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獣衛機伝ビーガード ~キッズアニメ世界に巻き込まれ転移した俺が、魔王ごと封印のち目覚めたら、続編か劇場版の疑いについて~  作者: 伊藤 珪


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第二十六話 人事を尽くせば天命は。

 

「ヨウスケさん」

 

 マリンに話しかけられる。手には朝飯の……なんつうか、カレースープパスタ? そんなようなもんが、二つ並べられたトレイを持っている。きっとグラナは、集めて来た物資でなんとか美味いもんを作ろうとしてくれてるのだろう。 

 あぁ、ありがとう、そう答えて適当な資材の上に座り、トレイを受け取った。

 

「よっしゃ食おうぜ、いただきまーす」

「いただきます」

 

 カレーの匂いはいいな、食欲を刺激してくれる。フォークに絡めて、たっぷりのスープごと頬張ると、もちもちとした麺の食感が楽しい。

 うん、パスタっていうか、うどんだなこれ。スープカレーうどん。……普通に美味い。……さすがのグラナも絶品とまではいかんのだろうな。

 

「ヨウスケさん……ありがとうございます」

「ん? 何がだ?」

「この街を、助けてくれて」

「あー……ま、流れでそうなっただけさ」

「ふふ、わかってます。……わかってますよ?」

「知ったような口を……」

「知ったような、じゃないです。知ってるんです」

「……はいはい、降参ですよ」

「勝ちました!」

 

マリンは、そう言って笑い、空を見上げた。俺もつられて空を見上げる。

空が高い。雲が呑気に風に流されている。視線を下ろせば、破壊された街並み、崩された花壇。

その崩された花壇からこぼれた土の上で、名前も知らない、可愛らしい花が揺れていた。

  

「今日のお夕食はかつ丼だそうですよ。明日はホームランですね」

「おぉ、そりゃ縁起がいい。……いや、それ、牛丼じゃなかったっけ?」

 

俺はしばらく、花を見ていた。隣でマリンがSMAPのアレを鼻歌で歌っている。……この静かな時間が、ずっと続けばいいのにな。

けど、そういう訳にはいかねーよな。……俺たちは、戦うと決めたんだから。

 

「なぁ、マリン」

「なんです?」

「ノゾミがつけた名前。……宗谷、雪風、鳳翔。チビ共、ちゃんと応えてくれるかなぁ」

「む。……まぁ、しょうがないですね、ヨウスケさんですし」

「え。なんで急に不機嫌?」

「知りません……そういう所ですよ。……でも、そういう所なんですよねぇ……」

「えぇ……何が?」

 

 なんでさ。なにがさ。

 わからん……女の子はわからん……。

 

「はぁ、まぁいいです。とりあえず今日は何して遊びます?」

「あー……水遊びはどうだろ? ギィに聞いてみよう」

 

二人連れだってギィの元に向かうと、ギィの部屋はだいぶ様変わりしていた。雑然としているのはそのままだが、様々な事が書き込まれたホワイトボードに、色々と紙が貼ってある。まるで野戦司令所といった雰囲気だ。……いや、まんま野戦司令所なのか、ここが。

 

「おう、英雄の兄さんと歌姫ちゃん、連れ立ってどうした?」

「あぁ、いや、運河の方は大丈夫かな、と思ってな。泳ぐのが得意なメカトカゲも居ないとは限らないじゃん」

「あぁ、それか。あえてそのままにしてあるんだ。進軍ルートを限定させる。の一環だな。入って来られても、先の方でちゃんと罠はある」

「なるほど。抜け目ない」

「むしろ多少は水辺に来てくれた方がありがたい。状態の良いプラッティが2機ほど居る」

「……カモノハシ型ビーガードのあれが?」

「あぁ。軍が街を引き払う時に置いて行った」

「……まぁ、アレはな……カモノハシだしな……」

「カモノハシ型ビーガード! ここのあるんですの!? 見てみたかったのですわ!!」

「いきなり現れるな」

「ちょっと見てきますわー!」

「ねぇ話聞いて?」

 

