新しき時代
上階での戦闘はすでに激化の一途を辿っていた。
だがそれは音と土煙、瓦礫の崩れる音が一段と増しているということだけで誰が誰が戦っているのかまではわからない。
地下から上がってきた二人が今いる場所は看守部屋。見張りの刑務官たちが勤務時間前後に待機する場所だ。
机の上にはまだ温かいコーヒーと食べかけのハムサンドが残っているが、看守たちの姿は見えない。
避難したのだろうか。
轟音が鳴り響く中、看守部屋から一階ロビーに続く細い一本しかない通路を通ろうとするが、そこには瓦礫が降り注ぎ、道を塞いでいる。
「ここは私がっ!」
九林が瓦礫を粉砕しようと瓦礫へと突っ走る。
九林の蹴りは岩をも砕く、協会の柱だったのであろう大きな円柱の岩に向かって大きく脚を振る。
身体強化を施したその蹴りは見事に柱を粉砕し、ロビーへの道を開く。
八道は先導する九林に続いて走る。
「地獄譚 魔賢者ラファウ=ロウロの軌跡」
八道は走りながら魔導書に手をかざす。
すると魔法陣が八道の走る横に現れ、そこから真っ黒で足まで伸びるコートを羽織り、黒のシルクハットを被った魔族、ラファウ=ロウロが現れる。
「リゼラミラ、シガン。 (これはこれは、緊急事態の様。)」
「シガキ、ラリンダ。(まぁな、忙しくなるぜ。)」
「リヴァイ。(それは楽しみです。)」
ロウロはハットの下で微笑む。
魔族にとって戦闘は娯楽。
退屈な魔界から人間界に遊びに来ているようなものでもある。
九林と八道は通路を抜け、ロビーへ出ると上空を見上げる。
魔導協会を構成する建物は全部で八つ。
協会の敷地内の中心には一番大きな協会本部がそびえる。造りは王城とまったく同じの大きな城で、黒一色に塗られている所だけが王城とは反対だ。
そしてその周りを囲む六つの見張り塔。国内全てを見張れるようにと造られたその塔だが、内部には牢獄や大賢者の部屋など隠された部屋がある。
そして魔導士見習いアカデミー。協会に併設されたアカデミーは、城より二回りほど小さいがインパクトのある大きな建物だ。
最後に、協会本部につづく階段を下ってすぐ、アカデミーの正門へと続く道、六つの塔から道がつながる広場にロビーは存在する。
協会に訪れる者全員がロビーを通ることになる全ての場所を見ることができる場所だ。
八道と九林、ロウロの現在位置は協会の中心になる。
「本部だ! 屋根の上に誰かいる!! ……この人数は賢者だ! 相手は―――――――」
「マイチだろうな。」
「そうだ。急ぐぞ!」
「ああ!」
「ギリギロル。リゼミナル。(賢者と大賢者の戦いか。いい戦いが見れそうだ。)」
九林は強化された身体能力を駆使して瓦礫を足場にして飛ぶように登っていく。
八道はロウロは空中を自在に動けるロウロの背中に掴まって本部の屋根へと向かう。
先に屋根へと着いたのは九林だった。
そこには二五人の賢者たちが手錠から解放され、それぞれの武器を持ってマイチと対峙していた。
賢者たちの傍らには、おそらく"本当の"賢者たちの部下達が、マイチの傍らには賢者直属部隊として潜入していたマイチの部下たちが互いを睨みあって牽制していた。
「マイチ! どういう状況だ!?」
八道はロウロと共にマイチのもとへと駆け寄る。
マイチは不意打ちでも喰らったのか額から流血しており、冷や汗をかいている。
「八道か。 九林もいるのか? よく来てくれた、ちょっと厄介なことになっててな。」
「八道殿、初めまして。 リゼフと言います、よろしくお願いしますね。 ……と横にいるのは古の王ラファウ=ロウロではありませんか。 お元気ですか?」
マイチの横にいるのは彼の相棒の魔族リゼフだった。
ひょいとマイチの肩から顔を出す。
身長は八道とほとんど変わらない。
