としてきた彼らにとって人間なんて恐れるに値しない。


敵陣に突っ込んだ敵軍をも上回る最大勢力三千万を誇る魔物達は、一瞬にして人間を食らいつくした。


満腹になって西門へ戻ってきた彼らの後ろには食べることのできない防具と剣のみが残っていた。



そしてその後に援軍としてやってきた北方防衛隊と北西防衛隊の残兵、獄門鬼兵隊は異様な戦場に一瞬立ち止まったが、それがタイタロスの魔物達の戦闘の跡だと気づくと、魔導士と獄門鬼兵隊、タイタロスの魔物達は北西へとなだれ込んだ。




北西部。


北西部には神獣軍約千五百万が援軍として参戦し、身体強化の魔導士を背中に乗せ、敵軍と正面衝突していた。

『動物は人間の力は遥かに上回る』、だがその力を引き出すにはそれをコントロールする知能が必要である。

霊獣たちの知能は軽く人間をも上回り、己の百パーセントの力を出し切ることができる。

神獣軍たちは、敵軍を縦横無尽に駆け巡り、敵を混乱させつつ確実に数を減らしていく。


そして満を持して北からの援軍が加わる。


総勢約三千五百万に増えた軍勢により、一気に戦況が逆転する。


今まで互いかかわることはなかったが、嫌悪しあっていた存在、霊獣と魔物も背中合わせになり、敵軍を蹴散らしていく。


北西部での戦闘は数千年の嫌悪を払しょくする良好な関係をも築き上げることができた。




そして北東部。


北からの軍勢が援軍にやってきたときにはすでに味方の魔導士達の姿も、死体もなく、ただただ千五百万の敵の死体が戦場を埋め尽くしていた。




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