 ったく、ノゾミの奴は……でもまぁ、侮れない実力あるんだよな、プラッティ。水戦能力、電探能力、地上戦でも「毒の脚」で一撃がある。

 運河での戦闘なら、かなり強い機体だ。強い機体なんだが……ただなぁ、見た目がえらいコミカルだからなぁ……歩き方もなんかヨチヨチしてるし、走るとダバダバしてるし、兵士には人気が無かった。

 なんでそんな機体があるのか、って? この国が「河川と運河の国」だからだなー。獺とかビーバーとか河馬もいるんだぜ。

 

「ま、今日はもうのんびりしてていいぜ、むしろ英気を養っておいてほしいくらいさ」

「そりゃわかるんだけどさぁ」

「なるほど。英雄さんだもんな、そんな言葉は言われ慣れてる、か」

「普通に子供たちと、疲れない程度に遊んでたらいいのでは? ライノさんの傍で」

「歌姫ちゃんの言う通りだと思うぜー?」

 

 そっか、そうするかぁ。……あぁ、しまった、ベルガルドでヨーヨーとかけん玉仕入れてなかったなー。

 

 

 

「よし。ラストワン」

「だが残念。逆順。……出せるかい、ピザンさんよ」

「くっ……ドローする」

 

 俺とマリンとピザンとノゾミで、呑気にカードゲームなんぞをしている。

 最初は子供たちと遊ぼうと思ってたんだけどな、子供たちも空気を感じ取っていたんだろうな……大きな子供たちは率先して大人を手伝ったり、傷病兵と組んで準備したりして、小さな子供たちも、「自分に出来る事」を探して働いていたりしたんだよ。

 それならそれで、と、何か手伝えることは無いかと聞いたらさぁ……。

 

「ハァ? 英雄のあんちゃんと、貴族のあんちゃんは、明日が大一番だろ、ちゃんと休んどけ!」

「そーだそーだ、ひっこんでろぃ!」

「ガキだからって馬鹿にすんなよ! アタイ達だってやるときゃやるんだから!」

 

 なーんて、な。ガキに言われちまった。俺らの仕事は英気を養う事なんだとさ、そう言われちゃしょうがねぇ。

 しょうがないので、地球から、そのものは持ち込めなかったけど、再現が容易だったカードゲームなんぞをしてるわけだ。

 

「赤の2枚ドローでラストワンです」

「ふぐ。マリンちゃん容赦ないですわね……色替えで、緑」

「おぉラッキー、緑の6でラストワンだぜ」

 

 このゲーム、何のカードが何枚あるかさえ知って居れば再現は容易だからな……ちなみに、俺は知らなかった。

 カケルとマリンも知らなかったが、リョウとアユミは知っていた。で、俺が寝てた4年の間に、それなりに流行したらしい。

 ピザンは黙って1枚引いて、マリンは「上がりです」と宣言して緑の3を出した。こーゆーゲーム強いんだよなぁ、マリン。

 ピザンも決して弱くは無い、というか、むしろ強い。ノゾミは……なんだろうなコイツは、下手じゃないんだけど、弱いんだよなー。

 その後は俺、ピザンと上がって、ノゾミはビリだった。

 

「あぁもう! いずれモノポリーやカタンを再現しますわ……! あれなら強いんですのよ私……!」

「あぁそう。で、もう1ゲームやる?」

「やりますわよ! 負けっぱなしで終われませんわ!」

「……あまり熱くなるな、ノゾミ嬢」

「というかノゾミ。お前、ギャンブルには手を出すなよ?」

「あ、あはは、でも確かに、あまり賭け事には向いてませんねー」

「うぅ。お爺様にも言われましたわ、それ」

 

 んで結局、ノゾミが勝つまで5ゲームかかったわけだが。総合順位は1位マリン、2位俺、3位ピザン、ただし全員僅差で……圧倒的最下位ノゾミだった。

 次は何しようか、となった時、「これはどうです? なんか、勝負がもう見えてますが」とノゾミが持ち出してきたのは。

 

「ジェンガか」

「バランスゲーム、ですわ」

 

 まぁやってみよう、となった結果は……。圧倒的1位、俺。2位ノゾミ。3位と4位は僅差でピザン、マリンだった。

 