「リゼフ……!? あの魔族長リゼフか。」
「リリロロ、ゼリ(魔族長殿、お久しぶりで。)」
ロウロはシルクハットを脱いで頭を下げる。
魔族の長と元貴族の関係にあるリゼフとロウロは久しい挨拶を交わす。
「二人とも見てみろ。賢者たちのお陰で国中が大変なことになっておる。 今に他国が攻めてくる、今は他の魔導士たちに動いてもらっておるが一国が攻めてくるとなるとこのままでは不味い。」
八道と九林はこの国で最も高い位置にある本部の屋根の上から遥か彼方まで広がる国を一望する。
この国は周りを高い城壁が囲み、更に賢者による魔法壁が張られている。
魔法壁がある限り、どんな攻撃をも寄せ付けないはずなのだが、三百六十度全てを見回すと、ほぼ全ての方角から火が上がっている。
国内では既に戦闘が始まっており、この場所に直属部隊以外の魔導士がいないのは各地に散らばって戦線を展開しているからだった。
「マイチよ! この国は平和すぎる! 他国が領土を奪い合っている中、この国はいつまでこの状態のままでいる? 我々は世界を統べる力を持っているのだ! 生かさずにしてどうする!?」
賢者の部屋で二人と話していた小太りの賢者が淀んだ声を張り上げる。
「だからと言ってこの状況はどういうことだ? この国に反逆することに何の意味がある。」
マイチが静かに反応する。
その眼はいつものマイチではない。
怒りに震え、それを内に秘めている眼だ。
「この国にいる二人の指導者! 一人がお前だマイチ! そして二人目が王! この二人が生きておる限りこの国は変わらんのだ!」
全員同じような体型の賢者たちは小太りの賢者の後ろで自分たちが正しいとでもいうかのように頷いている。
「我々を殺してもすぐに他国が攻め入ってくるぞ。 総勢二十五万の魔導士と伝導士がいなくなったこの国が勝てるとは思えんがな。」
「そのようなことどうにでもなるわ! 我々賢者が二十五人もいれば何か国が攻め入ってこようと相手にならぬわ!」
未だ自分たちが最強の座にいると勘違いしている賢者たちにマイチ、リゼフ、ロウロは呆れる。
「致し方あるまい。 この国を守るためにお前たちを殺す。 お前たちに魔監獄など温い。 リゼフ!」
「わかっていますよ。」
リゼフは宙に飛び上がると、黒い翼を広げ、両手を自分の胸の前で合わせる。
翼の数は十二枚、漆黒だが美しいその翼をはためかせながらリゼフは魔力を両手に込め、己の本来の魔力を解放する。
リゼフが持つこの翼の数は神々の伝説に聞くシュファーと並んだと言う――――――――――
「ハァァァァァァァァァ!!」
大地が揺らぎ、大気が震える。
ロウロの比ではないその魔力に八道を始め、その場にいる魔導士達全てが圧倒される。
これだけの魔力を地上で解放させるために必要なマイチの契約とはどのようなものだったのだろうか。
世界最強の魔導士、マイチの本気に勝てる者などいないと痛感させられる。
「これが、世界最強の魔導士と云われ続けてきた『魔一』の力だ。 国を守るためなら賢者と言えども容赦はせん。」
マイチは自分の胸に手を当て、橙色に光り輝く魔力を体内に込める。
そして魔導書のとあるページに魔力を込め、二メートルはあろうかというランス『ルーン』を召喚すると、賢者たちに向かって一直線に走る。
「九林、最強の魔導士の戦いだ……。 見れることなんて滅多にないぞ。」
「あぁ……。」
二人は師でもあるマイチの戦いを目に焼き付けるようと、戦闘に見入る。
その隣では部下同士の戦いも火蓋が切られ、戦いが始まっている。
リゼフは魔族の長と云われるように魔界でも魔王を超える魔力と魔法を持つ魔族である。
その魔法のひとつひとつは大きな技ではない。本来の魔族の『魔法』とはどれだけ素早い詠唱と攻撃速度、そして威力で相手を仕留めるかを追究したものだった。
