第十三話 代表者の選択と命の洗濯
「とはいえ、俺の方からはもう言う事は無いな。……国がどうするか、とかはそれこそ俺が出る幕じゃねーし」
《では私、ノゾミからピザンさんに一点。魔王の残骸は今、この街にあるようですが……これから何処に移動させるか、いつ移動させるかは知りませんが、徹底的に秘匿するべきですわ。もしくは、もうとっくに秘密の研究施設に移動した、とかにしとくべきかと》
「あるのか、魔王機が、この街に。……あぁいや、当然か。決戦の地から最も近い、守りの堅い場所だもんな」
《あるのですわヨウスケさん。で、これ利用して何やら大々的に、魔王を討伐したと喧伝したい勢力もあるようですけど、危険ですわよ。アロサウルスが話通りのゲスならば、確実に移動中を狙いますわ。そして魔王の残骸を奪って、自身の修理・強化に使う……ピザンさん、上の方にお話、お願いしますわ》
《ノゾミ嬢、同じ思考に至った人間も、王国にはちゃんといる、こちらとて無能ばかりではないぞ、安心しろ。……と言うのは、また違うか》
《いえ。出すぎたことを言いましたわ》
《……それはそれとして、太守殿があの、プチリンという機体を追加購入したいと言っていたが》
《今晩にでもお電話します。と伝えてくださいまし~うふ、うふふ。それと、確認したい事なのですが。ヨウスケさん、マリンちゃん、七つの大罪って知ってます?》
お? 俺? 七つの大罪ってあれだよな、中二病御用達の……「一応知ってるぜ、ハガレンとか読んでたしな」と俺が応えると、マリンが『えっと、嫉妬、色欲、暴食、怠惰……あと……あ、大統領! 憤怒と、えっと、あ、強欲と…………何でしたっけ?』と続いた。
《傲慢ですわね。並び順にも意味があったり、大本は八つだったり、時代で入れ替わったりしてますけど、それは今は良いでしょう。ではピザンさん、今のを聞いて思いませんでした? この世界にも同じような概念、あるなって》
《独善、強欲、虚飾、嫉妬、狭量、怠慢……の六悪徳か?》
《それですわ。そしてこれ、この六悪徳なんですけど……魔王と不愉快な仲間たちに、あてはまりません?》
「当てはまる、な……うわぁ。マジか。魔王と四天王だけど一人多い! ってネタじゃなかったのかぁ……」
《当てはまりますねぇ……あの頃は『魔王と四天王+1』なんてよく呼んでましたね、みんなで……》
《……ま、まぁ、私もちょっとだけ思ったネタですから、良しとしましょう》
いやマジで当てはまるんだよ。天上天下唯我独尊な、高慢な王様野郎の魔王、なんでも飲み込み食らい尽くす勢いだった強欲なウワバミ野郎、武人気取りで強者気取りだった、上っ面だけな虚飾野郎も、マリンをいじめてた嫉妬女も居た、アロサウルスなんて、まさしく狭量の名が相応しいような……いや待て。
「……なぁマリン、ノゾミ、『狭量のアロサウルス』なんて言ってなかったか、バルバットとか名乗ったおっさん」
《言ってましたね……》
《言ってましたわ。……帝国は独自の情報を持ってるのか、それとも、あのバルバット氏が特別なのか……偶然じゃありませんわよね、もうここまで来ると》
マジか。うわぁ。めんどくせぇに、めんどくせぇを重ねてきやがった。今すぐどうこう出来ないのが、すげぇモヤモヤする。
《この六悪徳ですけど、キッズアニメ的なように見えて、実は七つの大罪より洗練されてますのよね……少なくとも、文明社会で嫌われやすい悪になってますわ》
《……SNS時代が来たら……いえ、それ以前に、高速通信情報網の時代が来たら、効きますね、確かに……七つの大罪は『古い』からでしょうか?》
「うーん……基本は人類に任せるけど、社会を壊す要素はシステムから除いておきましょうね? って事じゃねぇの?」
《そんな楽天的な……いえ……あぁ……》
《だから硝酸カリウム……ふむふむ……》
なんで急に黙るんだよ二人とも……俺が馬鹿だから呆れてんのか? くそぅ……。
「ところでシールドライノ、この一致に気付いてたろ、お前なら」
「奇妙な符合はあるなとは思っていたが……必要な情報では無かったので、ノイズになるのを恐れた。……戦略に必要なら言っていたが」
「だよな。俺やカケルは知らないままで、自由な発想で思考させた方が良い、お前やアウレリオンならそう考えるだろうな……今は?」
「戦略重要度はそれなりに高い。と判断せざるをえんな。そして、一つの可能性に思い至った」
「「六悪徳を全滅させないと、魔王戦役は終わらない」」