「器用……! 圧倒的小器用……! ですわ……!」

「手先の器用さや現場判断力が必要なゲームで、ヨウスケさんに勝つのは無謀ですよ?」

「ここまで見事に勝たれると、嫉妬も湧いてこないな」

「ちなみに、なりふり構わず勝ちに来たヨウスケさんには、絶対にディーラーさせちゃ駄目です。普通にセカンドディールとかしてきます」

「わかりみしかありませんわね……記憶力勝負はどうでしょう? 普通にトランプで神経を衰弱させません?」

 

 まぁ、そんな感じで親睦を深めたわけだ。意味があったのか、と聞かれると疑問ではあるが……まぁ、ピザンとの連携には役に立つのかもな。

 神経衰弱の結果? ノゾミ、ピザン、マリンの順で、ドベは俺だったよ。ピザンはポーカーさせたらえらい強かったな。

 

「はーい、注目、注目~あぁいや、傾注か……え~、知ってる奴も多いが、俺はギィ、『負け犬ギィ』だ。一応、この街の総督代理やってる」

 

 そろそろ夕食かなぁ、と思ったころ、広場に、街に、声が響く。……防災放送みたいなもんを利用して、声を流してるのか?

 ギィは飄々とした声で、街の皆に語り掛ける。街の外の森が、騒めいた。ギィの声は続く――

 

 で、まぁ~、もう今更説明することも無いだろうけど、この街は現在、戦闘態勢に入っているわけだが。

 魔王殺しの『英雄ヨウスケ』と、ギガノトサウルスを血祭りにあげた男の息子、『猪武者を継ぐ者ピザン』が揃って来ちゃったもんだからなぁ。

 皆ももう見たろ? シールドライノとジークエーバー、すげぇよな、あの機体。しかも、お隣に可愛らしい人魚姫がちょこんと座ってるんだ。

 いやぁ、絵になるねぇ、俺の『負け犬』の二つ名も返上しなくちゃならんなぁ。ケラトサウルスじゃぁ、役も役者も不足してるからなぁ。まぁしょうがねぇやな。

 んで、とりあえず、俺から言えることはひとつかねぇ。……全員、生き残るぞ。負け犬ギィが保証する勝ち戦で、死んだり大怪我なんて馬鹿らしいからな?

 

「煽るねぇ……」と俺が零すと。

「煽りすぎじゃないですか?」とマリンが不安そうに呟いた。

 

 ま、明日だな、明日。皆にもよくわかるように合図を送るぜ。おい角付きクソデカトカゲ。一応言っておく、逃げるなら今の内だぜ? ――以上!

 

「そして、また明日、と近い時間を知らせて即座に終わらせる、と」

「はぁ……えぇと、逃げられるのはまずいんじゃ?」

「だからだな。あぁまで言われて逃げたのでは、部下はついてこん」

「あの人、もっと出世させるべきではありません?」

「俺もそう思う。つうか、このままこの街の総督か代官でいいんじゃねぇの」

「……上に進言しておく」

 

 やっぱりか。軍事権の中枢に進言が出来るくらいの位置には居るんだな、ピザン。

 俺の予想だと、王族か準王族あたりと繋がってると見てるんだが……。まぁいい。共に戦うなら、コイツとジークエーバーは頼れる、今はそれで良い。

 

「よっしゃ、じゃぁかつ丼喰って早めに寝るぞ!」

「水浴びくらいはして寝ましょうね?」

「マミを起こしてきますわ、夜警をお願いするのに、寝ておいてもらってましたので……ごはんの匂いで起きてきてるとは思いますけど」

「私はラウド隊と合流する。……ヨウスケ」

 

 名を呼ばれて、振り返る。

 

「ん?」

「……あぁ……いや……」

「勝つぞ、ピザン」

「……当然だ」

 

 それだけ言ってピザンは歩いていく。……口下手な奴だなぁ。まぁ、いいさ、行動の方はわかりやすい奴だしな。

 さぁて、かつ丼かつ丼、かつ丼喰って、どーんと勝つぞ、ってな。

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