その魔法も人間が使う自然操作とは違い、闇を操る。
闇を武器に変え、闇で攻撃をするのである。
「地獄譚 魔将軍グングニール!」
「英雄譚 騎士王アーラー!」
「精霊譚 大天使ミハエル!」
賢者側の従者が三体、魔法陣から現れる。
それぞれが歴史書に載る伝説の英雄、魔王軍将校、神に仕える大天使である。
一体一体が一騎当千の力を持つ。
「リゼグング! (わが兵たちよ現れるがいい!)」
グングニールの命令によって魔界の門が開き、本部の屋根に数千の魔物が現れる。
戦場は一気に敵味方の区別付かぬ混戦となる。
八道と九林は近くに寄ってくる魔物を蹴散らす。
「リ・セント・カリバー。(我がもとに、勝利を約束されし剣。)」
アーラーは英雄界に伝わる伝説の聖剣を召喚する。
彼の伝説によるとこの剣を持ったアーラーは数年の内に数百の国をまとめた。その伝説を作り上げることができたのは戦闘前より勝利が約束された聖剣にあるという。
この剣を敵に回すが最後、敵に勝利はあり得ない。
「シャランティア。(味方に精霊の加護を。)」
大天使ミハエルの加護は癒し。
傷つけど傷つけど回復するミハエルの加護を与えられし戦士は不死と呼ばれ戦場で恐れられたと言う。
その加護を魔軍兵士、アーラーに与える。
『無敵』の名がふさわしい賢者たちの軍隊にマイチとリゼフは突き進む。
敵の従者たちの後方からは自然操作属魔導士の援護が迫る。
「リゼフ、いけるか?」
「もちろんです。」
マイチは群がる魔物を横なぎに一閃、そして一突きし絶命した魔物を盾に突き進む。
そしてその魔物ごとルーンを振り、辺り一体の魔族たちを葬り地獄へ帰す。
上下前後左右、魔界の門がつながっている今、魔物達の攻撃に制限はない。幾百の魔物がマイチの体を包む。
だがマイチの槍技にも死角はない。
ルーンの矛は鋭い一角矛、後方に迫る魔物には槍を逆手に持ちかえて首をかっきる。
返り血を浴びたルーンの矛は一層煌き次の命をかき消す。
まるで生きているかのような槍の動きはマイチの流儀の真髄である。
軽やかに確実に命を絶つ。
そして命を欲するかのように次の敵へ。
隙のない連続技により、マイチを囲んでいた輪が一時広がる。
大天使ミハエルの加護は回復であり、回復が追いつかぬ速さで命を絶てば問題はない。
マイチは槍を屋根に突き刺し、リゼフの様子を伺う。
一方リゼフは上空から魔物を数十の単位で殲滅していった。
闇の魔法は音がない。
リゼフが手をかざす場所には重力と磁場を持つブラックホールが現れ、一体の魔者たちをまとめて闇の中に沈める。
上空を自在に飛ぶ魔物たちもリゼフの攻撃対象だ。
十二枚の翼の上部二枚がはばたくと闇の羽根が敵を狙って飛んでいく。
リゼフの羽根に触れた場所は消滅する。それは主としての、生物としての格差が生む拒絶反応であり、互いに拒絶しあった時に残るのはより強い方。
リゼフの羽根に触れた魔族は体の一部を失い、堕ちていく。
賢者を含む従者たちが固まる屋根の頂部にリゼフは闇を呼び寄せる。
リゼフの手に集まった闇、それを千の刃に変え、放つ。
だがさすがにそれは従者たちによって防がれ、逃げられる。
リゼフは攻撃を中断し、マイチを見る。
「リゼフ! 一気に決めるぞ!」
「わかりました。」
マイチは突き刺したルーンを足で蹴り、上空へ舞い上がったルーンを手に取り大きく振りかぶって地面に叩きつける。
魔力の波紋が一体に広がり、触れた魔物達を巻き込んで消滅させる。
血を魔力に変えて放つことができるルーンは多数を相手するときに重用する。
鎧を紙のように裂き、剣を棒切れの様にへし折るその槍は、持ち主の魔力を常に吸収しながら切れ味を維持している。