俺とライノの声が重なった。やっぱそこに思い至るか、たぶんノゾミが言いたかったのも、これなんだろう。
ま、これが確定ではないけど、わかりやすいのは良いな。やっぱ俺はアレだ、馬鹿は考えるより休んで体調を整えた方良い。って事だなきっと。
でも。本当に六悪徳だけなんかねー? 隠された七つ目の悪徳! とかいかにもありそうじゃん。ほら、背信とか、破約とか、裏切りとか。
……あ。
《あぁっ、考えごとをしている間に、言いたかった事を言われてしまいましたわ!》
それは変なタイミングで思考に没頭したお前が悪い。
いや、それよりも、嫌な可能性に気が付いちまったんだよなぁ……。
「ところで……なぁみんな、魔王軍のスパイが人間に紛れ込んでいるのでは、って話、知ってるか?」
《知っている。だからバング殿も、わざわざ「ガイアの修理が間に合わなかった」と嘘をついていたのだから》
《情報漏えいを気にしないなら、普通に理由を説明して残れば良かったのですものね》
「この話な、元々はカケルやリョウと旅をしてる間も、行き先がバレてんじゃねーかって妨害を何度か食らった事から来てるんだがな」
《私自身、領地の悪魔崇拝者共の拠点を、何度か捜索はしたな……それらしい証拠が出たという話は聞いたことが無いが》
知ってる。そもそも、人間と見たら問答無用で襲ってくる連中だからな、魔王軍って。
でもなー、メタ的に見たら、キッズアニメにはいかにも居そうじゃん。
「たとえばさ……隠された七つ目の悪徳、背信。人間に化けて情報を探る、魔王の手先のコウモリ野郎……とか……」
《……マリンです。決めつけは危険だと思いますけど、一つだけ……ヨウスケさんのこの手の勘、結構当たります……》
《ノゾミですわ……私もリョウから聞いてます。ヨウスケさんの勘は、馬鹿に出来ないと……ピザンさん》
《戦士の勘は、立派な根拠だ。バルバット・ノクティリオだな? 入街記録や宿帳を調べてもらうように、太守殿に依頼しよう。少し離席する》
「……ヨウスケ……これからは気が付いたことは全て報告する……すまなかった」
「おう、そーして……あぁいや、余裕がありそうな時だけにしてくれ。常にやられたらたぶん俺、パンクする」
適材適所よ。普段からそんな事ばかり考えてたら俺、きっと投げ出して逃げ出すさ。
だからまぁ、頼りにしてるぜ、シールドライノさんよ。
「ふぃ~……極楽、極楽大作戦、でした、と……」
湯。たっぷりと湯であった。実に久しぶりの風呂だった。この後はふかふかのベッドも待っている。良きかな。
え? 大作戦が何かって? 黙秘権を行使する。あぁ、覗きとかそーゆー、コンプライアンス的に不味い事はしていないぞ、念のために言っておくが。
ちょっとスッキリしてサッパリしただけだ。にしても、いや実にいい湯だった。
「あ、上がったんですね、ヨウスケさん。長風呂でしたねー、はいどうぞ! 炭酸飲料ですよ! コーラっぽい何かです!」
「お、あんがとな、マリン。まぁ久々の風呂だったから……――――……かぁっ、うめぇ……ありがてぇ……キンッキンに冷えてやがる……!」
ちょっと薬というか、ハーブ臭い気もするが、美味い。ちらりと商品名を見ると、Dr.レクターと書いてあった。ドクペならぬドクレか。
……なんか不穏な名前の気もするが、地球じゃねーから、大丈夫。きっと。羊たちも沈黙して、余計な事は言わないだろう。
「~♪」
……にしても。お風呂上がり上機嫌マリンちゃんである。おかしいな。同じアメニティ使ってるはずなのに、なんでこんないい匂いするんだ。……賢者モードでも、単純にカワイイのはガード貫通してくるんだよなぁ。おのれ……美少女め……呑気に鼻歌なんぞ歌って、無防備を晒しおってからに……。
え? なんで一緒の部屋に居るのかって? そりゃ金持ち商会用のペントハウス的なアレだからだよ。リビング的な大部屋があって、寝室は複数あるタイプの奴。……なので、グラナや三匹のちびっ子も、さっきまで居た。俺と入れ替わりに風呂に行ったが。ノゾミは一番風呂に入った後、なんか電話しに行ってるようだ。……本人は誰かと一緒に入りたかったようだが。
で、マリンは小声で歌っているわけだが。急遽、明日、歌う……ゲリラライブする事になったからな。そんな呑気なって思うじゃん? 実際、俺もそう思ったし、マリンもなるべく早く、この街を出るつもりでいたのだけど……ノゾミがなぁ。「歌う? ……ありですわね」ってな。
変な位置ですが、他に区切れそうな場所が無いので……。
以下次回です。