そして上空から先行するリゼフを頼りにマイチは敵をなぎ倒しながら前へ前へと進む。
ルーンを地面に立て、そのしなりを利用して大きく空に飛び上がると、そのまま頂部へ着地した。
リゼフ7とマイチは賢者二十五人と従者三体と頂部で対峙する。
魔将軍の呼び出した魔族の兵士の八割は二人の手によって壊滅し、残党は大賢者直属部隊によって狩られた。
大賢者直属部隊と賢者の部下たちの戦いは既に勝敗を決し、直属部隊の圧勝だった。
そしてマイチの位置を即座に確認し、自分たちの役割を残党狩りと察した。
マイチ自身が腕を見込んだ直属部隊の魔導士たちはランクもそれぞれで、末端はB級である。
それでも賢者の下で権力に怠けたA級には劣らない。
残党も着実に数を減らしていく。
「二十五人の賢者に勝てるか? 大賢じ―――――――うごっ!」
マイチは口を固く閉ざし攻撃を開始した。
「卑怯者め!」という賢者たちの声を無視し、マイチはまず、自然操作属の魔導士を潰すことにした。
その上空でリゼフは従者三体を見下しながら微笑んでいた。
「フフフ……、では私たちは私たちで戦いましょう。」
そういいながらリゼフは瞬間移動でグングニールの胸を手刀で貫いた。
存在の違う者同士が接触すると拒絶反応が起こり消滅する……、それは魔族であるグングニールも例外ではなかった。グングニールは短く嗚咽を発すると空気に溶けて消えた。
「き、貴様ぁぁぁ!!」
アーラーは聖剣を大きく振って背後からリゼフに斬りかかる。
だがリゼフはその剣を背後に回した手で受け止め、横に捻ってペキンッと砕く。
「その剣の勝利が約束されているのはあなたより存在が低い者だけですよ。 私には効きません。」
「な……なにっ!」
そのまま砕いた剣をアーラーの胸に突き刺す。
リゼフの手に触れた物は全てリゼフの魔力に染まる。リゼフの闇が騎士王アーラーの体を内側から壊す。
「む……無念……。」
続いてアーラーも空気に溶けて消えた。
残るは大天使ミハエル。
リゼフ、マイチの両者相手には加護も何ら意味をなさなかった。
ミハエル自身攻撃型ではないため、リゼフを前に敗北を覚悟していた。
「リゼフ様の御力見事でございます。」
「それほどでもありませんよ。」
リゼフの手は最後にミハエルの心臓部を貫いた。
ふっと微笑みを浮かべたままミハエルも空気に溶けて消える。
「ざっとこんなもんでしょう。 さて―――――――」
マイチは感情を封じ、国のために槍を振るう。
愛する者を守るため、賢者の命を絶つことにためらいを感じないように心の底に抑え込む。
自然操作属の魔導士が放つ魔法に同じ魔法をぶつけて相殺させ、一人ずつ、確実に仕留めていく。
上空ではリゼフが瞬く間に従者を仕留めていっている。遅れを取るわけにはいかない。
悲鳴をルーンの矛は血を好む。
自然操作属の魔導士の息の根を止めた後は役に立たない能力強化属、醜い悲鳴を残して息絶えていく。
「ま、マイチ! ちょっと待て! 我々を殺すのか!? 殺人は重罪だぞ!」
次々と息絶えていく仲間たちを見て、小太りの賢者が後ずさりしながらマイチを止めようとする。
だがマイチは手を止めず、一人、また一人と賢者の命を奪っていく。
「この国をこんな状態にしたのは誰だ? 見てみろ。 既に壁外から他国の軍勢が迫っている。 お前たちの裁判をしている余裕なんてない。 悪いが死んでくれ。」
そう言って小太りの賢者の心臓に槍を刺す。
返り血が表情の無いマイチの顔に飛ぶ。
冷酷で鋭い眼をギラリと輝かせ、残りの賢者たちも同じように殺していく。
正気を失っていると思われるマイチは二十五人全員の命を刈り取ると、ルーンを手放す。
手から離れたルーンは従者と同じように空気に溶けて消えた。
そして壁外を見る。
九林や八道は既に壁外に広がる数十万、いや、数百万の軍勢に呆然としていた。
これは一国だけではない。
おそらく今までこの国に攻め入って来られなかった国全てが連合を組んでこの国にやってきている。
この国を守る最後の盾、魔法壁は賢者自ら解いた。
大賢者のマイチであろうと張り直すのには優秀な魔導士数十名の手が必要だ。
そして数日かかる。
目前に迫る数百万の軍勢は今晩にはこの国へ辿り着く。
既に手遅れだった。
「マイチ、敵の軍勢が迫っています。 どうされますか?」
マイチは血を浴びた顔でリゼフを見上げる。
その顔には少しだけ表情が戻っているが、次なる敵への対策に考えを巡らせているようだ。
「リゼフ、私の魔力で全て相手にできるか?」
リゼフはふむ、と一呼吸を置くと、首を振る。
「無理ですね。 私の召喚にもかなりの魔力を使っているでしょうし、ルーンを呼び出して供給し続けたせいで半分程度しか残っておりません。」
「そう……か。」
「あと、この数になると魔導士より戦士や騎兵、弓兵の方が力を発揮します。既に国内の各地で起こっている戦闘により魔導士たちの魔力も減っているはず。 この国に勝機はありません。」
我々に、と言わないところが魔族らしい。まるで他人事だ。
マイチはふふっと笑う。
「私の命をささげればどうだ?」
マイチがそう提案すると、リゼフの顔が少し明るくなる。
「私がいただきましょう! そして瞬く間に殲滅して差し上げます。」
「なら―――――――」
「待てマイチ。 お前がいなくなったらこの国はここで勝ったとしても崩壊する。 王の統治なんてあってないようなものだからな。 俺が行く。」
八道がいつのまにかマイチの隣に立っていた。
その目は壁外に迫る数百万の歩兵と騎兵を映している。
土煙が空高く上がり、数十種類の国旗が風になびいているのが見える。
「だが―――――――」
「いつまでも弟子じゃない。 俺はもうS級魔導士だ。」
八道はマイチの顔を見ると、微笑む。
天才魔導士と云われ、永らく孤独を味わってきた八道がいつか道を踏み外してしまうのではないかと心のどこかでマイチは心配していた。
だがそんなこと心配は必要なかった。
太陽に夕焼けに照らされた八道の背中はいつの間にか大きくなっていた。
三葉と出会い、九林との再開を果たして前へと進んだのだろう。
こんなにも頼もしくなっているとは……。
「リゼフ、俺が行くなら勝てるか?」
八道は薄ら笑いでリゼフを見る。
リゼフもフフッと笑い返す。
「はい、マイチを超える魔力量を持つあなたなら勝つ見込みはあるでしょう。あとはあなたがどんな従者と契約しているか、ですね。」
「ロウロ、九林、行こうぜ。」
そういうと、夕焼けの滲む本部の屋根の上にマイチとリゼフを残し、地上へと下りる。
「なぁリゼフ。 若くて優秀な魔導士が育ってきたよ。」
マイチは返り血をぬぐいながら微笑む。
「古い魔導士はもう消えるべきなのかもな」と付け加えた。
「みんなあなたの育ててきた魔導士じゃないですか。 弟子を置いて消えるんですか?」
リゼフは「何を仰る」とマイチの言葉を一蹴した。
「古い者には古い者の役割があるのですよ。 魔界にくればよくわかりますよ。 来てみますか?」
マイチは笑いながら首を振る。
「いや、まだやることはあるみたいだ。」
「ここは自分の弟子を見守る場面です。 歯がゆくても見守ることが大事なのですよ。」
「わかってる。」
「ならこの場所から見ていますか?」
「何を言ってる、若者共の指揮を誰が執るんだよ。」
「わかってますね。 なら無線をつなぎましょう。」
「頼む。」
リゼフによって魔導士全てにつなぐ無線網が出来上がり、軍事国家数十か国対魔導国家一国の戦争が始まる。




